11月のDDT後楽園ホール大会からスタートした「赤井沙希“おきばりやす”七番勝負」は、女子プロレスの幅広さと奥深さをファンに知らしめる闘いにもなっている。初戦で赤井が闘ったのは人気団体アイスリボンのトップ選手・藤本つかさ。敗れた赤井だが顔面に強烈な蹴りを叩き込むなど“激しさ”で観客を魅了してみせた。
12月28日、後楽園ホール大会での2戦目で対戦したのは旧姓・広田さくら。コミカルな試合をさせたら業界で右に出る者はいないだろうという、ある種の猛者である。
赤井の入場に続き、同じテーマ曲で入ってきたのは“旧姓・赤井沙希”。体型は違うもののコスチューム(手作り)やリングイン時の動きは完コピだった。双子の幼子の母である旧姓・赤井(こと広田)は子連れで登場。控室に放っておくわけにもいかず、急きょ客席横に設けられた託児スペースでアントーニオ本多が遊び相手を務めることに。
(急きょ設置された託児スペースに観客の目もクギ付け)
試合中、観客もレフェリーもついつい双子ちゃんを見ては目を細めてしまう状況が発生。完全な“広田ワールド”がDDTマットで展開された。広田の得意技ボ・ラギノール(俗に言うカンチョー)も決まったが、赤井も同じ技で逆襲。そこからランニングキック「新人賞」を決めて赤井が七番勝負初勝利となった。
敗れた旧姓・赤井は「うちはあんたで、あんたはうちや」。インタビュースペースでは「私たちはある意味、似たもの同士」とも。なぜなら「うちの親も尾張旭市で有名なので。感じる重圧も似ているかなと」。
一方、赤井は「広田さんは世界観が凄い。プロレスは世界観と世界観の闘い。世界観のない選手は面白くないんですよ。七番勝負で当たることができたのは大きな財産になりました」。典型的な“お笑いマッチ”のようでありながら(実際そうだったのだが)、赤井にとっては貴重な経験だったのである。
七番勝負第3戦は1月12日の大阪大会。相手は山下りなに決まった。育った団体は違うものの赤井と山下は同期。「すべて受け止めてくれる相手」と赤井は言う。デスマッチで男子選手とも激闘を展開した山下との試合は、再び“激しさ”に振り切ったものになるだろう。その中で「今まで見たことがない自分を見てみたい」と赤井。ここでも大きな成長が期待できそうだ。
文・橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング