テニスの2020年シーズンは1月3日から始まる国別対抗戦『ATPカップ』で幕を開ける。シングルス2本とダブルス1本で戦う初開催のチーム戦だ。初代チャンピオンの座を目指して日本を含めた世界の強豪24カ国がオーストラリアに集結し、まずは3つの都市に分かれて1グループ4チームによる総当たり戦を行なう。
世界のトップ100に3人がランクインしている日本の男子テニス。100位以下でも杉田祐一(自己最高36位)や添田豪(自己最高47位)、ダニエル太郎(自己最高64位)、伊藤竜馬(自己最高60位)といったトップ100経験者がいる。添田はその中でも最年長で、これほどの層の厚さを誇る時代への扉を開いた選手といってもいい。
初めてトップ100を切ったのは26歳だった2011年。それ以前に100位の壁を突破した日本男子は、松岡修造と錦織しかいなかった。翌年には自己最高位の47位をマークし、念願だったロンドン五輪にも出場。昨年末に230位台まで落ちたが、今年は120位まで再浮上し、トップ100返り咲きも現実味を帯びてきた。
ヒップホップを好み、20代の頃は坊主頭にピアスという奇抜なルックスで戦っていた時代が懐かしい添田も、2016年に結婚して今は子煩悩な一児の父。家族の存在は、35歳でなお向上心を維持し続けるエネルギーの源らしい。2018年末に発足した選手会の会長も務める親分肌でもあり、今回もチームをまとめるリーダー役である。
マクラクラン勉は、ニュージーランド人の父と日本人の母を持つハーフで、シングルスに出場せずダブルスのみを戦う『ダブルス・スペシャリスト』の一人として知られる。カリフォルニア大学バークレー校を卒業後にプロ転向。チームで唯一の大卒プレーヤーだ。
生まれ故郷のニュージーランド人としてプレーしていたが、2017年にプレーヤー登録を日本に変更。間もなくデビスカップ・デビューを果たすと、ランキングも約1年の間に130位台から20位まで急上昇した。母の故郷で今も祖母が暮らす大阪府柏原市は、幼い頃からよく訪れていたというが、初めてデビスカップ代表に選出された頃は日本語もまだたどたどしい状態。それが最初の1年でめきめき上達し、「日本の代表になって絶対に良かった。どんどん自信がついてきた」と話す。今では日本チームに欠かせない存在だ。
チーム・キャプテンは2017年からデビスカップの日本代表監督も務める岩渕聡。ATPカップではキャプテンの人選はナンバー1の選手が行なうことになっており、錦織の指名によるもの(錦織選手は欠場が決定)だ。錦織が18歳でデビスカップにデビューしたときに岩渕はまだ現役の代表メンバーで、チームメートとして戦った間柄。より年齢の近い添田とは国内外で何度も対戦したこともある。
2005年のジャパンオープンでは、現在内山のコーチでもある鈴木貴男とのダブルスで日本人ペア初のATPツアー優勝という快挙も果たした左利き。まだ44歳と現役世代に近く、デビスカップ代表を長年経験した実績や、温厚で律儀な人柄によって選手からの信頼も厚い。添田や西岡は「監督をオーストラリアで胴上げしたいですね」とも話していた。
その夢にどこまで近づくことができるか。チーム・ジャパンの快進撃に期待しよう。