1月3日(金)から12日(日)までオーストラリアで行われるテニス史上最大級の国別対抗戦、ATPカップ。テニス世界一を競いコート内での戦いに注目が集まるが、実はベンチからも目が離せない。
ATPカップでは、各国一人をキャプテンとして任命することができる。キャプテンはチェンジコートの休憩時間にベンチで試合中の選手にアドバイスを送る重要な役割を任されている。当然各国とも、様々な意図でキャプテンを選んでいる。その一部を見てみよう。
近年テニス界では、かつて世界の頂点を極めた名選手をコーチに招くことが増えている。いわゆる「レジェンドコーチ」だ。今大会は残念ながら欠場となってしまった錦織圭もマイケル・チャンをコーチに招いたことを機に、全米オープン準優勝のきっかけを掴んでいる。
今大会、そんなレジェンドをキャプテンに指名したのはドイツだ。ドイツのキャプテンはボリス・ベッカー。現役時代「ブンブンサーブ」の異名を引っさげて、グランドスラム優勝6回。あのジョコビッチを3年間コーチしたこともある指導経験な名伯楽だ。アルゼンチンのガストン・ガウディオ、オーストラリアのレイトン・ヒューイットもグランドスラム優勝経験者である。指導経験だけでなく、母国の憧れの人にベンチに座ってもらうことで、選手はより闘争心を増すことにもなるだろう。
レジェンド達をキャプテンにした結果、こんな対決も組まれている。
ロシアのマラト・サフィンとノルウェーのクリスチャン・ルードはどちらもその国のテニス界を代表する英雄だ。サフィンとルードは現役時代でも対戦経験があり、サフィンの1勝0敗。グループDではそのロシアとノルウェーの対戦が7日に組まれている。教え子たちの“代理戦争”という構図になったが、果たして結果はどうなるだろうか?
一方、現役選手をキャプテンにしているのはフランスだ。ジル・シモンは35歳のベテランだが、元トップ10経験者で最新の世界ランキングが57位(1月1日付)。今でもなおツアーを回っている実力派の選手だ。選手メンバーからは外れているが、本来選手として出ていてもおかしくない。さらにブルガリアのグリゴール・ディミトロフは選手兼キャプテン。24チーム中唯一の「二刀流」となる選手兼キャプテンは果たしてうまくいくのか?
日本のキャプテンは岩渕聡。現役時代にはダブルスでツアー優勝経験がある。現在でも数少ないツアー優勝経験者だ。また、2017年から国別対抗戦デビスカップ日本代表の監督も務めている。選手との深い信頼関係があることで、他国に対して大きなアドバンテージになりそうだ。
ベンチのキャプテンも、外にいる控え選手たちも、試合が煮詰まってくればポイントごとに立ち上がって応援するだろう。そんなコート外の動きにも注目だ。
文/今田望未(テニスライター)
写真/Hiromasa MANO
【大会初日生中継予定】
・世界テニス国別対抗戦 ATPカップ2020 ベルギー vs モルドバ
放送日時:2020年1月3日(金)朝7時50分~
【日本戦生中継予定】
・世界テニス国別対抗戦 ATPカップ2020 日本 vs ウルグアイ
放送日時:2020年1月4日(土)朝11時~