(年内最後の試合で勝利した王者カルテット。左から伊藤、坂崎、辰巳、未詩)
DDTグループの団体・東京女子プロレスの年内最終戦、12月27日の板橋大会では、メインイベントにチャンピオン4人が勢揃いした。プリンセス・オブ・プリンセス王者の坂崎ユカ、インターナショナル王者の伊藤麻希、タッグ王者の辰巳リカ&渡辺未詩がチームを結成。対戦したのは1月4日の後楽園ホール大会でそれぞれのベルトに挑戦する山下実優(vs坂崎)、乃蒼ヒカリ(vs伊藤)、天満のどか&愛野ユキ(vsリカ&未詩)の4人だ。
チャンピオンは4人とも、この秋以降にタイトルを獲得。恒例の“イッテンヨン後楽園”で防衛戦を行なうのも初めてとなる。それだけ今の東京女子は層が厚くなっているのだ。
坂崎とリカはもともと音楽ユニットのメンバーで、DDTにアーティストとしてゲスト出演したこともある。伊藤もLinQ所属時代にアイドルとしてDDTに出会った。未詩はアイドルとプロレスの二刀流グループ「アップアップガールズ(プロレス)」のメンバーだ。
つまり全員が芸能界出身もしくは現役芸能人。そう書くと色眼鏡で見られるかもしれないが、東京女子の試合を見たことがある人間なら、彼女たちの力を疑いはしないだろう。
アイドル、グラビア、演劇など芸能ジャンルからのプロレス挑戦はもはや普通のこと。その上で個々の魅力、実力、費やした努力が問われるというだけのこと。坂崎はアメリカのAEWにも参戦するなど世界的に注目される存在になった。
試合は3本勝負で行なわれ、2-1のスコアで王者カルテットが勝利。1本目はのどかが未詩をフォール、2本目は坂崎が山下を丸め込み、3本目は伊藤が飛距離のあるダイビング・ヘッドバットをヒカリに決めた。すべてベルトを争う選手同士のフィニッシュだ。
(伊藤に得意技ブルーレーサーを仕掛けるヒカリ)
ここからタイトルマッチ本番に向け軌道修正するのか、あるいはそのままいくのか。駆け引きも重要になってくる。そんな中で印象に残ったのが、伊藤のコメントだ。
「けっこう、練習頑張った2019年だったのよ。“努力は必ず報われる”じゃないけど。(ダイビング・ヘッドバットも)お茶の水の道場で動画録りながら練習してね……」
キャラ先行、誰彼構かまわずマイクで噛みつく姿がインパクトを残してきた伊藤。今年は“小顔整形”告白も話題を呼んだ。同時に力量の面でもしっかりと成長。試合内容だけでも観客を満足させる選手になっている。その証がベルトなのだ。
対するヒカリも、敗れはしたがこの試合で手応えを得たようだ。
「一本取られましたけど、伊藤麻希ひとりにやられたわけではないので。相手の危ない技も分かったし、1vs1なら勝てる自信があります」
アプガ(プロレス)メンバーの中で唯一、最初からレスラー志望。伊藤とのタイトルマッチは“アイドル対決”でもあり、この前哨戦では実力だけでなく個性でも張り合う姿勢を見せた。ヒカリが勝ち、未詩がタッグ王座を防衛すればグループで2冠達成という形にもなる。
1.4後楽園、ベルトを争う8人は全員、実力充分。と同時に東京女子プロレスらしい個性を持った選手ばかりでもある。海外からもファンが訪れる“イッテンヨン”で、彼女たちは団体の真骨頂を見せてくれるはずだ。
文・橋本宗洋