「死のグループ」となったF組。シード順でいけば、ドイツ(ズベレル7位)→ギリシャ(チチパス6位)→カナダ(シャポバロフ15位)→オーストラリア(デミノー18位)ということになっているが、登録メンバーの厚さ(ナンバー2)を加味すれば、ドイツ=カナダ=オーストラリア→ギリシャという並びにしても文句は出ないだろう。そしてこのカナダとオーストラリアの戦力はまったく互角。勝敗が読めない。大激戦となりそうだ。
2018年から2019年にかけて一気に台頭してきたのがカナダだ。それまでは錦織圭とライバル関係にあったミロシュ・ラオニッチだけという印象のカナダだったが、まず1999年生まれのデニス・シャポバロフが注目を集め、さらにシャポバロフを追うように2000年生まれのオジェ・アリアシムが登場。20歳と19歳の若い才能がチームを組むカナダは、死のグループを抜ければ一気に頂点まで駆け上る可能性がある。
カナダから選手が生まれた背景にはカナダテニス協会の働きがある。10年前から選手育成のための強化策が始動し、フランスからコーチを招きながら、才能あるジュニアを育てていった。そのシステムの中で育ってきたのがシャポバロフであり、アリアシムなのだ。ラオニッチというスターがいたからこそ、彼に継ぐ選手を育てようとしたカナダ。ラオニッチが現役のうちに後継者が生まれた意義は大きい。その図式で言えば、錦織圭がいたからこそ、西岡良仁が出てきたのは間違いない。また、2019年にウィンブルドンジュニアで優勝した望月慎太郎も将来が嘱望される選手だ。グループは違うがカナダと同様に日本の活躍にも期待したいところだ。
最高ランキング保持者が18位のアレックス・デミノーだったオーストラリアは、ワイルドカードを与えられてドイツ、ギリシャ、カナダが待つF組に飛び込んだ。普通に考えれば、エースがトップ10以下の選手のチームは怖くない。ところが、オーストラリアは、デミノーの次に控えるのが、潜在的な力ではトップ10内の力があるニック・キリオスで、3番手には、2018年のUSオープンでロジャー・フェデラーを倒したジョン・ミルマンもいる。しかも彼は地元ブリスベーン出身で超熱血プレイヤー。どこで起用されても100%の力を発揮するタイプ。層の厚さではF組の中でも一番なのがオーストラリアなのだ。
順当にいけば、シャポバロフ対デミノー。アリアシム対キリオスの対戦が実現する。この2つの対戦の勝敗予想なんてできっこない。ただし、デビスカップの伝でいけば「団体戦はホームの利が大きい」とされている。「ATPカップ」はどうだろう……。
文/井山夏生(元テニスジャーナル編集長)
写真/Hiromasa MANO