ATP(男子プロテニス協会)が主催する『ATPカップ』が開幕した。真夏のオーストラリアを舞台に繰り広げられる出場24カ国による国別対抗戦だ。まずは6グループに分かれ、シドニー、ブリスベン、パースの3会場でそれぞれグループラウンドを行なうが、初日から荒れ模様。パース会場では世界ランク19位のジョン・イズナーを筆頭にシングルスのトップ100を3人、2人のダブルス・トップ50を揃えたアメリカが、シングルス54位のキャスパー・ルード以外はツアー経験すらないノルウェーに敗れる番狂わせが起こった。
208cmの長身を生かしたツアー一のサーブ力。それだけでテニス界で特別なポジションを築くには十分だが、ジョン・イズナーという名をテニスの枠を超えて世界に知らしめたのは2010年のウィンブルドンだろう。フランスのニコラ・マウとの1回戦で11時間5分というテニス史上最長記録となるマラソンマッチを演じたのだ。ウィンブルドンでは最終セットにタイブレークを実施せず、2ゲーム差がつくまで勝負を続ける試合方式をとっており(2019年からは最終セット12-12でタイブレークを実施)、2日間に及んだ試合は最終セット70-68という驚異的なスコアでイズナーが制した。
そんなイズナーも34歳。サーブ力は健在で、昨年も1試合におけるエースの数やサービスキープ率などさまざまな項目を総合したランキングで1位を守っている。アメリカの1勝で迎えたルードとのエース対決でも、大事なところで必ず強烈なサーブが炸裂した。しかし、第2セットのタイブレークで2度マッチポイントを握りながら、ルードのしぶとさ、勝負強さの前にあと1ポイントが取れない。結局このセットを失った。
試合が進むにつれて軽快さを増すルードに対し、ラリー戦になるとイズナーの足は止まり、チャンスで勝負をかけたショットはことごとくミス。キープし続けたサービスも最終セットの第12ゲームでついに崩れ、これがラストゲームとなった。
「相手のほうが僕よりもいいプレーをした。体に問題はなかったけど、僕はやるべきことをやるべきときにできなかった」
スタミナ面に影が差したシーズン初戦。エースの逆転負けでアメリカのムードは暗転したが、2戦目以降に切り替えられるだろうか。次戦の相手は強豪ロシアだ。
文/山口奈緒美