4日にシドニーで行われたテニス国別対抗戦・ATPカップ、アルゼンチン対ポーランドの試合。一進一退の攻防が続く緊迫した展開の中、まるでサッカーのスタジアムの中にいるようなチャントの大声援が会場中に響き渡った。
シングルス第1試合のギド・ペラとカミル・マイフシャクの試合は一進一退の攻防。両者1セットずつ取り合って迎えたファイナルセット。第4ゲームをマイフシャクがキープして2-2と横並びになった次の瞬間、会場にいたアルゼンチンサポーターから「オーレーオレオレオレー」と大合唱。
テニスの応援と言えばラリー中は静かに、ポイントが終われば拍手をするのが一般的であるが、国別対抗戦の場合は異なる。デビスカップでは鳴り物などの応援が認められていたが、今年が初回となるATPカップでの応援は、これまで手探り状態だった。国を背負い、いつも以上のプレーでポイントをもぎ取っていく選手たちに対して、どこか声援が足りていないような場面も見られた。
だがこの時は違った。アルゼンチンサポーターの大声援は会場の空気を支配。張りつめていた試合の展開を動かすには十分だった。AbemaTVで解説を務めた石井弘樹氏も急遽「アルゼンチンの選手はテニスもサッカーもする」と、選手のサッカーとの関係性について言及するほどだった。中継にまで応援効果が及んだといったところだろう。
南米のテニスに対する応援は情熱的だ。今大会はコロンビアやブラジルといった南米のテニス強豪国が出場を逃してしまったため、アルゼンチンとチリ、ウルグアイには、大会を盛り上げるような熱い応援に今後も期待したい。
試合もこの応援によって奮起したアルゼンチンのペラが、そこから4ゲーム連取。相手に1ゲームも与えずに試合を決めた。チームも勢いに乗り、ポーランドを2-1で下して、大事な初戦を制した。これから大会が進むにつれ、観客からの応援が試合を左右する場面もより出てくるはずだ。
文/今田望未(テニスライター)