4カ国ずつの6グループからなるATPカップで「死のグループ」と呼ばれているのがドイツ、ギリシャ、カナダ、オーストラリアが集まったF組だ。その中でもエースにランキング7位のズベレフ、第2シングルスにランキング35位のストルフ。そして、ダブルスにクラビーツ/ミース(2019年の最終戦ダブルスに出場)を揃えたドイツは、チームのバランスが良く、優勝候補として挙げられていた。ところが第一戦のオーストラリア戦でズベレフに「ダブルフォールト病が」が起こり、シングルスの2試合とダブルスまで落とし完敗。第二戦のギリシャ戦は絶対に負けられない戦いとなった。
ドイツは、まずストルフが第1シングルスを取りズベレフにつなぐ。しかし、ズベレフのサーブはイップス状態でチチパス戦でもダブルフォールトを連発。フラストレーションを爆発させたズベレフは、声をかけた父親(コーチでもある)に怒りの表情で猛反発。愛する息子からひどい言葉を投げつけられた父親が涙を流す場面まであった。ズベレフは心を鎮めることができないままチチパスにストレート負け。そして勝負はダブルスにかかることになった。
「歴史に残る名勝負となったダブルス」
このATPカップのダブルスは40-40になったら次の一本を取った方がゲームを得るノーアドバンテージ方式で、セットオールになった場合は、10ポイントマッチタイブレークとなっている。この試合がハラハラドキドキの名勝負となったのだ。
ドイツは昨年の全仏ダブルスを制しているクラビーツ/ミース組。そしてギリシャはシングルスを戦ったばかりのチチパスがペルボララキスと組んで出場してきた。試合はチチパスが躍動する。パートナーのペルボララキスのボールまで奪うような積極的なプレイでセットオールとして、スーパータイブレークも5−0とギリシャがリード。これで決まったかに思えたが、試合はここからが本番だった。
経験豊富なドイツ組みは先行されても慌てない。徐々に追い上げスコアは9−9。ここからは2ポイントアップするまで試合は決まらない。10-10以降は一進一退の攻防が続き、ギリシャが13-12、15-14のポイントでマッチポイントを迎える。リターンするのはチチパス。「決めてやる!」と意気込むがドイツはサーブで2本のマッチポイントを凌ぐ。そして逆に迎えた15-16のマッチポイントをドイツ組みが取って試合終了。このスーパータイブレークは25分間の長い戦いとなった。これは永久保存したいダブルスの名勝負だ。
この勝利でドイツは首の皮一枚の可能性を残した。最終戦の相手は、オーストラリアに敗れ1勝1敗となったカナダ。両国にとって、絶対に負けられない戦いが続く。
文/井山夏生(元テニスジャーナル編集長)