米とイランが応酬 “第三次世界大戦“の可能性は?「何もしないということはありえない」
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 アメリカ軍に殺害されたソレイマニ司令官の遺体が5日、イラクから母国のイランに戻った。国内には黒い服や旗で喪に服す大勢の人が集まり、シーア派の聖地・マシュハドでは数十万人が悲しみに暮れ、アメリカへの怒りを募らせた。

 イランの最高指導者・ハメネイ師は、3日間喪に服すとともに「激しい報復」も宣言している。それを示唆するように、モスクには“赤い旗”が掲げられた。この赤い旗は、シーア派において“不当に流された血”や“復讐への呼びかけ”の象徴だという。また、イランのハッカーを名乗るグループがアメリカ政府機関のウェブサイトに侵入し、復讐のメッセージを掲載。イランから繰り出されたパンチをくらうトランプ大統領が描かれた画像も掲載されている。

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 “第三次世界大戦”の引き金となるのではないか、という不安も広がっているソレイマニ司令官の殺害。ニューヨーク・タイムズによると、ソレイマニ司令官の殺害はアメリカ軍幹部がトランプ大統領に提示した“最も極端な計画”だったという。

 なぜ、トランプ大統領はその極端な選択肢を選んだのか。過去のある発言が話題となっている。「オバマ大統領は再戦のためにイランを攻撃するだろう」。当時のオバマ大統領が人気回復のため軍事攻撃を政治利用する可能性があると度々指摘していたのだ。今回のソレイマニ司令官殺害は、トランプ大統領自身がその政治的な利用を行ったのではないかという指摘の声もあがっている。

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 イラン政府は5日、核合意で定められた制限を全て撤廃し、無制限にウラン濃縮を進めると発表した。国際原子力機関(IAEA)との協力は継続し、アメリカによる経済制裁が解除されれば核合意の義務を履行するとしているが、今回の発表は事実上、核合意からの離脱とみられる。

■“第三次世界大戦”の可能性は

 では、本当に“第三次世界大戦”勃発の可能性はあるのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏に見解を聞いた。
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 そもそも、殺害されたソレイマニ司令官はどのような人物だったのか。イラン革命防衛隊の海外作戦を担当する「コッズ部隊」の総司令官を務め、ここ20年ほど近隣国に強い影響力を持っていたというソレイマニ氏。黒井氏によると、「勢力を伸ばしていくということでイラン国内では英雄視されていた。ハメネイ師とも仲がよく子飼いのような存在」で、そのハメネイ師自身が復讐を匂わせる発言をしていることから「イランの中ではハメネイ師が言ったことは絶対。何もしないということはありえない」との見方を示す。

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 アメリカとイランを巡っては昨年12月27日、ソレイマニ司令官配下のイスラム教シーア派のテロ組織「カタイブ・ヒズボラ」が、イラク北部・キルクークの米軍基地をロケット弾で攻撃。米国民間人1人が死亡し、米軍兵士4人が負傷した。その翌日、米軍がカタイブ・ヒズボラの拠点を空爆しメンバー25人が死亡。12月31日には、イラクにある米国大使館に対してデモが発生し、カタイブ・ヒズボラを支持する群衆が敷地内に乱入していた。

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 そうした状況での“英雄”ソレイマニ司令官の殺害。第三次世界大戦の可能性について黒井氏は「イラン側がどの程度のことまでやるのか」だとし、「コッズ部隊など各地の子分を使ってテロをするのが常套手段。しかし、イラン革命防衛隊がアメリカ軍と直接衝突するとなると、戦争にエスカレートしてしまう。今までイランはそこまではやっていないが、今回ムードが好戦的になっているのでどこまでやるのか読めない。エスカレートする可能性は0とは言えない」との見方を示す。

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 また、テレビ朝日元アメリカ総局長の名村晃一氏も「歴代の大統領にも同じように軍部の提案があって、やるかやらないかを判断する事態はあったようだ。しかし、泥沼にはまってしまうということで、やる決断はしなかった。今回、踏み込んではいけないところを踏み込んでしまったということで、この先予想がつかないことが起こる可能性は十分ある」とさらなる情勢悪化を懸念。一方、トランプ大統領が再選を狙って指示したという見方については、「トランプ大統領の頭の中は大統領選で一色だと思うが、戦争となると兵士やその家族もいるわけで、仲間を死なせるような政策が選挙にプラスとは言えない。自分を大きく、強く見せるために泥沼にすることが得策だと考えてはいないと思う」と否定した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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