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 1月4日(イッテンヨン)、東京ドームで飯伏幸太との激戦を制しIWGPヘビー級を防衛したオカダ・カズチカ。リミッターを振り切り全てを出し切った飯伏の妥協のない攻撃を全て受けた上での逆転勝利は、2020年最初の試合にもかかわらず早くも「年間ベストバウト」との声も上がっている。さらに翌日に内藤哲也とのIWGPとインターコンチネンタルの統一戦を前にして、試合後のマイクも印象的だった。

「超満員にならなかった~! でもこんなにも沢山お客さんが来てくれて、こんだけ熱いIWGPヘビー級の戦いが皆さんにお見せできて僕は本当に最高です。ありがとうございました」

 オカダにしては珍しく、リングの真ん中で涙ぐむ姿を見せた。この日の東京ドームの観客は40,008人。誰がどうみても満員の東京ドームにあくまで「超」を求め、純粋に悔しがる姿に新時代のプロレス界のリーダー・オカダの背負うものを見たような、そんなシーンだった。

 がむしゃらに王座の防衛記録を重ね、その強さを誇るかつてのオカダには、強いけれど「何か」が不足していた。試合の中身は凄い。相手のワザを受けに受けて最後は屈強なフィジカルで振り切って勝利する。そんな「王道プロレス」を面白くないと思うアンチも少なからず現れるのは仕方がないことだが、どこか試合後、会場全体に白けたムードがあったのは確かだった。

 しかし、年号が令和に変わる直前からオカダ・カズチカというプロレスラーへの風向きは大きく変わった。一昨年後半に参謀の外道を失い、今の時期は前哨戦で負けに負けどん底状態。イッテンヨンでは新進気鋭のヒール、ジェイ・ホワイトに完敗し、主役の座を棚橋弘至に奪われて暗中模索の日々が続いていた。

 ご存知のように長いトンネルを抜け、4月6日にアメリカ・ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで、若き王者ジェイを撃破し再び第69代王者に返り咲き、2019年は「プロレス大賞」を4年ぶりに受賞。ベストバウト部門とのダブル受賞で、年初のスランプを誰もが忘れかけていた。そんな2019年、脇役やら主役へと目まぐるしく環境が変わる中でオカダはタイトル以上に大きなものを掴んだように思える。勝っても負けても今のオカダのプロレスには「美学」がある。

 東京ドーム2連戦で時折見せたハイキックは、師匠のウルティモ・ドラゴンがオカダにアイディアを授けた「動けるジャイアント馬場」そのものだ。レインメーカーやドロップキック、有り余る優れた身体能力から繰り出されるワザはシンプルだが、年々破壊力を増している。当たり前になった戦いを改めて見ると“3倍速でジャイアント馬場”を見ているような錯覚に陥るときがある。

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■内藤にあって、オカダに無いもの

 1月5日(イッテンゴ)東京ドーム、史上初のIWGPヘビーとインターコンチネンタルの統一戦は、「史上初のタイトル統一」「東京ドームメインでの勝利」を掲げる内藤に対して、「未知なる領域たるドーム2日間を超満員にする」という業界全体の目標を掲げたオカダとのビジョンに違いがあり、その違いを試合を通じて感じ取ることができた。

 試合はレスラーとして一世一代の勝負に賭けた内藤哲也が勝利した。オカダの首を徹底的に攻め、勝ちにこだわり、封印していたスターダストプレスなど、レスラー・内藤が全てを出し切った執念の勝利だ。しかし、負けたオカダの“散りっぷり”も美しかった。

 オカダ・内藤戦のハイライトは、やはり両者がヒザを着いてエルボーで、しかも笑顔で殴り合うシーンだ。どうしても「オカダに超えられた内藤」という図式で語られがちなこの2人の構図だが、近年ファンの琴線に触れる戦い、パフォーマンスで丸腰でもカリスマ性を発揮してきたのが内藤だった。タイトルを失ったオカダだが、「エルボーに呼応する4万人の大きな掛け声」で名実ともにファンの信任を得て、また1つ大きなステージに立ったように思える。あれは紛れもなく「内藤にあってオカダにないもの」を得た瞬間だと思う。

 無冠となったが、2020年のオカダ・カズチカの戦いは続いていく。そして再びIWGP王座に返り咲く日はそう遠くないだろう。かつては「猪木・馬場超え」や「闘魂三銃士超え」は口に出すのも憚られるものがあったが、「この令和の怪物プロレスラーが歴史を変えるのではないか?」そんな可能性を見せてくれたドーム2連戦だった。

文/早坂ヒデキ

写真/新日本プロレスリング

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