逃亡中のカルロス・ゴーン被告が今夜、レバノンで記者会見を開く。
先週末にゴーン被告と接触した米フォックス・ビジネスによると、「彼らが私を引きずり下ろしたかった」と主張、自身の逮捕や日産会長解任などはルノーとの経営統合を進めようとしたことが原因の“クーデター”で、その証拠もあると話していたという。会見では、それに関与した人物の名前も明らかにする方針だといい、日本の政府関係者も含まれる模様だ。一方、日産自動車はゴーン被告の逃亡後、初めての声明を発表。「社内調査で判明した不正行為について、責任を追及する基本的な方針は逃亡によって何ら影響を受けるものではない」として、損害賠償請求など法的手続きを続けると強調している。
ゴーン被告は去年公開した動画でも「なぜ、このようなことが起きたのか。それは、何よりもまず、“恐れ”があったということ。アライアンスの次のステップ、統合、すなわち合併に向けて進むということが、ある人たちには確かな脅威を与え、それがゆくゆくは日産の独立性を脅かすかもしれないと恐れた」「日産の業績が振るわず、大きく低下している。これは会社(日産)の現経営陣に問題があったということだ」「数名の幹部、つまり、明らかに自分たちの利益のため、そして自分勝手な恐れを抱いたために、会社の価値を毀損している人たちのことを指している。今回の汚い企みを実現させるべく仕掛けた多くの名前を挙げることができる」などと話していた。
こうした主張について、元東京地検検事の郷原信郎弁護士は「日産の社内で解決すべきだったことについて、社内調査を検察に持ち込んでゴーン氏を逮捕してもらい、取締役会の場から排除して、会長を辞めさせた。少なくとも、その範囲においては立派な“クーデター”だろうし、それは否定しようがない。ゴーン被告としては、そこに政府の意向も働いていたと言っている。こうした主張については、すでに弁護側の予定主張記載書面がマスコミに公開されていて、その中でゴーン被告は“ルノーとの統合は自分がさせようとしていたのではない”、“あくまでもアライアンスを持株会社という形で強化しようとしていたが、フランス政府が目指していた統合には反対していた”としていて、“それよりも日産を独立させようとしていた日産幹部がクーデターを起こした”と主張している」と説明。
「おそらく会見では日本の刑事司法の制度の問題についても主張すると思う。つまり、こんな事件にもならないような事件でやられたと。それに対して、検察は色々な制約もあって反論できず、非常に苦しいことになるのではないか。実際、身柄拘束を長引かせようとしたことは間違いないし、保釈されているのに記者会見を開こうとしたら明らかに口封じの再逮捕をされた。奥さんと会わせないことも合理的だったのか。特別背任の中東ルートの事件自体が、元々嫌疑が薄いのに、なぜ奥さんとの接触を禁止しないといけないのか。その上、奥さんにも逮捕状を出した。マイナスにしかならないのに、何を考えているのか。裁判官ももう少し考えて欲しかったし、検察は国際社会を説得することはできないのではないか」。
また、元判事で法政大学法科大学院教授の水野智幸氏も「刑事事件の問題に限って見れば虚偽記載や特別背任をしたかどうかが大事だ。ただ、会見は国際世論に訴えるという面がある。日本は不公正なことをして彼を追い落とそうとしたという、ゴーン被告擁護の国際世論が高まれば流れが違ってくると思う。それを狙っていると思う。日本の刑事司法の今までの流れからすると普通のことだったとかもしれないが、世界から見れば長い勾留、弁護人の立ち会いのない取り調べは問題だろう。今回の逃亡で日本の司法はこけにされた面があるが、これをいい機会に、ちゃんとした刑事司法にして欲しい」と話す。
さらに大王製紙元会長の井川意高氏は「私はゴーン被告の“先輩”だ。森本特捜部長は私の事件では主任検事を勤めていて、私を取り調べた検事が“将来の検事総長だ”と言ったくらいのエリートのようだ。もしかしたら、私の事件で味をしめたのかもしれない」と苦笑。
「あまり言いたくなかったので今までは言ってこなかったが、私の事件も、現社長が創業家を排除するためのクーデターみたいなところがあった。私に言わせれば、特捜の手は汚れている。だからどちらかといえばゴーンさんに同情的だ。国際世論に訴えられた場合、誰がどう見ても公権力がクーデターに手を貸したと見られるだろう。また、特捜検事は汚職や脱税をやる組織で、会社法関係はあまり得意ではない気がする。そもそも会社法的に退職金は株主総会の決議がないと払えない。虚偽記載だと言われているが、株主総会の決議が通ってもいない、通るかどうか分からないものを記載していないから有罪というのは、かなり無理筋だと思う」。
井川氏の見方について郷原氏は「その通りだと思う。特捜検事も含め、検事には経済音痴の人が多い。偉そうにコーポレートガバナンスだと言っているが、本当に分かっているのだろうか。ゴーン氏に報酬を決める権限があったというが、実際にもらおうと思ったら、それなりの手続きがいる。それがまだはっきりしていないのに、いくらもらいたいと思うだけで報酬だと書かないといけないというのは、どう考えても無理がある」と賛同した。
一方、日本では新たな動きがあった。東京地検特捜部は被告の妻・キャロル夫人に対し、偽証の容疑で逮捕状を取った。ゴーン被告が会社法違反の容疑で逮捕された後、東京地検で事件の参考人として証言した際に覚えていないなどと虚偽の陳述をした偽証の疑いが持たれているという。
弁護士の郷原信郎氏は「本気で逮捕しようと思っているとは考えられない。容疑も、メッセージでやり取りしていたのを記憶がないと言ったということだが、これで偽証罪は無理だ。本当に逮捕しようと思っているなら、密かに逮捕状を取って海外に手配をし、捕まえてもらおうと考えるはずだ。もしかすると、アメリカのような犯罪人引き渡し条約のある国にキャロル夫人が行くことを何とかして防止しようと思っているのではないか。ゴーン氏が会見で日本の検察や司法をバンバン批判した後、キャロル夫人もアメリカで国連やメディアなどでもさらに批判をしていく、そういうことを避けようとしているのではないか」と指摘。
水野氏も「容疑を聞いた限りでは、本気で立件しようというのは考えられない。検察としてはとにかくやれることはやっておこうという程度のことだと思う」との見方を示していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:「逮捕はクーデター」ゴーン被告何語る?
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