「代替肉」などに代表される「フードテック」が今、世界的な大ブームとなっている。フードテックで生まれる食材や食品には「人工肉:小麦や大豆などの植物由来の“肉”。例として大豆ミートやグルテンミート」「細胞培養:動植物の食べられる部分の細胞を抽出し培養。例として牛、魚、野菜」「新食材:例としてミドリムシ、昆虫(コオロギ)など」といったものがある。
ベジタリアンや健康志向の人、痩せたい人だけではなく、近い将来に訪れるかもしれない食糧危機にももってこいの代替肉の市場は2025年には8000億円規模にまで成長するとの推定もあり、 去年5月、アメリカの代替肉メーカー「ビヨンドミート社」がナスダックに上場、初日の上げ幅は2000年以降で最高を記録した。また、11月には香港のメーカーがアリババの「ブラックフライデーセール」で代替肉を初めて販売したところ、2日で2万トンを売り上げたという。
日本国内でも大塚食品や伊藤ハムなど大手食品メーカーが代替肉事業に参入。日清食品は“謎肉”など、カップヌードルの中身全てを植物性のものに置き換えて計画だと発表している。AbemaTV『AbemaPrime』が取材した「SHOGUN BURGER」新宿店では、大豆や小麦など、植物性の食材で肉を再現している。脂肪が少な目でさっぱりしているものの食べごたえは十分で、違和感は無いようだ。「タンパク質が圧倒的に多いのと、カロリー、コレステロールが低いので、海外から来たベジタリアンの方、身体に気を使っていらっしゃる方、スポーツをなさってる方も召し上がることが多いと思う」と店長の扇谷厚子氏。
次に取材したのは、新宿区の大学施設内にある「インテグリカルチャー」。羽生雄毅社長は「細胞を培養で増やして肉を作っている」と話す。同社では低廉な大規模細胞培養技術を用いて、モモ肉の細胞からモモ肉を、肝臓の細胞からレバーを、という具合に、食べたい部位を作っている。これによりエサや農地などの削減が期待できるほか、再生医療や美容への応用の可能性もあるという。「極めて資源が限られた状況、例えば宇宙などでも肉が作れるということになる」(羽生氏)。
そして、JAXAやインテグリカルチャーなどの民間企業が共同で立ち上げたプロジェクト「Space Food X」が世界初の試みとして目指しているのが、まさに“宇宙食料”のマーケットの創出だという。小正瑞季代表は「宇宙で暮らすということは、もはやSFの世界ではない。そこで必要になるのが“食”だ。これは宇宙だけではなく、地球の課題も解決する。宇宙という究極的に厳しい環境で作った食料生産の技術は食料危機の問題解決にもつながるし、食料生産のために森を切り開かなくても良いとなれば、温暖化も抑えられる」と説明、「今後、生活の中にフードテックが浸透していくことになると思う。培養肉もかなり開発が進んでいるので、大阪万博の頃には皆さんが普通に食べているような状況になっていると思う」と力を込めた。
Beyond BioLAB TOKYOシェアラボ管理人で日本細胞農業協会理事の杉崎麻友氏は「生きている動物から幹細胞という増えやすい細胞を取り出してきて、それを培養するので、倫理的な問題点もクリアできると思う。植物工場のようなものを作ることができれば、より安定的に生産ができるようになる。インテグリカルチャーの作った培養のフォアグラを食べたことがあるが、舌に乗せたときのうまみ、ふわっと広がる感じがあり、天然のものよりも美味しいと感じた。現段階では肉の食感を生み出す難しさもあるが、それも技術開発でクリアされていくと思う」と話す。
その一方、「培養肉に関してはすでに世界に50社以上の企業があるが、まだコストが高いところが課題で、レストランに卸せる価格帯ではない。もう一桁、二桁下がり、スーパーで買えるくらいにしていけるかだ」と指摘。小正氏も「コストを下げる技術が非常に難しく、世界中の培養肉系のベンチャーが苦労しているが、インテグリカルチャーではそこをブレイクスルーするような開発をしているので期待している」と説明した。
2040年には従来の肉が40%、培養肉が35%、植物などの代替肉25%となるという見通しもある。既存の畜産と利害がぶつかる可能性もあるのではないだろうか。
この点について杉崎氏は「培養肉によって全てが置き換わってしまうイメージがあるかもしれないが、私はそうは思わない。細胞を取ってくるには家畜を育て続ける必要があるし、新しい選択肢が増えるという感覚だ。代替肉ある、昆虫食もある、とい具合に、食べたいものを選べる世界が来るということだ」との見方を示し、小正氏も「畜産と細胞農業、植物工場と農業、両方の産業がバランスを取りながら、供給していくことが必要だと思う」とした。
さらに、日清食品が行ったアンケートの「あなたは培養肉を試しに食べてみたいと思うか?」との質問では、まったくそう思う6%、ややそう思う21%、どちらとも言えない29%、あまりそう思わない24%、まったくそう思わない20%との結果が出ている。
この“心理的な壁”に関して杉崎氏は「単純に知らないということが大きいのではないか。このアンケートには続きがあって、細胞培養肉の技術が環境問題を解決する糸口になる、動物愛護の観点からも問題解決できる可能性があるという情報を提示した上で尋ねてみると、一気に“食べてみたい”の割合が上がっている。私が所属しているNPO法人でも、細胞農業がどういうものか、世界で起きていることを色々な人に知ってもらうようにしている」とコメント。「家畜の場合、ウイルスに感染しないよう抗生物質を投与しているが、培養肉はクリーンな環境で作れるのも強み。今後、安全面のルールや規制をしっかりと整備して進めていくことが必要だ」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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