アジア最大級の格闘技イベントONE Championshipの女子部門で現在2連勝中なのが三浦彩佳だ。DEEP JEWELS、パンクラスで活躍した三浦は昨年からONEに参戦。2月、8月と連続で一本勝ちを収め、1月10日のタイ・バンコク大会では3連勝をかけマイラ・マザールと対戦する。
日本から“世界”に飛躍した三浦だが「パンクラスでも外国人選手と闘っていたので、感覚としてはそんなに変わらないです。海外での環境の違いも気にならないですね」と言う。海外では、日本のように応援団の声援を受けて闘うというわけにもいかない。その部分も特にマイナスだとは思っていないそうだ。
「セコンドの長南(亮)さんの声さえ聞こえれば問題ないです。安心感があるし、指示が具体的で細かいので自分がどうしたらいいか分かるんですよ。冷静な判断は自分自身より外から見た人のほうができると思いますし」
セコンドの声をしっかり聞いてその指示通りに動けるということは、三浦がそれだけ落ち着いて試合をできているということでもある。「むしろ練習のほうがパニックになっちゃいますね」と笑う三浦。所属ジムは長南が率いるTRIBE TOKYO MMA。プロ練習には日本のトップ選手が集まることで有名だ。いわば日本有数の練習環境。そこで三浦は男子選手に混じってスパーリングを重ね、実力をつけた。舞台が外国であろうが相手が外国人であろうが「練習よりは楽じゃないかって思ってます(笑)」。
1.10バンコク大会で対戦するマイラはブラジル人選手。現UFC女子王者のジャン・ウェイリーとも対戦経験がある。
「ここまでONEで試合をしてきた相手と比べると相当レベルが上がったなと。今のONEはどんどん層が厚くなって、トップと下の選手の差が詰まってきてる。気が抜けないですね。誰と闘っても、相手は強い人しかいない状態なので」
ONEでの2戦は、いずれもケサ固めで抑え込み、自分の脚で相手の腕を極めて一本勝ち。ケサ固めは相手にディフェンスされやすく、首投げから移行する際にバックを取られる危険性もある。それでも「ある程度までは大丈夫」だという理由を教えてもらった。
「たぶんなんですけど、私は体が異様に柔らかいんですよ。それで他の選手と体の使い方が違うのかもしれない。相手に密着できるんです」
三浦の代名詞にもなりつつあるこの技だが、それだけにこだわるつもりはないようだ。
「同じ技では限界がありますし、引き出しは多くしていきたいです」
前回の試合では首投げではなくタックルからケサ固めへ。女子戦線でのランクも闘い方も「もう一歩踏み込んだところへ行きたい」と考えている。練習相手からして強豪揃いだけに「どうすれば勝てるのか」を考える力もつくのだろう。
以前から、三浦には“ゾンビ”というニックネーム(キャッチフレーズ)がある。スパーリングで何度やられてもゾンビのように立ち上がり、相手に向かっていく姿からだ。ONEでも、このネーミングは変えずにいきたいという。
「練習からついたっていうところがいいと思うんですよ。見た目の可愛さで注目される選手もいると思うんですけど、練習しないで勝てるような世界ではないので」
東京・練馬のジムで流した汗こそが自分の軸。だから三浦はどんな舞台でも変わらずに力を出せるのだ。
文・橋本宗洋