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(流血、竹串、画鋲。地獄絵図に自ら突っ込んでいった都)

「崖のふち女子プロレス」は、フリー女子レスラー・松本都がプロデュースするイベントである。前身は都がアイスリボン時代に1人で立ち上げた「崖のふちプロレス」。最近は開催されていなかったが、DDTの“大社長”高木三四郎がオーナーとなり、都から高木への「個人的な事業譲渡」という形で復活した。

 昨年12月24日の再旗揚げ戦では松本都vs黒潮“イケメン”二郎という予想外のカードが実現。ちなみに試合はこれ一つのみで、2人の闘いがいろんな形で(猛烈に脱線しながら)進んでいくのが「崖のふち」の特徴だ。

 クリスマス決戦が終わったと思いきや、第2戦もすかさず開催。日付はなんと1月4日であった。会場は板橋グリーンホール、試合開始は17:00。東京ドームで世界レベルのビッグイベントをやっているのに、真裏にぶつけてきた。いや、松本都にとってはドームこそが“裏”なのかもしれないが。そしてこの大会にしっかり駆けつけるマニアもいるから大変なことである。場内はほぼ満員、中には外国からの観客も。

 このイッテンヨン決戦で都が対戦したのは、DDTの常連外国人クリス・ブルックスだ。セコンドには大日本プロレス・小林軍団で活躍中のドリュー・パーカーがついた。

「新年早々、東京ドームにも行かずこっちに来てくれてありがとうございます!」

 そんな主催者(都)の前説から始まったこの大会。選手入場式(都のみ)も行なわれ、ここで「リング調整のため」休憩が入る崖のふちならではの展開。国際戦とあって、試合前には両国国家の斉唱も行なわれた。都が歌ったのは、崖マニアにはおなじみ「崖のふち国家」であった。

 試合が始まっても、やはり崖のふちでしか見られない光景がひたすら展開されていく。都の助っ人としてバンドマンの大内ライダー、くいしんぼう仮面が登場するも何もせず退場してみたり、試合に加わったかと思えばボクシングマッチでくいしんぼうvsドリューが実現。くいしんぼう仮面はローキックを蹴られてバービックばりの反則アピール。試合中に別の試合が始まるのは、もはやこのリングでは普通のことでしかない。都とクリスの相撲対決では都がヒザをつきながら片足タックルを仕掛け、即敗戦という場面も。

 さらに羽子板対決など、どうにも収拾がつかなくなったところで都が「こんな茶番いつまでやるんだ! プロレスで勝負しろ!」と逆ギレにもほどがあるアピール。ここであらためてリスタートした試合は、別の意味での大惨劇となった。

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(ラダーからのダイブも。勢いで何をしでかすか分からないのが松本都であり崖のふち)

 都がクリスの口に激辛のデスソースを流し込み、ステープラー(大型ホチキス)を頭に連打。リング下のテーブルに寝かせたクリスにリング上のラダーからボディプレスという超荒技も繰り出していった。「死にませんように」と拝んでからの一撃である。

 一方のクリスも都を流血に追い込み、マットに(都が)ぶちまけた画鋲の上に投げつけ、(都が持ち出した)竹串の束を頭に突き刺した。何もそこまでという状態の都に、クリスはフィニッシュのプレイングイマンティスボム(ダブルアーム式パイルドライバー)。

 攻めるほうも受けるほうもどうかしている大激戦を終えると、クリスは都に日本語で「メッチャバカ! マジデバカ!」とある種の賛辞を送る。都もまったくめげることなく「今日を乗り越えたら、もう日本で怖いものないから」とクリス激励したのだった。

「何が起きたのか、頭が処理しきれてないよ。自分のことを変わった人間だと思ってたけど、そんなことなかったね。あなた(都)は本物のクレイジー。ノージョークでクレイジーだ」

 あらゆる意味でメーターを振り切った興行、凄惨なデスマッチをも自分の色に染め上げてしまう松本都の底力に叩きのめされるようなイッテンヨンだった。インパクトという意味ではドームにも負けていなかったのではないか。今後の抱負として、都は「爆発物」を使ってみたいと語っている。

「法に触れるようなことがしてみたいです、はい」

 にこやかにそう言ってのけるから、やはりホンモノだ。

文/橋本宗洋

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