なぜいま自衛隊を中東に派遣するのか?本当に「調査・研究」だけなのか?“ヒゲの隊長”佐藤正久氏らが激論
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 中東地域の情報収集、そして日本が関係する船舶の安全確保を目的とした海上自衛隊の派遣が始まった。今回、日本はイランへの配慮からアメリカ主導の有志連合には参加せず、自衛隊独自の取り組みとして派遣する。

 仮に不測の事態が起きれば武器使用を認める「海上警備行動」への切り替えも想定されているが、なぜ今、緊迫が高まる地域へ自衛隊を派遣するのか。AbemaTV『AbemaPrime』では識者を招いて話を聞いた。

■“ヒゲの隊長”自民・佐藤正久氏「日本だけが高みの見物というわけにはいかない」

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 まず、中東派遣の意義について、ゴラン高原やイラクへ派遣された自衛隊の隊長を務めたこともある与党・自民党の佐藤正久参議院議員は「我々の生活、経済活動は油がなければ成り立たないが、その約9割がホルムズ海峡を通ってきていて、ペルシャ湾から日本へ通るホルムズ海峡、マラッカ海峡、東シナ海、バシー海峡の“油の道”には、今この瞬間も90隻の日本関連タンカーが浮かんでいる。私がイラクへ派遣されたのは2004年1月だが、その3か月後、ペルシャ湾で『高鈴』というタンカーが襲われ、銃撃戦になった。結果として乗組員は無事だったが、守ってくれたアメリカ海軍の若者2名とコーストガード1名が亡くなった。しかしアメリカは“同じ活動をしている仲間を助けるのは当たり前だ”と言ってくれた。さらに、こうした日本関連船舶に日本人はほとんどいない。昨年6月には『コクカカレイジャス』というタンカーが攻撃を受けたが、21人の乗組員全員がフィリピンの方だった。緊張が高まる中、他国の人たちが汗をかいているのに、日本だけが高みの見物というわけにはいかない。そこで自衛隊を事前に派遣をして不審船などの情報収集をするということだ。日本の場合、イランとは伝統的な友好国だ。しかし、そのイランと敵対しているアメリカは同盟国だ。さらにイランはサウジアラビア・UAEと敵対しているが、日本の油の65%はサウジアラビアとUAEから来ている。そういうバランスや中立性を考えると外に出た方が良いということだ。勘違いしやすいのは、自衛隊だけでなく、外交手段と船を運行している船主協会や石油連盟が連携して安全を確保するという点だ」と説明する。

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 その上で「P3C哨戒機を出すし、護衛艦たかなみには2機の哨戒ヘリを搭載している。実は哨戒機を長期間出せるのは日本とアメリカくらいだし、駆逐艦や護衛艦にヘリコプターを搭載し、広い海域を見られる特性を持っているのも日本とアメリカくらいだ。そこで広い外側は日本が情報収集し、陸上からの攻撃については有志連合やフランス、あるいはインドなどが手分けをして情報収集をする。また、船主協会や石油連盟が今最も欲しいのは、護衛よりも情報だ。そこでバーレーンにあるアメリカの司令部には連絡員を出す。日本の取った情報を色んな国に与え、他の国が取った情報を我々がもらう。そして政府と石油連盟、船主協会、海員組合などからなる官民連絡会議で共有し、安全を確保しようとしている。もちろん事態が緊迫すれば護衛もするし、不測の事態が発生すれば海上警備行動で対応する。船主協会も石油連盟も歓迎している。特別措置法は作った方が効果の大きい時に作るもので、今回は特措法を作ったからといって、日本関連船舶以外を守れるかというと、国連海洋法条約があるため守れない。海賊以外からの攻撃についても同様だ」とした。

■元海上自衛隊・伊藤氏「危険になったからこそ自衛隊を出す」

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 元海上自衛隊海将の伊藤俊幸・金沢工業虎ノ門大学院教授は「現場にいた人間としては、昨年末時点では反対だった。自衛隊を出す必要ない、何の意味があるのかと思っていた」とした上で、佐藤氏の意見に次のように補足する。

 「年末までは“大丈夫。何もないから”という声もがあったから、“そんなところに出すな”と思った。現場としては、上に決められて行ったはいいが、何の役にも立たないというのが一番困る。だから反対だった。しかし大きく情勢が変わり、イランとアメリカが戦争になるかもしれない状況になった。そんな中で、民間の商船は丸裸で動くわけだ。その時に寄って立つ安心感を与えるという意味から、護衛艦が近くにいるというのは大きい。お巡りさんが登校の時にいてくれるだけで気持ちは違う。いるということが大きい。海上自衛隊や海軍の任務では“プレゼンス”=存在というが、船は留まることができる。実際には守らない、護衛はしなくても、海の上に一隻いるだけで、周りの雰囲気は大きく変わる。皆さんは“危険になったのに、なぜ出すのか”と言うが、危険になったからこそ出すということだ。ただ、海賊対処法の対象はあくまでも海賊だが、今回の相手はテロリストかもしれないし、イスラム革命防衛隊かもしれない。そこに今の法律が使えるかというと、ダメだ。自衛隊の現場からすると、もう一度特別措置法を作ってもらって出す必要はあると思う」。

■国民民主・渡辺氏「アメリカ軍と一体化してしまう危険性も」

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 一方、元防衛副大臣で野党・国民民主党副代表の渡辺周氏は、「調査・研究」という派遣目的に疑問を呈する。「調査・研究というのは、あくまでも省庁の法的根拠を担保する法律に書いてある所掌事務の一つで、これによって実力部隊である自衛隊を中東にまで行かせるというのは掟破りだ。日本が中東に石油を88%も依存しているのも、タンカーがシーレーンを通っているのも確かなので、万が一の時は護衛をしなければいけない。ところが、調査・研究の名目では護衛はできない」。

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 そして「年末の閣議決定の時にはそこまでの緊張の度合いはなかったが、1月3日のソレイマニ司令官殺害以降、イランとアメリカは戦争状態、紛争状態になっている。抑制的な報復だったので沈静化するのではないかと言われているが、今後どうエスカレーションするかわからない。仮に攻撃された場合、武器で守ることはできるが、反撃はできない。自衛隊をそんな軽い根拠で行かせて良いのか。送り出す側の政治の側が覚悟を持って責任を持って、あらゆる可能性を考えなければいけない。自衛隊に対して愛情がないのではと思ってしまう。もし行かせるのであれば、こういうときには自衛隊はどうするのかという具体的な議論をして、特措法を作らなければいけない。まさに海賊対処と同じだ。しかし、“個別具体的なことについては、お答えは差し控える”と言って逃げてしまうので、全く議論にならない。しかも今回はアメリカに言われたから中間的なやり方をするしかないが、これには歯止めがない。今後、アメリカに軍事行動のための情報を提供したり、“もっと近くでやれ”と言われてもノーと言えなかったりした場合、アメリカ軍と一体化してしまう危険性もある」と厳しく批判した。

■東京新聞・半田氏「派遣には道理がないと考えている国は多い」

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 また、東京新聞の半田滋・論説兼編集委員は「考えてみれば、去年の5月にトランプさんが一方的に核合意から離脱し、大きな穴を空けた。それに対抗したのがイランで、核開発を限定的に始め、さらに穴を広げた。そして11月、バーレーンのアメリカ第5艦隊がオペレーション・センチネル(番人作戦)、つまり監視役をやるという作戦を立ち上げ、そこに有志連合が入ってきた。入っているのは6カ国だけで、ヨーロッパでいえばイギリスしかない。あとはオーストラリア、中東の3カ国とアルバニアだ。つまり、この派遣には道理がないという考えを持っている国が多いということだ。実際、ドイツや韓国は何もしていない。また、去年6月に日本船籍のタンカーが攻撃された際、当時の岩屋防衛大臣は“自衛隊派遣は考えていない”と言っていたが、それから日本の船が危険な目に遭ったということはなかった。それでもアメリカに“日本は何もしなくていいのか”と迫られて話を進め、単独で出すことにした。渡辺さんのおっしゃるように、本来は国会で、国民に見えるように議論をした上で特措法を作る必要があったと思う。派遣するなら最初から海上警備行動で出すべきだった」と指摘。

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 渡辺氏も「“なぜ我々は中東に依存していないのにここを守るのか”というのがトランプの言い分で、中国や韓国の名前も挙げて“中東に依存している連中、出てこい”という話だ。そして、今回のことが起こったので、日本には“真っ先に来い”と。しかし、トランプと心中して本当に大丈夫なのだろうか。オペレーション・センチネルが軍事行動を伴うのか伴わないのか、日本政府に聞いても分からなかった。航行を守るためなので、実際には軍事行動を伴う。日本は軍事行動まではできないと主張しているが、アメリカに言われれば全くノーとは言えないから、離れたところで情報収集する。だがオマーン湾からアデン湾までは2000km、東京から石垣島くらいの距離がある。そんな中で情報収集をしてどれだけの情報が得られるのか。結局アメリカの下請けみたいになって、シーレーンを守る、日本の商船やタンカーを守るという話でなくなった時にどうするのかということも議論すべきだ。国会が終わったら閣議決定した。そして国会が始まる前に派遣命令を出した。議論せずに既成事実になったことは問題だ」と重ねて訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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