アスリートの世界では、「プレー」以外にも、選手を見るもう一つの視点がある。「イケメン」だ。特に女性ファンが競技に注目するきっかけとなる“選手の顔”は、今も昔も、大切な要素だろう。
サッカーの内田篤人や長谷部誠、野球のダルビッシュ有、フィギュアスケートの羽生結弦、ラグビーの五郎丸歩、バドミントンの上田拓馬……好みは千差万別といえど、万人に認められる「顔」がある。
フットサル界の筆頭は、上村充哉だ。立川・府中アスレティックFCに所属する23歳の若手ホープは、先日実施された「Fリーグイケメン総選挙」で堂々の1位に輝いた。
顔でもプレーでもなく、競技に取り組む姿勢を見せたい
「うれしいですよ、本当に。シンプルにうれしいです」
「イケメン」と言われてはにかむその姿も、イケメンだ。Fリーグイケメン総選挙でNo.1に選ばれた上村充哉はたしかに、誰がどう見ても相当な顔面偏差値の持ち主だ。「何をしても様になる」とはよく言ったもので、ピッチ外でたたずんでいても、ピッチ内で必死にプレーしていても、絵になる。ただし、ピッチ内のそのプレーは、彼の“草食系”な見た目とは、ちょっと印象が異なる。非常に、パワフルなのだ。
上村の最大の特徴は「左利き」であり、ミドルレンジから放たれるシュートの威力は破壊力抜群。近年、彼自身のフットサルのレベルアップと味方との連係が向上したことで、「上村の左足」は相手の大きな脅威となっている。言ってしまえば「レフティー」という要素もまた、イケメンを加速させる要素ではあるが……。
上村がフットサルと出会ったのは小学生の頃。「床屋でチラシを見て」京都のフットサルスクールに通い始めたところからステップアップを続け、高校卒業とともに湘南ベルマーレの育成組織に新天地を求めた。高い技術と強い意志を持つ上村は瞬く間にトップ登録を果たし、クラブも「湘南の未来を担う選手」として当時20歳の彼にキャプテンマークを託すなど、大きな期待をかけた。しかし上村はトップ登録から2年のシーズンを過ごした後、周囲に愛されるその環境を離れることで、さらなる成長を求める決断を下した。
2018シーズン、立川・府中に移籍した当初は、経験値が高くない上村にはベンチを温める日々が待っていた。「チームの集大成」としてリーグ制覇を狙う立川・府中において、出場機会は得られたが、主軸ではなく、どちらかと言えばシュート力を生かしたいときのスポット起用がメインだった。
同学年の内田隼太がメキメキと頭角を現す一方で、自分の出番は少ない。そんな経験も、彼をひとまわり大きく成長させる要因だった。上村は今シーズンになって先発起用が増え、ポジションをつかんでいった。
「チームにケガ人も多かったのでなんとも言えないですけどね。でも、よくなってきたとは思います」
しかし、決定的にまだ足りないものがある。ゴールだ。今シーズンは33試合で5得点。「もっとゴールがほしい」。彼の能力と期待値を考えても、それが決して多い数字でないことは明白だ。
それでも、彼の言う「ゴールがほしい」には必ず、枕詞がある。「チームの犠牲となって、献身的にプレーした上で」だ。上村は、整った顔の奥にある熱い気持ちをのぞかせながら、こう続ける。
「イケメンと言われるのはうれしいですし『プレーイケメン』とも言われたい。でも僕は、トモくん(渡邉知晃)とか(内田)隼太のように、プレーだけで見せられるタイプじゃない。普段からフットサルに取り組む姿勢であるとか、そういったものを、下の世代の選手にも見せていきたい」
23歳という若手でありながら、そのポジションに甘んじることはない。クラブに在籍する皆本晃や渡邉、完山徹一といったベテラン選手のピッチ内外の言動に触れてきたことで、彼は自然と「上を目指す選手の生き様」が何なのかを感じ取り、自らが行動で示していくことを肝に命じたのだ。
「若手だからと甘えていられない。(ベテラン選手が)引退したら次があるということではダメ。僕らがその世代に食ってかかるくらいじゃないと、クラブとして底上げできないですから」
顔面もイケメン。プレーもイケメン。心はもっとイケメン。クラブと、日本フットサルの将来を担っていくであろう選手、上村充哉のピッチ内外の姿に、ますます注目せずにはいられない。
文・本田好伸(SAL編集部)