“教養コンテンツ”、“芸人の新ビジネス”として売り出していたから?「中田敦彦のYouTube大学」炎上のメカニズム
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 100万人以上の登録者数がいるオリエンタルラジオ中田敦彦のYouTubeチャンネル『中田敦彦のYouTube大学』が炎上中だ。

 慶應義塾大学卒で自称“元ガリ勉”というキャラを活かし、政治や哲学、歴史など様々な分野を解説した“学べる動画”は多くの視聴者を獲得。再生回数は「5Gで世界が変わる!前編」が403万回、「宗教団体 創価学会前編」が354万回、「日本史編 縄文~平安時代前編」が235万回、「日本の神話『古事記』が面白い」が225万回、「第一次・第二次世界大戦」が219万回と、人気YouTuberの仲間入りを果たしている。

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 ところが昨年末、イスラム教について解説した動画について、イスラム思想研究者の飯山陽氏が「イスラム教の『解説』なるものを聞いてみたら、実に酷かった。宗教の知識として不正確であるということを、誰かが指摘する必要があると思う」とのツイートを投稿したのを皮切り、宗教や歴史を扱った動画についての指摘が相次ぎ、「勉強用のチャンネルでデマは駄目」「専門家を監修につけてほしい…」「堂々とネットで嘘を流さないで下さい!」といった批判が殺到した。

 一方、「ファクトチェックは各々でしなよ」「こんな間違い、テレビの地上波も本もいっぱいあるじゃない。なんであっちゃんだけやり玉にあがるの?」「そもそもネットに完璧を求めるのっておかしくない?もっと、ネットって自由だったでしょ!!」「揚げ足取りだな」「動画をそのまま信じ込むリテラシーが問題じゃない?」「“嘘”という人は自分で正しいと思うコンテンツ作ればいい」「出る杭は打たれる…」「この動画が勉強するきっかけになるならいいじゃん」といった擁護の声も少なくない。

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 ネットの炎上対策を手がけるMiTERU代表のおおつねまさふみ氏は「ものすごく複雑なテーマを分かりやすい口調でやることには意義があると思うが、どうしても不正確になってしまうのは宿命だ。そのことで本や雑誌、テレビ番組が専門家の指摘を受けるということもよくある。中田さんの場合、有名人で再生数も非常に多いので、教育上良くないのではないかという批判を受けやすかったのだと思う。かつて石ノ森章太郎が『日本経済入門』という漫画を描いた時に批判を浴びたが、結果的には内容が評価され受け入られていった」と話す。

 その上でおおつね氏は「実は中田さんのYouTubeチャンネルは去年も炎上している。池上彰さんの書籍を元に日韓問題を扱った際、偏っているのではないかと指摘されていた。今回はそれ以上の大騒ぎだ。心理学用語に“シャーデンフロイデ”、ネット用語に“メシウマ”という言葉がある。中田さんの評判や動画再生数が落ちたとしても、自分の生活には関係ない。むしろ有名な人、恵まれてる人がひどい目に遭っているのを見るのは楽しいと思う心理がある。それが人間でもある」とした。

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 ITジャーナリストの三上洋氏は「ものすごい守備範囲の広さだし、それを棒読みではなく、血肉化して話しているのはすごいことだと思う。掴みや面白くするために擬人化したりするのは良いが、本当のことを言わなければいけない。また、教養コンテンツとして売り出しているし、黒板に書いて説明する形式、“大学”という看板にみんなが反応したのだと思う。これが『中田敦彦の◯◯論』というようなタイトルであればスルーされていたかもしれない」と指摘する。

 「正しさを求めるのも、間違ったことを言ってはいけないと主張するのも当たり前。ただ、ネットでは指摘や否定、アンチばかりが目立ってしまう。たとえば今回の問題についても、冷静な両論併記が最もリツイートされない。面白くないから。一方、中傷のような批判をすればリツイートされるだろうし、中田さんを支持するような書き込みも非難されるだろう。最近では紙媒体よりもネットに原稿を書く時の方が慎重にならざるを得ない感じがする」。

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 また、慶應義塾の若新雄純特任准教授は「最近では大学そのものが流行りの言葉で言えば“Update”していて、先生が正しいことを言い切る場というよりも、いろんな解釈や考え方があることを指摘し合い、学び合う場にもなっている。そして、インターネットというものはコメント欄なども含めてみんなでコンテンツを作っていくもの。その意味では、今回の動画は教科書的すぎたというか、“完成形”すぎた。そこに対して、これは違うのではないかという意見が出てきたのではないか。そして、単にボランティアとしてやっているなら別として、彼はこれが新しい芸人のビジネスの形、活路だと公言している。仕事としてやっているおなら、いい加減なものではいけないという見方をされるのは当然だと思う。今後は、例えば“訂正あり”のような形で修正した動画を作っていけば、それこそネット時代の新しい学びのあり方を提案できることにもなる」とコメント。

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 『週刊東洋経済』の山田俊浩編集長は「実は間違っていても訂正されず放置されてしまう紙の書籍の方がやばいとも言える。その点、ネットはインタラクティブ。『東洋経済オンライン』も間違いを指摘されることがあるが、訂正してお詫びをする。中田さんも指摘をスルーせず、きちんと対応すれば信頼は上がると思うし、彼が『NewsPicks』で“Update”と言うとおりのことをやっていけばいい」とした。

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 さらに芸人としての立場から、ふかわりょうは「一般論として、公の場で何かを話す時に、知ったかぶりや身の丈に合っていないような発言をしたために大怪我をするというのは、表現者が成熟する過程で学ぶものだと思う。ただ私の中では、少なくとも宗教を扱う場合は相当の覚悟を思って臨むべきだという感覚がある。そこで単純な間違いなどが出てしまっているとなると、楽しませたいと意図と覚悟とが釣り合っていないのではないかと思う」とコメントしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:オリラジ中田が炎上!背景にメシウマ?

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