女性専用車両をめぐり情報番組が炎上…背景に男性による“おばちゃん”想定の番組作りが?
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 今月13日に放送された『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)と、その2日後の『グッとラック!』『Nスタ』(TBS系)の3番組の内容が非難を浴びている。

 テーマはいずれも「女性専用車両」。各番組とも街頭インタビューや独自のアンケート調査の結果を交え「香水などの匂いがきつい」「場所の取り合いで小競り合いが起こる」「持っているブランド品でマウントの取り合い」といったケースがあると紹介。男性から視線が無いために、車内は一部の女性たちが“やりたい放題”で、トラブルを避けるために専用車両に乗りたがらない女性が増えていると報じたのだ。

 放送後、ネット上には「女性特有のトラブルみたいな報じ方をしているが、一般車両でも同じではないか」「“男がいないから女がだらしなくなる”という発想がジェンダーギャップ」「女性VS女性の構図をつくって茶化すことはやめて欲しい」等、違和感を表明する投稿が相次いでいる。そこで20日のAbemaTV『AbemaPrime』では、昨今の番組作りの問題点について考えた。

■検証もなく「ネットによると」だらけに?

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 まず、一連の企画のネタ元となったのは、ニュースサイト『Jタウンネット』が掲載した“女性専用車両に「乗らない女性」に男性読者が苦言「あなたのせいで座れない男がいる」”(昨年12月27日)、“女性専用車両に乗りたくない女性の本音「利用するのが怖い」「おじさんに埋もれた方がマシ」”(1月7日)、“女性専用車両は臭くて汚い?利用者が明かす実態「あぶらとり紙が散乱している」”(同13日)だとみられている。

 今回の問題を取材している『ハフポスト日本版』の湊彬子記者は、テレビ朝日の報道局在籍の経験を踏まえ、「最近は新聞も含めネットの話題からネタを決めるということ始めているので、今回もそうではないか。そして、企画の展開のさせ方で行き過ぎがあったのではないか」、幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏も「最近では雑誌も含めて、“ネットによると”と書くことで、名誉棄損に問われても“引用しただけです”と主張するようになっていると思う」と指摘する。

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 カンニング竹山は「情報系やワイドショーと呼ばれる番組の場合、自分たちが取材したものよりも週刊誌やネットにあるものを拾うことが多い。そして本来はそこから独自に取材して、“うちの番組ではこうでした”、ということを示さなければいけない。ただ、それをやってしまうことで炎上することもあるし、番組サイドが責任を問われることもあるので、怖がってやらなくなっている。視聴者やスポンサーから苦情が来ても、“うちじゃないです。ここに書いてあったネタです”と逃げればいい。しかし家のテレビから流れてきた情報については、“正解だ”と思う人が結構いるし、危険なことだ」と苦言を呈した。

 また、専用車両について『モーニングショー』では独自の調査結果として「“乗らない”と答えた女性が50人中35人」、『グッとラック!』では「“乗りたい”が151人、“乗りたくない”が49人」、『Nスタ』では「50人中40人が“利用したい”」という数字を示しているが、聞き方、そしてその結果によって印象はかなり異なる。

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 これについても箕輪氏は「雑誌などもそうだが、こういうものはちゃんとした調査ではなく、言いたいことを裏付けるための作業でしかない。聞く場所によっても結果は違うわけだし、正直、意味のないものだ」、エッセイストの小島慶子氏は「街頭インタビューの質問と答えのやりとりがオンエアでは違う文脈で使われていたということで、TBSが謝罪している。また、ネタを後追いする場合、“ネットではこうなっているが、本当か”“反対から見たらどうか”“違う視点ならどうか”ならいいが、ただネットの言説を強化するだけのものを出すと大変なことになる」と警鐘を鳴らした。

■視聴率至上主義、男性中心の職場であることの弊害か

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 今回の企画について、テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「“女同士のバトル”という取り上げ方が品のいいものではないし、取り上げるほど大きい問題なのか、という点はあるが、本当に必要なのであれば、それを取り上げること自体はいいと思う。もちろん痴漢の問題は解決されなければならないが、女性専用車両を論じる場合には必ず痴漢のことも取り上げないといけないというのは違うと思う」との考えを示した。

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 これについて慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は「痴漢の話をすると必ず冤罪の話が出るが、冤罪の被害に遭った男性と痴漢で被害に遭った女性の数は圧倒的に後者が多い。そして、お堅い鉄道会社が一両を女性専用にせざるを得ない状況があり、それが今も続いている状況がある。報道機関として、そういう問題に触れず、“女性の戦い”みたいに面白おかしく取り上げたのは問題だと思う。なぜ視聴者が怒って抗議しないのか。あるいは、視聴者が“馬鹿らしい”とチャンネルを変えないのかが不思議だ」と指摘。

 そして、その背景について「不思議なことに、作っているのは男性でも、視聴者はいずれも女性がマジョリティだと思う。それで視聴率が高いということは、女性の気持ちを掴んでいるということだ。実際、夫婦別姓に反対しているのは60歳以上のおばさん議員だし、自民党の女性議員たちは若い女性がきらいだ。上場企業の役員をしていても、男性役員が女性の育休拡大に賛成しても、女性役員が反対することもある。つまり女性でも2つに分かれているという点も大事だ」と分析した。

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 小島氏は夏野氏の“おばちゃんは女性が嫌い”という見方を強く否定した上で、「問題視された理由に、“女って、男の目がないとこんなにだらしない”“女って、女同士だと性格が悪い”というような、いわゆるミソジニー、女性嫌いの視点で取り上げたことがあると思う。女性が2割くらいしかいないテレビ業界には、頭が悪くて人の悪口が大好きな“おばちゃん”を想定して、そこに向けて作る傾向がある。“それはリアリティがない”と指摘する女性スタッフも少ないし、男性スタッフたちが“行儀悪い女の話を取りあげれば、おばちゃんが喜ぶのではないか”という前提に立った可能性はある。日本は出版も新聞もネットも、すごく多様性に欠けている。それは性別だけではなく、男性間でもそうだ。たとえば育児をしながら、病気を抱えながらでは働きにくい、外国人は入ってきにくいとなると、男性の種類が似てくるし、様々な視点が出てこない」と持論を展開した。

 他方、カンニング竹山は「制作サイドからすれば、タイトルがキャッチーで、いかにも数字が取れそうだという感じがしたのだと思う」との見方を示す。「初めに『モーニングショー』が扱って議論になったのに、TBSは翌日にまたやっている。裏番組を見ていないのだろうか。仮に『モーニングショー』の毎分視聴率が上がったからという理由であれば、それも番組制作者としてプライドがないのだろうか。ネットもあるし、制作側が考えているほど視聴者は馬鹿ではない。昔のやり方で数字を取ろう、スポンサーに怒られないようしようとするからテレビが面白くなくなっている」。

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 箕輪氏も「ワイドショーだからといって今回のようなネタを扱っていいとは思わないが、根っこにあるのは、報道番組と情報番組・ワイドショーがぐちゃぐちゃになっているという問題だと思う。また、ステレオタイプなものにあてはめて企画を作るということのはテレビ番組に限った話ではないと思う。“おじさんは新橋で飲んでいて”みたいなものだって、ある特定の世代を区切って企画を立てているということ。大衆に向けてコンテンツを作らなければいけない一方、多様な時代なので“自分はそうではない”というツッコミもある。このズレが色々なところで起きている」と話した。

 湊氏は「おそらく『モーニングショー』の視聴率が良かったから追随したのだろう。また、テレビ番組を作る時、“専業主婦にも分かるように”というのはよく言われる言葉だと思うし、男性が“女の敵は女”と考えているという問題もあると思う。そして、痴漢に対する問題意識が低い。そもそも通勤電車の混雑を平準化したいという議論があって、それができない理由の一つに、女性専用車両が空いているのではないか、という意見がある。その原因が痴漢だ。これは一度被害を受ければ一生忘れられないような嫌な思いをする性犯罪だ。この社会課題を解決すればみんなの課題が解決できる話だし、テレビ局としてもそちらに向かうべきなのに、それを軽視し、女性専用車両に乗っている女性たちの問題ではないか、というような取り上げ方をしてしまった。“面白いからいいではないか”という、人権意識に欠けた発想があると思う。電波を使っている以上、どういう社会をつくりたいかを考えるべきだ」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:女VS女はテレビの妄想!?女性専用車両をめぐって激論

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