中国で感染が拡大している新型コロナウイルス。22日、発生してから初めてとなる会見を開いた中国衛生健康委員会の李斌副主任は「ウイルスは変異の可能性があり、感染がさらに拡大するリスクがある」と発表。ヒトからヒトへの感染が認められると警告を発した。ウイルスによる肺炎の死者は23日朝の段階で17人に達し、当局は、武漢市を離れるルートの閉鎖を決定した。
最も感染者が多い同市では一連の騒動の後、野生動物の販売が禁止されているものの、海鮮市場を撮影した映像には、感染源とされるタケネズミやアナグマなど数多くの動物が今も売られているようだ。
武漢から東へ約700kmのところにある上海ではマスクが飛ぶように売れており、首都・北京でも通りや地下鉄にはマスクをしている人が目立つなど、中国国民の対策への意識が高まっていることを伺わせる。
上海ファミリークリニックの田口信子医師は街の様子について「19日に新型コロナウィルスによる肺炎の疑い、というニュースが出てからというもの、街の空気が大変、緊迫していると感じる。この10年、マスクをして外を歩く人を見かけたことはほとんどなかったが、今は3分の1くらいの人がマスクをしているので、異様な風景だ。ウィルスなので一般的な意味では感染しやすいが、SARS同様、コロナウィルスにかかったからといって死亡率が100%ということはなく、重症化率もそこまで高くはない。ただ新型ということもあるし、政府は2002~2003年のSARSの教訓から抑え込みに躍起になっていて、マスク・手洗いなどをして不要不急の外出は控えよ、特に老人や基礎疾患がある人、新生児などの体の弱い人は警戒するように、呼びかけているし、ニュースでも感染予防法を伝えている。旅行をキャンセルしたり。中国人でも日本人でも家にいようという雰囲気はある」と話す。
また、医療機関の現状については「上海では発熱、咳、全身倦怠感が1週間以上続いて呼吸が苦しくなり、CTで肺炎が示される患者については検体を疾病制御予防センターに送り、患者を集中化させている。今のところ当院には新型肺炎が疑われる患者さんは来ていないが、他の日系クリニックでは1名疑いがあり、やはり疾病制御予防センターに送ったと聞いた。医療従事者への感染もあったということで、一般的な眼科、耳鼻科でも受付の女性がマスクをして検温するといいった警戒をしているし、大きな病院では集中外来の医師やトリアージの看護師はSARSの時のような厳重な防護服高性能のマスクを身に着けた状態で診療している。1名でも患者が出てしまうとその病院は閉鎖され、同僚や家族もセンターに隔離されると聞いているので、医療従事者も色々と心配はしている」と明かした。
感染者は日本、韓国、台湾、タイ、マカオなどで確認されていて、21日にはアジア地域以外では初めてアメリカでも確認された。武漢を旅行し、15日に帰国した男性で、容体は安定しているという。ただアメリカのCDC(疾病対策センター)は武漢からの渡航者の入国をニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、アトランタ、シカゴの5つの空港に制限し、検疫体制を強化している。
折しも24日から中国では春節を迎え、大勢の人々が海外などへ旅行する。日本の検疫は大丈夫なのだろうか。
ナビタスクリニックの久住英二医師は「現時点で出ているデータだけを見ると、死亡した割合は2%ちょっとくらいだ。SARSの時は6.9%、MERSの時は30%くらいあった。また、亡くなった9人のうち、4人の病状については詳細が出ているが、60代2人、80代1人と高齢で、40代の方も1人いらっしゃるが、糖尿病や脳梗塞などで体が弱っていた方だ。つまり、今のところ体の丈夫な方はあまり心配いらないかもしれないし、少なくとも日本において感染する率は中国よりも低いので、息が苦しい、だるくてご飯が食べられないなど、重症化するような兆候があれば、その時に医療機関を受診するということだ。ただし混んでいる待合室に行ってしまうとウイルスを撒き散らしてしまうことになるので、武漢に行った方、もしくは武漢に行ってきて具合が悪くなった方と接触した場合は病院に予め連絡をして、他の患者さんがいない時間に受診するといったことが必要だ」と話す。
「すでに神奈川県で1人患者さんが出ていて、その方に接触した40人くらいが経過観察をしている。潜伏期間が2週間くらいはあり得るので、その方々が発病しなければ一度終わりになる。我々にできることは、外から帰ってきたら石鹸をつけて手洗いをする。それと、普段から健康的な生活をして体力を保つ。そして睡眠不足やお酒の飲み過ぎ、過労、深夜労働を控えるということだ。また、医療機関の側は体制も考えていかないといけない。疑わしい方をどこの医療機関で診察するのかといった取り決めができていない。中国からの観光客がたくさんいらっしゃる地域とそうではない地域があるので、事情に応じて、対策を講じていかなければならない」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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