リオネル・メッシ、熊谷紗希、仲川輝人、そして「ペピータ」。13年中12回優勝のフットサル絶対王者から選ばれた、必然のMVP
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 最優秀選手賞(MVP)。それは、年間、もしくはシーズンで最も活躍したただ一人の選手に贈られるプライズである。ゴール数など個人の数字とともに、所属チームの結果に大きく貢献した選手が獲得する。

 昨シーズンでいえば、横浜F・マリノスの仲川輝人はJリーグのMVP、なでしこジャパンの熊谷紗希はアジア年間最優秀選手賞、バルセロナのリオネル・メッシは“世界最高の選手”の証明、バロンドールを獲得した。

 そして、Fリーグの2019シーズンの最優秀選手に選ばれたのが、名古屋オーシャンズのペピータだ。2007年に創設された日本最高峰のリーグで、通算12回目の優勝を成し遂げた“絶対王者”の原動力となった。この選出は当然の結果だと思わせるほど、ペピータのパフォーマンスは圧巻だった。

リオネル・メッシ、熊谷紗希、仲川輝人、そして「ペピータ」。13年中12回優勝のフットサル絶対王者から選ばれた、必然のMVP
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約1年の戦線離脱から復活した最強のブラジル人

 今シーズンの優勝チームを決めるプレーオフ決勝、ペピータは第1戦でも第2戦でも、ゴールを奪った。第1戦は、開始からわずか20秒、高速カウンターで中央を単独突破して左足を一閃。第2戦は、右のCKから送られた浮き球を、逆サイドでそのままボレー。その2つは、シュートのインパクトとほぼ同時に、ゴールネットへ突き刺さった。「ほぼ同時」が誇張ではないくらい、とんでもない威力だった。

 会場で目撃した観客はおおいに興奮したが、一方で「ペピータなら当然」という空気もあった。なぜなら、今シーズン何度も何度も、とてつもないプレーで観客を沸かせ続けてきたからだ。

 リーグ戦の33試合で奪ったゴールは37。それだけでも十分にすごい数字だが、彼のすごさは得点だけでは語り尽くせない。その一つは、リーグトップの225本を放ったシュート数だ。これは得点率ということよりも、それ自体が相手の脅威となっていた、という効果が大きい。チームメートの誰もがこう話す。

「ペピータが常にゴールを狙っているため、相手はマークを強めないといけない。そうすると違うところにスペースが生まれるし、ほかの選手がゴールを奪うきっかけになっている」

 目に見えないところも含めて、今シーズン一番ゴールに絡んだ選手がペピータだ。彼は守備力も高く、相手内の激しいプレッシングからボールを奪うことも珍しくない。攻守すべてで不可欠な選手なのだ。

 しかし、ペピータは名古屋に加入した直後から輝いていたわけではない。

 2017年4月、ブラジルのコリンチャンスからやってきたレフティーには、一つの使命が課せられていた。それは、前年度に10連覇を逃した名古屋にタイトルを取り戻すこと。つまり“優勝請負人”となることを期待されていたのだが、わずか2カ月足らずで、大ケガを負ってしまう。リーグ開幕前のカップ戦の初戦で、まさかの左膝前十字靭帯断裂。全治は約6カ月。祖国に帰って手術を受けて、リハビリを続け、ようやくピッチで戦えるまで回復したが、そのときの登録はサテライトチーム。トップデビューはお預けとなっていた。

「苦しい時期でした。ですが、以前にも一度、大きなケガをしたことがありましたし、きちんとリハビリをすればむしろ強くなって戻れると確信していました。忍耐が必要でしたが『強くなって戻る』ことだけを目標に努力していたので、いい状態で復帰できました」

 そうして、1年越しにデビューを果たした昨シーズンは、24得点をマーク。チームのリーグ連覇に十分貢献していたが、今のようなインパクトを残していない。彼の真の力は、そんなものではなかった。

 2019年8月に出場したアジアクラブ選手権では、一人しかない外国籍選手枠に選ばれて出場すると、文字通り大車輪の活躍を見せた。キレ味鋭いプレーでチャンスを作り、ゴールを生み出し、クラブに3年ぶり4回目の「アジア王者」の称号をもたらした。それ以降、ペピータの存在はどんどん増していった。

 個人の力で局面を打開して何度もチームを救い、その活躍で勝ち点をつかんだ試合は数知れない。「ペピータしかいないでしょう」フットサル関係者の間では、彼のMVP選出を疑う者は誰もいなかった。

「MVPはうれしいけど、今日のプレーオフ決勝のような難しいゲームに勝てたことの方が重要。みんなで喜びを分かち合えていることが、私にとっては一番うれしい」

 MVPを受賞した後で、ペピータは満面の笑みを浮かべながらそう答えた。ピッチでは見せることのない表情を見せた彼だが、すぐさま表情を引き締めてこう続ける。

「また気持ちを切り替えて、次の4冠を狙っていきたい」

 名古屋は今シーズン、カップ戦、アジアクラブ選手権、Fリーグの3冠を達成した。残すタイトルは、3月に行われる日本一を決める大会「全日本選手権」だけ。クラブ史上2回目の4冠達成を遂げるためには、この男の力が絶対に必要だ。ブラジルからやってきた優勝請負人は、すでに次の目標を見据えている。

 AbemaTVでは5月30日から始まる新シーズン「Fリーグ2020/2021シーズン ディビジョン1」の全132試合を生中継。ペピータはもちろんのこと、名古屋オーシャンズも、彼らを追随するチームも、そのすべての試合がリアルタイムで配信される。文字通り、日本最高峰のフットサルの戦いを、AbemaTVで目撃しよう。

文・舞野隼大(SAL編集部)

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