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 今、日本で最も勢いのある選手の一人が佐藤将光だ。修斗のバンタム級世界チャンピオンであり、アジア最大級の格闘技イベントONE CHAMPIONSHIPに参戦中。修斗、ONE合わせて5連続KO勝利と絶好調で、昨年10月は修斗とパンクラスの王者対決で強豪ハファエル・シウバも倒してみせた。30代でキャリアのピークを迎えつつある佐藤は、連勝についてこう語っている。

「総合格闘技は(パンチ、蹴り、テイクダウン、寝技と)やることがいっぱいあるんですよ。だから選手として完成するまで時間がかかるんだと思います。僕は今年33歳。ここにきてようやく、やってきたことがトータルで出せるようになったのかなと。もちろん勢いもあるとは思うんですけど」

 MMA(総合格闘技)は経験だけでなく「知識」でも大きく差がつくと佐藤は言う。

「今はネットで技術が広まってますからね。単純に技を知ってるか知らないかで違いが出る。その知識を蓄積するのも時間がかかりますから。総合は他の競技よりピークが遅いと思います」

 次戦は1月31日のONE・マニラ大会。韓国のクウォン・ウォンイルと対戦する。タイトル挑戦も期待されるだけに大事な一戦だ。佐藤曰く「最近、試合のたびに終わりを意識しているので悔いなく闘いたいです」と同時にONEのベルトがゴールではないとも。

「もちろんベルトは目指してますし、常に上に行きたい。明確なゴールを考えているわけではないんですよ。もし競技をやめるとしたら……満足のいく動きができなくなって、あとは落ちていくだけだと感じたら、続けようとは思わなくなるでしょうね。でも、それも分からないですよ。その時になってみて、動きが落ちたことを自分が感じられるのかどうか。ただ今年33歳ですし、アスリートとしては後半にきているなと。死を意識して生きるのと同じで、終わりを意識したほうが日々、強く生きられるのかなって。そういう意味で終わりを意識してます」

 全局面で繰り出されるヒジ打ちをはじめ激しい打撃が持ち味の佐藤だが、その言葉からは格闘技について、ファイターとしてのキャリアについて考え抜いてきたことが分かる。

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■横浜のプレハブから世界の頂点へ

 大会に向けた選手紹介VTRでは、プレハブの建物で暮らす姿も紹介された。働いている土木関係の会社の寮だ。社長はDDTプロレスラーとして活躍している坂口征夫。佐藤が所属する「坂口道場」のトップでもある。世界チャンピオンになり、ONEという大舞台に出場しながら、佐藤は今でも週に数回、会社の仕事をしている。自身のジム「Fight Base都立大」も構えたから練習、出稽古、指導と相当に忙しいはずなのだが、仕事はやめたくないそうだ。

「ずっとお世話になってきた会社ですから。“ジム作ったんでやめます”とか“ONEに出られるようになったんでやめます”というのは嫌なんです。それに競技を終えてからの人生もありますから。会社でのキャリアも続けたい」

 数年前、坂口に取材した際に佐藤の話題になった。「あいつ、練習だけじゃなく資格の勉強も一生懸命やってますよ」という。今回のインタビューで佐藤に確認してみると、土木と給水装置の資格を取ったそうだ。

「それも競技を終えた後を考えて。自分を崖っぷちに追い込んで、すべてを捨てて格闘技にかけるっていう生き方も凄いと思うんですけど、僕は引退してからのことまで環境を整えて、精神を安定させたほうが集中できるんですよ。夢がないって言われるかもしれないですけど」

 寮に住んでいるのは「それが一番、合理的だから」だそうだ。

「起きたらすぐ仕事に行けて、戻ったらすぐ準備して練習に行ける。そしてすぐ寝て会社。無駄がないんです」

 工事現場で働きながら世界のベルトを巻き、アジアの大都市でファイターとして脚光を浴びる。そういう人生を佐藤は築き上げた。

「働きながらでもここまでは行けるよって、そういうロールモデルになれるかもしれないですよね」

 佐藤の言う“ここまで”の場所はどんどん伸びている。ONEの王座にまで伸びていく可能性だってある。「俺だって」と思う若い選手は、決して少なくないだろう。そういう意味で、佐藤の生き方には夢がある。

文/橋本宗洋

▶視聴予約/1月31日18時30分~ ONE Championship「マニラ大会」

ONE Championship マニラ大会 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
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