選手の腕が逆方向に「く」の字に曲がり、放送席が絶句するほどの衝撃的な決着だった。
1月31日フィリピンで開催されたONE Championship「ONE: FIRE & FURY」で、リト・アディワン(フィリピン)がポンシリ・ミートサティート(タイ)の腕を破壊。昨年の日本大会の仙三戦に続き、2戦連続で対戦相手の腕を破壊する「壊し屋」ぶりで観る者を震撼させた。
フィリピンの格闘集団、チーム・ラカイ所属のアディワン。格闘技好きが高じ、ボクシング、散打とキャリアを重ねMMA挑戦を機にラカイの門を叩くと、格闘ジャンキー基質からメキメキと力をつけ、ONEの登竜門「Warrior Series」から本戦へと駆け上がった。
衝撃だったのは昨年のONEデビュー戦となる日本大会の仙三戦だ。首投げから腕を極めたアディワンのしつこい攻めで仙三の右ヒジがあらぬ方向に外れてしまい試合は即ストップ。攻防の中でのアクシデントとはいえ、パンクラスの現役王者を圧倒した無名ファイターの登場に激震が走った。一方のミートサティートもタイ出身で打撃の強さに定評がある。ムエタイの名門・タイガームエタイでトレーニングを積むムエタイ+MMAという新たな潮流を感じさせる選手だ。
筋骨隆々の肉体でゆったりと構えるアディワンに対し、距離を取りステップを踏みながら蹴りを振り回すムエタイ・ベースのミートサティートという静かな序盤。しかし、腕をオーバーぎみに振り回す連打でアディワンが打ち勝つとミートサティートが崩れ落ちる。さらに倒れた相手に馬乗りになり容赦なくパウンドの雨を打ち下ろす姿に、解説陣からは暴れる猛獣をイメージしたのか「ゴリラ」の声もあがった。
その後、ケージ際で組み簡単にテイクダウンを奪ったアディワンが首固め。立ち上がってバックに食らいついたミートサティートが逆襲のヒザを臀部に向けて放つが、首に巻きついた手は離れず、今度は腕をガッチリ掴んだままサクラバロック。一度食らいつくと離れない獰猛さがアディワンの真骨頂だ。
体を入れ替えたアディワンが再び相手の腕を逆方向に極める。耐えきれなくなったミートサティートは、苦悶の表情を浮かべ何度もタップアウトの意志を示した。その瞬間がスロー再生されると、モニターには脱臼したミートサティートの腕が、90度あらぬ方向に曲がる衝撃シーンが映し出された。
これにはAbmeaTVでゲスト解説を務めたSKE48の松井珠理奈も思わず「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ」と絶句。解説の大沢ケンジも「怖い、怖い、怖い」と連呼すると、仙三に続き2人目の犠牲者を出したアディワンの危険な「極めヂカラ」に対して「(ストロー級王者の)ジョシュア・パシオよりこいつはヤバイかもしれない」と驚嘆した。