「紙やFAXではなくメールを…」「国会待機で残業が月100時間」 進まぬ霞が関公務員の“働き方改革”
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 今月1日、武漢からの帰国者を受け入れる埼玉県内の施設で業務にあたっていた内閣官房の男性職員(30代)が死亡した。現場の状況から飛び降り自殺をしたとみられているが、遺書などは見つかっていないという。

 厚生労働省を昨年9月に退官し、官僚の働き方改革について提言を続けている「千正組」組長の千正康裕氏は「不眠不休でやっている職員たちが心配だという声が厚労省担当の記者などから聞こえてくる。感染症対策ではなかったが。広い意味では同じような仕事を私もしていた。もし辞めていなければ今回の対応に入っていたかもしれない。今回の職員の件については仕事が原因なのかどうかも含めて情報がないので何とも言えないが、悔しい気持ちだ」と話す。

■「精神を病む同僚を見て、明日は我が身と思い辞めた」

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 霞が関の働き方で思い起こされるのは、昨年8月、長時間の拘束により自らの健康や家族をも犠牲にしなければならない職場の改革案を提言した、厚生労働省の若手官僚たちだ。同省の「改革若手チーム」を率いる久米隼人課長補佐は「意欲をもって入省してきたのに健康を壊したり、辞めていったり人たちがたくさんいる」と訴えていた。

 また、「官僚の働き方改革を求める国民の会」が現役官僚ら1000人に行ったアンケート調査では、

 ・国会待機で残業が日常的に月100時間を超える(女性、20代後半、国交省)

 ・子供と他愛のない会話する時間もない(女性・30代前半)

 ・後輩の女性が心を病んだり、不妊治療ができないと言って辞めていった(男性、20代後半、厚労省)、

 ・激務で精神を病む同僚を見て明日は我が身と思い辞めた(女性、20代後半、厚労省)

 ・「子供は諦める。でもあなたが倒れたら私が頑張るからね」と妻に言われた」(男性、20代後半、文科省)

 ・家にいるときは精神的にいつ爆発するかわからない爆弾(総務省職員の妻、30代前半)

 など、悲鳴にも似た声が多数寄せられている。

 千正氏は「公務員にも民間企業と同様に労働時間の上限があり、人事院という役所が監督することにはなっている。しかし今回のような緊急事態もあるし、労働基準法が適用される民間企業のように労働基準監督署が入るということもない。国家公務員の場合、例外がより広く、国会対応もその範囲だ。それでどうしても長時間労働になってしまう」と話す。

■「自転車操業。50代の局長が1日20時間くらい働いていた」

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 とりわけ激務の理由になっているのが、職員たちの声や千正氏が話す「国会待機」「国会対応」だ。国会議員からの質問通告を待ち、大臣などの答弁書を作成する業務だが、例えば19時に翌日9時に始まる委員会の質問内容が届いた場合、議員の確認などを経て21時に質問内容を整理し担当部署へ割り振り、その後、若手官僚が答弁書の作成に着手。24時に課長クラスがチェックし、27時30分に全ての答弁書が揃う。翌朝7時、国会に答弁書を届け、課長クラスが大臣にポイントなどをレクチャー。そして本番を迎えるというスケジュールになるのだ。

 千正氏は「国会の会期中は、これを毎日やる。質問の事前通告というのはどこの国の国会でも、地方議会でもやっている。しかし前日の夜にやっているのは日本の国会だけ。これがおかしいと思う。今の霞ヶ関は若い人がどんどん辞めていくので、人手が足りず自転車操業。私がいた部署でも、50代の局長が1日20時間くらい働いていた。このままではやらなければならない仕事も回らなくなる。人は増やさなければいけないが、そのためには税金がかかる。まずは無駄な仕事を徹底的に減らさないと理解も得られないと思う」として、背景に与野党の日程闘争があることを指摘、「質問通告早期化」を訴える。

 「1月に始まる国会は6月まで、約150日間あるので、この法案についてはいつ質疑をして、その2日後の委員会で採決する、といった具合に日程を決めておくことができるはずだし、それが効率的な仕事の仕方だ。質問する議員だって、急に日程が決まるので、質問案を徹夜して作っている。これは女性議員が増えない問題にも繋がってくる。しかし予め日程が決まってしまうと、野党としては“攻め手”がなくなってしまうので、なかなか応じられない。だからまずは委員会がいつ決まったのか、質問通告の日時公表、どの議員がいつ質問を出したのか、だけでも先にやっていただけたらと思う。こうした国会のルールは議員の先生にしか変えられない。各党にテーブルについて頂くしかない。私達もそういうことをお願いしているし、若い議員の中には、“変えてなければヤバい”と言ってくれる方もいる」。

とだ。

■「内容を書き写さないと行けないので、FAXはやめてメールに…」

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 問題はそれだけに留まらない。いわゆる「ペーパーレス化」が遅々として進まず、「議員に対して失礼」という考え方から、資料はメール添付ではなく、わざわざ印刷して自転車で届けなくてはならないケースもあるという。

 「一つは昭和の時代からそういうふうにやっていたからと、誰も変えようとしてこなかったこと。もう一つは国会議員との関係性の問題だ。官僚としては自分たちが作った法律案、予算案を議員の先生に説明し、理解してらわないと世の中には出せない。これは重要な取引先である大企業と下請けの企業の関係によく似ていて、自動車部品を作っている会社が、いくらいい部品を作ったとしても、“今はいらないよ”と言われてしまえば一銭にもならないということと同じだ。どうしても“国会議員の方が偉い”と思い込んでしまう。だから“メールでいいですか”ということも言えない。それでも、“メールでいいよ”という先生もいる。私たちが、FAXだと若い職員が質問表に中身を打ち込む作業をしなくてはいけないから、メールで送るようにできないかと超党派ママパパ議連に提案すると、全党一致してくれた。細かいことでも声を上げて、変えるための話し合いをしていかなければならない」(千正氏)。

 慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「国会議員や官僚は日本社会で選ばれた“超上流階級”だ。そこでこんなことを今もやっているのだから、農村はもっとひどいということだ。日本はもうダメだな。無理だわ。やっぱ日本脱出だ。早く逃げたほうがいいわ」と呆れ気味に話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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