1月29日にサイバーエージェントグループ入りを発表したプロレスリング・ノアが、翌30日に“聖地”後楽園ホール大会を開催した。
新体制の社長に就任したのは、同じサイバーエージェント傘下のDDTでも社長を務める高木三四郎。リング内のことにはタッチしないと明言している“大社長”だが、メディア環境などでの協力はできるとも。1.30後楽園大会は、DDTの映像配信サービスDDT UNIVERSEで無料生中継された。これまでノアはCS・ケーブル局で中継されていたから、本格的なネット中継は大きな武器。2月16日の後楽園大会がAbemaTVで生中継されることも決まった。
ビッグニュースの直後だけに、1.30後楽園への注目も大きく、DDT UNIVERSE中継にアクセスが殺到。一時は視聴できないユーザーが出るほど。そのためノアのSNS班が急きょ、スマートフォンでの中継を行なう時間もあった。
この日のメインはジュニアヘビー級リーグ戦の決勝。ヘビー級のトップ選手たちが脇を固める形のマッチメイクで、これも結果的にいいプレゼンテーションになったのではないか。休憩明けの第6試合は10人タッグ。昨年1年間、GHCヘビー級王者としてノアを牽引した清宮海斗と副社長にしてノアの象徴・丸藤正道が組み、逆サイドにはマイクアピールでもファンの心を掴んでいる拳王のユニット「金剛」が勢揃い。
続くセミファイナルは現GHCヘビー級王者の潮崎豪&中嶋勝彦&谷口周平が杉浦貴&藤田和之&鈴木秀樹の杉浦軍と対戦。試合は藤田が谷口をスリーパーで仕留めて終わったが、その直後に潮崎が藤田との防衛戦をアピール。3月8日の横浜文化体育館大会でタイトルマッチが行なわれることになった。
総合格闘技でも活躍してきた藤田のゴツゴツしたファイトに対し、潮崎も自分のスタイルを崩さずチョップを叩き込んでいく。藤田が張り手、潮崎は逆水平チョップを何発となく打ち合った。ここまできたらシングルしかない。そう思わせる熱い攻防だったのは間違いない。
だが、これを黙って見ていられなかったのが鈴木だ。鈴木は昨年、潮崎と30分ドローの名勝負を展開。潮崎に対する「ノアはお前だ」という言葉も話題になった。潮崎がシングルのベルトを巻いた今こそ決着戦が望まれるだけに、鈴木は潮崎の“藤田指名”を「目の前でスルーされた」と感じたそうだ。だから潮崎のタッグパートナーである中嶋との対戦を表明したのである。曰く「寂しさを中嶋勝彦で埋めますよ」。とはいえ中嶋の実力も認めるところ。異色で刺激的な対戦は2月16日の後楽園大会で実現する。
杉浦のナショナル王座には2.24名古屋で清宮が挑戦。新世代のエースとして“新しい景色”をスローガンとする清宮だが、今年50歳の杉浦は「俺はノアのいい景色も嫌な景色も全部見てきてるんだ。簡単には譲れねえんだよ」。2.16後楽園では、前哨戦として潮崎&清宮vs杉浦&藤田のタッグマッチが決まった。
2.16後楽園から2.24名古屋、そして3.8横浜へ。今回の10人タッグ、6人タッグはノア・ヘビー級の勢力図とこれからを一気に見せるものになった。加えてメインでは原田大輔がベテラン・ディック東郷を下してジュニアリーグ制覇。課題とされてきたジュニア活性化へのアピールにもなったはずだ。
ノアの今後に期待するファンもいれば、冷ややかな目で眺めている者もいる。ただ、今回の後楽園大会でノアの戦力充実ぶり、熱のある試合ぶりをしっかり受け取ったプロレスファンは多いだろう。本質は常にリングの上にある。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア