以前、競輪の失格基準について書きましたが、今回はペナルティについてお話しましょう。
※過去記事(覚えておけば確定前の“ぬか喜び”を防げる! 競輪の「失格事項」)
競輪選手は競走中に違反行為をすると「違反点数」が科せられます。「走行注意(走注)」は2点、「重大走行注意(重注)」は10点、「失格」は30点です。
違反点数は4カ月単位で集計され(上期1月~4月、中期5月~8月、下期9月~12月)、累積90点以上に達した場合、日本サイクルスポーツセンター(ないし隣接する日本競輪選手養成所)にて4泊5日で行われる「特別指導訓練」を受けなければなりません。静岡県伊豆市にあるこの施設までの交通費、受講費などがすべて自腹の強制参加です。競走参加中と同様に携帯電話や電子機器類の持ち込み不可で飲酒厳禁、基本的に外出禁止で定められたプログラムに従った訓練を行うとのことです。自転車を使った訓練も行われるので心身共に鍛え直すということなのでしょう。
ちなみにこの施設は自転車関係者の間で「修善寺」と呼ばれています。それを聞いて「あぁ、噂で聞く“お寺行き”とはここのことか」と思った競輪ファンの方、それはまた別の場所なので後述します。
上述とは別の集計期間(直近4カ月で毎月スライド)にて、累積120点以上に達した場合、「あっせんをしない処置」というのがなされます。
・120点以上、149点未満=1カ月のあっせん停止
・150点以上、179点未満=2カ月のあっせん停止
・180点以上=3カ月のあっせん停止
その間はレースに出られないので収入がなくなるということ考えれば、厳しい処置でしょう。ちなみに1回の失格でもそれが悪質であると判断されれば「あっせんをしない処置委員会」からの制裁として1カ月のあっせん停止になったり、かなり悪質の場合は「あっせん規制委員会」から1年以内のあっせん停止処分を下されることがあります。最大の1年間あっせん停止を受けたら、他の仕事をしなくてはならない選手もいるでしょう。それほど失格に関しては厳しいのです。
以上2つの基準におけるペナルティ以外に、もうひとつ別のペナルティが存在してます。
それが「お寺行き」です。
例えば先頭員から10車身程度以上離れる違反行為や先頭員に対する早期追い抜き、危険行為等の違反(2019年6月に変更)にて重注を1カ月以内に3回喰らった場合に「特別指導訓練」への強制参加が言い渡されるのですが、こちらは「修善寺」ではなく「黄檗山(おうばくざん)萬福寺」へ向かうことになります。
京都府宇治市にある黄檗宗大本山の寺院・萬福寺までの交通費、受講費などがすべて自腹の強制参加。競走参加中と同様に携帯電話や電子機器類の持ち込み不可で飲酒厳禁、基本的に外出禁止の5泊6日の訓練になるのですが、その場所は禅寺。敷地内にある青少年文化研修道場にて連日、座禅を組み、周辺の掃除を行い、食事は精進料理という、厳しい禅の修行。自転車に乗った訓練は一切ない上に、肉類のない精進料理では動物性タンパク質は採れず、身体機能が衰えること必至な恐怖の「お寺行き」なのです。
ちなみに日本競輪選手養成所を卒業した後、5月中旬頃に新人宿泊研修をやるのも萬福寺なのですが、そちらは3泊4日。それよりも2日も多く修行をさせられるということで「お寺行き」を恐れる選手が多いのは無理もないでしょう。
違反点数の累積状況は「あっせんをしない処置に係る違反点数累積状況」という形で、月に2回ほど発表されます。また『KEIRIN.JP』の「月刊競輪WEB」の最下段にある「コンピュータールーム」というところで直近4カ月の成績が見られるのですが、そこでは失格や重注の数を確認できます。
「失格2回じゃ、しばらくは大人しくしてるな」とか「重注が多いから負け戦で無理しないだろう」などといった予想の参考になるかもしれませんよ。