昨年J1ライセンスを取得し、クラブの飛躍に大きな期待のかかる、FC町田ゼルビア。2020シーズンの新体制について、唐井直GMは「J1昇格に向け、実力者をそろえて組閣した」と話します。
新監督のランコ ポポヴィッチ氏は、2011年にゼルビアの監督務め、J1や海外クラブの監督を歴任。また、コーチの米山篤志氏は元日本代表選手で、指導者としてもJ1の舞台で複数タイトルを経験しており、盤石の体制で挑む今シーズン。
Jリーグ開幕にあわせ、豊富な経験を持つポポヴィッチ新監督に、FC町田ゼルビアが成長するために必要なことをインタビュー。その答えは、とてもシンプルでした。
――J1リーグや欧州・アジアのクラブからも打診を受けながらも、ゼルビアで再び指揮を執る決断をした理由は?
理由を挙げればキリがないですが「サッカーの本質を大切にする姿勢」、「3年かけてJ1に上がるチームをつくる」といったクラブの理念やビジョンに共感したからです。離れている間もゼルビアの状況はずっと追っていたんですよ。また我が家に帰ってきたと思うとともに、新たなスタートが始まると感じています。
ただ、スポーツの世界には結果に対する保証はありません。3年で結果を出すことは1つの目標ではあるものの、未来は誰にもわからないのです。
サッカースタイルは、2011年にJFL(日本フットボールリーグ)からJ2に昇格した時の様に、今回も攻守両面でゲームを支配する、オフェンシブなサッカーを展開したいと思っています。選手、チーム、サポーター、共に成長しながら、皆で大きな成功をつかみ取りたいです。
「全力」をスタンダードに。強くなるために欠かせない必須条件
今のゼルビアに必要なこと、それは「土台をつくる」ことです。2019年は18位でシーズンを終えました。クラブ史上最高成績をおさめた前シーズンの4位から大幅に順位を落としています。
しっかりと地に足をつけ、確実に強化し、チームのレベル安定させて、土台をつくることが必要です。
そのためには技術力の向上、戦術の理解度を深める、メンタルを鍛えるなど様々なトレーニングがありますが、1番大切なことは1日1日「全力」を出し切ることです。毎日のトレーニングを全力でやりきって、その全力を当たり前にする。
言葉にするとシンプルですよね。こういうインタビューでは、見出しになりそうなキャッチ―なフレーズの方が、人々の興味をひけるのかもしれないですが(笑)。でもこれは上を目指すにあたり、絶対に欠かせない要素です。
全力が当たり前になれば、試合でも普段通りの力を発揮し、勝利を手にすることができます。そのためには日々の圧倒的な努力が必要となるのです。「全力」で取り組む姿勢を、町田のスタンダードにしたいと思っています。
――選手の「全力」を引き出すための方法は?
“この方法でやらせよう”という発想ではなく、自然にやる気が出ることが大切です。選手が、朝起きた時に自ら練習に行きたいと思う、どんなに厳しい練習でも終わった後には充実感を得られる、そんな雰囲気・環境づくりをしていきます。
そのために、何より、私が監督業を楽しんでいますし、選手やスタッフのことを家族のように思っています。それは私が監督を務めるにあたり、長年大切にしてきたポリシー。
実際、家族と過ごす時間よりも彼らと過ごす時間の方が長いです。単純に仕事だけの関係ではないんですよ。彼らの喜び、つかむ勝利、幸せを自分のことのようにうれしく感じます。
サポーターに約束できる唯一のこと、それは「全力」でたかかう選手の姿
――今シーズン、ゼルビアの見どころは?
今回のチーム編成で重要視したことはハングリー精神。成功に飢え、勝利に飢え、サッカーをやりたくて仕方のない選手やスタッフを揃えています。
プロを志したならサッカーを嫌いなんてことはないでしょうし、大金を稼ぐことを1番の目的にサッカー選手になった人は少ないと思います。今大きな報酬を得ている選手は、一生懸命やった結果として、お金がついてきた人がほとんど。
世界的に有名なサッカー選手、リオネル・メッシ(FCバルセロナ)や、クリスティアーノ・ロナウド(ユベントスFC)があんなにも人を魅了するプレイを続けられるのは、子どもの頃のようにサッカーを楽しむ気持ち、そして誰にも負けないという気持ちが今も枯れていないという証拠です。
私が、サポーターの皆さんに、たった1つ確実に約束できることは、全力で試合に臨む選手の姿をお見せできるということです。その姿勢が何よりも人の心を動かすのではないでしょうか。その感動の輪を大きく広げて、スタジアムをサポーターで満員にしたいと思っています。