DDTの新たなタイトル、ユニバーサル王座の初代チャンピオン決定戦が2月23日の後楽園ホール大会で行なわれ、クリス・ブルックスが竹下幸之介を下してベルトを手にした。日本を主戦場とするためイギリスから移り住んだレスラーの戴冠は、世界戦略を見据えたタイトルにふさわしい。
試合を前に、竹下は「竹下vsクリスをユニバーサル王座戦のスタンダードにしたい。ベルトを自分の色に染めたい」と語っていた。また以前、クリスと「今の時代はSNSで何回も見られるインパクトの強い場面を作るのも大事」だという話もしたそうだ。
その言葉通り、初代王座決定戦は2人ならではの闘い、今後のタイトルマッチのハードルを上げる闘いになった。
ゴング前にクリスが奇襲するも竹下がパワーボムで迎撃。そこから場外戦になだれこみ、竹下の蹴りで客席の階段を転がり落ちていくクリス。逆にクリスは竹下の腕を鉄柵で挟み、ひな壇の間に竹下を固定してのフットスタンプという荒業も披露。
リング内では竹下の得意技・ファブルをクリスが空中でキャッチしてカッター。竹下はクリスを持ち上げるとコウモリ吊り落としでコーナーに脳天から叩きつける。
奇想天外というのか常識破りというのか「なんだこれ!」という場面が続く。“いい試合にしよう”というだけでなく“意地でも普通のことはやりたくない”“世界中のプロレスファンを驚かせてやる”という2人の強い意志を感じる攻防だった。名シーンの連続は、おそらく今後何度となくインターネットで再生されることだろう。
フィニッシュは意表を突くデス・バイ・ロールアップ。直訳すると「丸め込みによる死」である。その鮮やかさにも独自の余韻があった。
「10カ月前、初めて日本に来た時の自分のような外国人選手にチャンスを作る。そんなベルトにしたいね」
クリスはチャンピオンとしての抱負をそう語った。一方、竹下は「デビュー戦で負けた時くらい悔しい」。相手をライバルと認めているからこそ“今回はたまたま負けただけ”という受け止め方をしていないのだろう。
試合中、竹下に対するクリスのハードな攻撃に、観客から悲鳴が上がることが何度もあった。それだけ竹下を攻め込むことができる選手は、現在のDDTにはそういない。クリスは佐々木大輔との初防衛戦が決定。竹下はチャンピオンに指名されて田中将斗のKO-D無差別級王座挑戦が決まった。しかしまたいずれ、クリスと竹下が、知力と体力を総動員しての“名勝負数え歌”を展開する時が来るだろう。
文/橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング