アフリカ、南米でも感染者が確認され、ついに世界5大陸で渡ったことが明らかになった新型コロナウイルス。アメリカ疾病対策センター(CDC)のシュチャット首席副所長は「現在の世界の状況を見ると、このウイルスがパンデミックを引き起こす可能性が高い」と、世界的な大流行が近いことを示唆している。
日本でも、政府が今後2週間の全国的なイベントの自粛を要請したことを受け、スポーツイベントなどの延期や規模の縮小の発表が相次いでいる。そこで注目されるのが、7月に迫った東京オリンピックの開催だ。加国は206カ国・地域となり、選手数は1万1090人(パラリンピックも入れると約1万5千人)、観客数は780万人(パラリンピックも入れると約1千万人)の出入国が見込まれることから、開催が感染拡大に拍車をかけることも懸念される。
これについて、国際オリンピック委員会(IOC)の重鎮・ディック・パウンド氏は、現段階では東京で開催されるとしながらも「開催の可否の判断は引き伸ばせて5月末まで」とコメント。しかしIOCのバッハ会長は「専門家の助言を得ながら、7月に東京でオリンピックが開かれることを楽しみにしている」と、東京での開催に前向きな姿勢を見せ、開催地・東京の小池都知事も「IOCの実質東京大会を担当している方々からしっかりやれということを聞いている」、大会組織委の武藤事務総長も、聖火リレーなど、一連のイベントについて中止は考えていないとした上で、「どうやったら感染拡大を防ぐ形で実施できるのかということを考えていきたいと思う」と話している。
ただ、リオで開催された前回大会(2006年)では、蚊がウイルスを媒介する感染症で、妊婦が感染すると小頭症の赤ちゃんが生まれる原因となる(WHO見解)「ジカ熱」の流行を懸念、ゴルフやテニスなどの選手が一部参加を辞退し、日本の松山英樹選手(ゴルフ)も参加を辞退した。
元レスリング選手でシドニー五輪(2000年)銀メダリストの永田克彦氏は「レスリングは顔同士が近づくし、呼吸どころか体液までも接触してしまうコンタクトスポーツ。これからオリンピックをかけて予選が始まる選手にとってみたらナーバスになっているだろう。僕自身、本番前にはインフルエンザに対して非常にナーバスになったし、体調に対してかなり神経を尖らせていた。ただ、無観客開催という話もあるが、応援の中でやりたいというのが選手の本音だろう」と話す。
25日に親戚5人が感染した武漢市民に取材したジャーナリストの堀潤氏は「5人のうち1人は亡くなってしまったが、その方は骨がんを患っていたといい、2人は自力で治り、1人は妊婦さんだったが回復したということだ。このような情報が段々出てくるようになってからは、武漢の市民も落ち着いてきているという。やはり怖いのは、医療資源を食い尽くしまうこと。日本でも全員に検査を施すべきだとか、とにかく医療機関に行くべきだという声もあるが、果たしてそうした意見が本当に正しいのかどうか、冷静に考えて欲しいとも言われた。先行した武漢からきちんと学びとっていくということが、今の私たちに求められている」とコメント、「オリンピックは何が何でも今年やらないといけないのか」と問題提起した。
こうした点について、ナビタスクリニック理事長の久住英二氏は「武漢の場合、こういう病気があると分かる前に多くの方が感染、医療供給体制をオーバーしてしまったため、死亡率が上がってしまった。日本でも患者さんが急に増えて入院する場所がなくなってしまうと死亡率が上がるので、それを抑えるという意味での“自粛のお願い”だと思う。しかしイベントの開催が無くなっても、東京の電車を見れば、今も人がいっぱい乗っている。集会だけ止めてもほとんど意味がないので、なかなか有効策が打てていないというところだ。また、軽症の方でも入院させることになっているため、都内の感染症指定病院もほぼ満床だ。そこのベッドを空けて、重症の方を受け入れられるようにしなければいけない。ただ、この1~2週間で、クルーズ船で感染していた方、もしくは発病された方の中で回復する方が出てくるなどして、日本の中での重症化率のデータなどが出揃ってくると思う。そうなると、武漢ほど大変なことではなく、インフルエンザと比べても特別恐ろしい病気でないということが分かってきて、“感染は広がるけれど、そんなに心配ないよね”とパニックが世界で沈静化していくのではないか」との見方を示す。
「ウイルスの増殖を抑える薬の臨床試験が中国でも日本でも始まっているし、アメリカではワクチン製造会社が第一層の臨床試験のためのワクチンをアメリカ国立衛生研究所(NIH)に提供し始めたと言っているので、治療や予防対策はどんどん進んできている。一方で、新型インフルエンザが流行した時のデータでは、タミフルの使用と死亡率にはほとんど関係がなかった。つまり、治療薬がないからと恐れおののくのではなく、感染をなるべく拡げないように、手洗いをしっかりするなどの対策を丁寧に根気強くやっていくということをお願いしたい」。
その上で今後の見通しについては「SARSが収束するまでが8カ月くらいかかったことを考えると、今回、日本では10月くらいには収まるだろうと考えられている。希望的な観測としては、夏になってくると少しは収まるんじゃないかというものもある。いずれにしろ8割の方は軽症で済むし、ほとんどの方にとっては“ちょっとかかったよ。大丈夫だよ”という感じだ。感染の実態、あるいはどれくらい死亡率が高いのかということ、発病した方が何日くらいで、どう治ったかというデータをきっちり出して、他の国々の医療者や政策決定者が参考にできるように論文を出していくことをやらなければならない。そうしなければ、日本は渡航してはいけない国だと言われ、みなさんが来なくなってしまう」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より
▶映像:世界的大流行が近い? オリンピックが感染の第2の山になる可能性は?
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