東京高検の黒川検事長の定年延長をめぐって国会が紛糾している。森雅子法相は「決裁は口頭も文書もあり、どちらも正式な決裁だと」として、問題はないとの認識を示しているが、野党は口頭での決裁はあり得ず、正当化するための後付けの説明だとして、森法相や法務省の対応を批判している。
この問題について、「ボトムアップの決裁しか念頭にないから混乱する。決裁にはトップダウン型もある。閣議決定で解釈を変更した、でよい。あとは選挙で審判を受ける、と。選挙以外でチェックをするなら憲法裁判所が必要。」とツイートしたのが橋下徹氏だ。27日のAbemaTV『NewsBAR橋下』に出演した作家の乙武洋匡氏が、この投稿について、次のように質した。
「橋下さんにお聞きしたい。この件についての橋下さんの姿勢は甘いのではないか。司法の人事にここまで政治が口出しし、手懐けてしまったら、民主主義の基本である三権分立が成り立たないのではないか。秋元司議員や河井案里議員など、自民党の議員たちは本当に罪を犯していたのかという中、なぜこんなことをしているんだろうと思った。法治国家の前提を大きく揺るがす話になると思うし、弁護士資格を持っていて、正義にこだわってきた橋下さんには先陣を切って怒ってほしかったのに、肩透かしを食らった」。
すると橋下氏は「黒川検事長を検事総長にするために定年延長するのだろうといわれていて、多くの人は乙武さんと同じように感じていると思う。しかし検事総長の人事権者は誰か。内閣だ。国民審査はあるものの、最高裁判所の裁判官の人事権者も内閣だ。朝日新聞も立憲民主党の枝野代表も、その人事に政治が介入するのはおかしいというが、総理大臣が中心となって検事総長や最高裁の裁判官を選ぶということは、憲法にも法律にも書いてあることだ。しかしこれまでは実質的に現職の検事総長が次の検事総長を、最高裁の裁判官も事務総局が指名していた。そうすると民主国家なのに、国民ではなく組織の上層部の方を向いて仕事をするようになる。官僚が好き勝手できるやんと。ある意味で、安倍さんや菅さんはそこに挑戦しているということだと思う。すでに安倍内閣は最高裁の裁判官を決めたことで、政治介入だと批判を食らった。しかし、その決め方が悪いと思うのであれば、国民が選挙で倒せばいい」と反論。
乙武氏が「しかし検察官の定年延長は認められないことになっていて、これまでもその解釈を踏襲してきたと人事院の松尾局長が答弁している。それを国家公務員法を口頭で適用しましたというのはおかしくないか。政治家をやられていた橋下さんがそのような考えになるのはわかるが、何でもやっていいというのでは怖い。少なくとも権力を濫用していると思われないように襟を正して振る舞うことが必要ではないか」と重ねて疑問を呈すると、「法律の解釈についても最終決定権を持っているのは内閣だ。法制局も、あくまで意見を言うだけ。これも内閣の法解釈がおかしいと言うのであれば、国民が選挙でひっくり返せばいい。やはり僕は官僚が最終決定権者になるのが怖いそもそも公務員試験に受かった官僚が全ての物事を決めるのなら、誰が正すのか。まさに中国共産党みたいな体制になってしまう。だから内閣が決めて、責任を負うのが原則になっている。もちろん今回の手続きは杜撰だったと思うし、解釈について法律家の間でも意見が割れている」とコメント。(AbemaTV/『NewsBAR橋下』より)