10年連続で減少傾向にあり、昨年は初めて2万人を下回った日本の自殺者数。しかし、SNS上には“死にたい”という呟きが溢れ、先月には女子高校生が相鉄線瀬谷駅で通学電車に飛込み自殺する様子をライブ配信するという、痛ましい出来事もあった。そして、1年のうち、最も自殺が多いのが3月だ。そこで2日のAbemaTV『AbemaPrime』では、ある姉妹を通じて、残された家族、「自殺遺族」に話を聞いた。
「離婚協議中に別居をしていた旦那が首を吊って亡くなり、住んでいた賃貸住宅が事故物件扱いにされてしまった」。数年前に夫が自ら命を絶ち、自殺遺族となった自営業の宮本ぺるみさん。大家から請求された損害賠償額は1000万円に上った。内訳は「特殊清掃・現状復帰:80万、大家への慰謝料:240万、家賃の保証(2年分・翌2年分の半額):680万」だった。「特殊清掃費は管理会社が紹介した業者ではなく、知人を通して見つけた業者に依頼することで20万になった。そのように交渉していく形で全体的に減額し、最終的には全部で250万くらいになった」。
夫の死を悲しむ間もなく、突然背負わされた債務の処理に、心は限界に達した。「毎日寝られない状態だった。加害者みたいな言われ方もされた。大家さんからしたら自分の資産を傷つけた人、旦那の遺族からしたら大事な息子を酷い目に遭わせた嫁、管理会社からしたら困った契約者。きつかった」。事なきを得たが、自殺を図ってしまったこともあるという。
こうした状況に直面する遺族は、ぺるみさんだけではない。例えば社員が飛び降り自殺した企業が、ビル所有会社が約5000万円の損害賠償を求めた訴訟があり、東京地裁は「テナント側は借りた室内や共用部分で従業員を自殺させないよう配慮する注意義務を負う」とし1000万円の支払いを命じている。遠藤温子弁護士は「会社側だけが損害を負うわけではない。ここで遺族に負担がかかる可能性も生じる」と話す。
ぺるみさんは、こうした「自殺遺族」が直面する現実について、姉であるぐみさんと共に漫画化、『自殺遺族になっちゃった!!』として出版した。「(当時のぺるみさんは)損害賠償請求の対応をしている間はまだ元気というか、力があった。一段落してからは自殺未遂に走ったり、毎日のように“死にたい”というLINEやメールを送ってきたりした。それを見ていると、こちらもどんどん気持ちがおかしくなっていく。連鎖していく感じはした」(ぐみさん)。
ただ、昨秋WHOが策定、今年1月に日本語版が示された映画やテレビ番組の製作者に向けた指針では、「自殺の行為や手段の描写を避ける」と強調されてもいる。
ぺるみさんは「今でも命日が近くなると思い出して、しばらく心が暗くなる。冷静な自分と冷静でいられない自分とがバランスのとれない状態になる。しかし、このような遺族側の経験は世の中にあまり出てない。そこでとにかく起こった出来事を記録して、最終的に漫画という形でまとめた。それが乗り越えられた理由だと思う」と明かし、「賛否があるのは当然分かっていたが、それでもギリギリを攻めないと伝わるものも伝わらないと感じていた。死にたいと頻繁に思っている人に、この漫画を読んでほしい。周りの人も、何かしらのかたちで勧めて、結果的に死なない方がいいと少しでも思ってくれたら」と話していた。
▶映像:“夫が首つり“残された自殺遺族の苦闘と葛藤 損害賠償1000万円の請求
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