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(スタジオマッチ的な状況で“地力”を発揮した白川)

 新型コロナウィルスの感染拡大による政府の“イベント自粛要請”を受け、DDTは2月末から3月にかけ、グループ全体の興行を中止とした。DDTだけでなくガンバレ☆プロレス東京女子プロレスの興行もなくなり、そこで行なわれるはずだったタイトルマッチも後日にスライド。会社の収益だけでなく、選手のモチベーションなど様々な面でマイナスが生じかねない状況だ。

 ただ、転んでもタダでは起きないのがDDTである。興行中止と同時に、道場での無観客試合実施&生中継を決定したのだ。映像配信サービス・DDT Universeに力を入れてきたからこその「無観客試合配信」だろう。

 3月1日には、東京女子プロレスの道場マッチも配信された。この日は本来なら両国KFCホールで2大タイトルマッチが行なわれるはずだったが、それが延期になった代わりに大胆なマッチメイクが打ち出された。出場可能な所属選手およびレギュラー参戦中のフリー選手全員がエントリーしての1DAYトーナメントだ。登場したのは21選手、つまり20試合を1大会で行なうことになる。通常のプロレスの興行は8試合ほどだから、まさに異例である。

 さすがに全試合通常ルールとはいかず、決勝以外は5分一本勝負、また準々決勝までは2カウントフォールマッチ。前半戦は引き分けの場合ジャンケンで決着という特別ルールでの闘いに。これにより時間が短縮できたものの、選手としては「5分以内に勝つ」、「2カウントでも負けになる」という変化に対応しなければならない。

 まして大会そのものが無観客。選手に話を聞くと、声援や拍手、手拍子がないことで調子が狂うという要素も大きかったようだ。伊藤麻希は、得意技である「世界一可愛いナックル」を放つ際のコール&レスポンス「世界一可愛いのは?」、「伊藤ちゃん!」が聞こえないため、初戦で一度「心が折れた」という。

 そんな中で優勝を収めたのは、団体トップの一角である中島翔子。「声援がなくて、自分で気持ちをアゲていかなきゃいけない難しさはありました」と言う中島だが「試合中は相手を粉々にすることだけ考えてました」とも。マイペースでの闘いが勝因だったか。

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(優勝の中島、準優勝のユキにはジンギスカンお食事券が贈呈)

 準優勝は次世代の主力候補である愛野ユキ。2カウントルールだったが小技に走らず、サイドスープレックス、ヴィーナスDDTと得意技で勝利を重ねて決勝進出を果たした。「正直、やってる間はワケが分からなくて必死でした」と試合後のユキ。こちらは余裕のなさが必死さにつながり、それがプラスになったということだろう。

 上福ゆきが愛犬ザックをセコンドに連れてきたりと、道場マッチならではの自由さもあったこの大会。場内実況に「なんか圧が凄い」と言わしめたのは“闘魂Hカップグラドル”白川未奈だった。

 観客の声がないことで調子が狂ってしまう選手もいる中、白川は得意技ロメロスペシャルを繰り出す際のかけ声「チャンス~!」をひと際大声で発することでクリア。準決勝で敗れたものの独自のワールドを作ることに成功した。実況陣のコメントに画面の外から割って入る場面もあり、このあたりの押し出しの強さ、無観客でも下がらないテンションは、深夜番組で鍛えたグラビア魂といったところか。

 無観客配信試合というイレギュラーな状況も、いざやってみれば「これはこれで面白い」という結果になったのだった。通常興行の開催が可能になってからも、若手大会配信など、これまでにない可能性も広がっていくのではないか。

文/橋本宗洋

写真/DDTプロレスリング

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