新型コロナウイルス対策はアメリカ大統領選の争点にも? 中東・ヨーロッパで拡大続くワケは…
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 アメリカ大統領選の民主党候補選びの天王山「スーパーチューズデー」は、バーニー・サンダース氏優勢の前評判を覆し、バイデン前副大統領が14州のうち大票田のテキサス州など9州で勝利を確実にした。

 トランプ大統領は3日、「バーニー(サンダース)に何があったか知らないが、民主党は奴を勝たせたくないようだ」と語り、余裕しゃくしゃくのようだが、逆風となりかねないのが、政権の新型コロナウイルス対策だ。4日夜現在、アメリカの感染者数は115人、死亡者9人となっており、トランプ政権は「中国・イランからの外国人渡航者の入国を制限」「医療用品確保のための緊急対策予算25億ドル(約27000億円)の承認をアメリカ議会に要請」「複数の製薬会社にワクチン開発の促進を要請」といった対応を取ってきた。

 しかし民主党の候補者たちは対応に甘さがあると指摘、バイデン氏はCBSニュースの討論会で「(オバマ政権時)私はエボラ出血熱が流行した時の対策チームの一員だった。我々はそれで何百万ものアメリカ国民の命を救った」と主張。FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長も3日、「コロナウイルスの蔓延は新たな課題とリスクをもたらした」と述べ、中央銀行FRBが緊急利下げを決定したものの、ニューヨーク市場のダウ平均株価は一時800ドル近く急落した

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 4日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した東京大学大学院特任研究員の坂元晴香医師は「他国と同様、初期段階でやるべきことやっていると思う。元々トランプ政権はヘルスセキュリティと呼ばれる健康危機の分野に力を入れていて、予算も毎年しっかり付けている。一方、感染症を水際で止めることも大事だが、感染した人をどう治していくか、という医療制度そのものも大事になってくる。この問題は大統領選挙でもいつも争点になっていて、トランプ大統領がしっかりとやってきたかどうか、批判の目が向けられる可能性はあると思う」と話す。

 他方、国際社会からは日本に厳しい目が向けられている。4日夜現在で、イランは感染者数2922人・死者92人、韓国は感染者数5621人・死者32人、イタリアは感染者数2502人・死者79人、日本は感染者数1005人・死者12人となっていおり、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は2日、「韓国、イタリア、イラン、そして日本における流行は最も大きな懸念材料だ」と指摘、インドが日本人に発行したビザを無効にするなど、渡航者の入国に制限を設ける動きも始まっている。トランプ大統領も3日、「イタリア、韓国、日本の状況を注意深く見守っている。適切なタイミングで適切な措置を取ることになるだろう」として、中国とイランに続き、日本に対しても渡航規制を検討していることを明らかにした。

 イラン在住の経験もある坂元氏は「私が住んでいたのはアフマディネジャド大統領から現職のロウハニ大統領に代わる時だったので、ヨーロッパの国々が経済制裁の解除に動き出し、人々の雰囲気も明るくなってきた感じがあった。ただし経済制裁が続いたことで医療を含めたインフラは今も疲弊しているのは事実だと思う。医薬品は制裁対象外ではあるが、現場は大変な思いをしているのではないか。また、テヘランは人口過密で、バザールやモスクの中には非常に過密な空間があるので、そうした所が起点になった可能性はある。モスクでは口につけた指を壁に付けることを繰り返すので、非常に感染のリスクは高いと思う。感染症の管理という点で考えれば止めるべきことだと思うが、宗教は大切なものでもあるので、プライオリティにどこに持ってきて対策をするのかは、非常に難しい判断を迫られていると思う。それでも中東の中では比較的医療が整っている国ではあるので、症状のある人をしっかり病院につないで検査もそれなりにできていると思う」と説明。

 その上で「国際的に感染症が広がったときにはWHOがリーダーシップを取ることになっていて、イランも会議には参加している。中国に次いで専門家チームを受け入れているので、国際協調の中で自国の状況を共有する動きには乗っていると思う。ただ、WHOも懸念を示しているのは、医療制度が弱い国に広まった時に死者が増える可能性があるということだ。アフリカでは流行の拡大はないが、イランの周辺国を見てみると、イラク、アフガニスタン、シリアと医療制度が疲弊している国が多いので、もしこれらの国々で流行が起きてしまった時の影響は非常に大きいと思う。確実に封じ込めようと思えば国境を閉鎖し、飛行機を止めるといった措置が考えられるが、ただでさえ経済が苦しい中、さらに影響の出る対策に踏み切れるかと言われれば難しい。空港や国境沿いで検疫をして、熱や咳の症状がある人を見つけることが、当面は現実的だと思う」との見方を示した。

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 ヨーロッパに目を向けると、イタリアでは北部を中心に感染が拡大しており、11の自治体については街を封鎖している状況だ。

 「イタリアの感染者数が突出している理由については、まだはっきりとしていない。ただEU全般に言えるのは、人の往来が非常に簡単で、多いということだ。感染症対策には感染の封じ込めと人々の日常生活を維持することのバランスがあって、イタリア国内でこれだけ流行してしまった以上は新規の感染を防ぐよりも重症化させない、命を落とさない、という方にシフトしていくことが考えられる。そうなると、国境対策に多くのリソースを割くよりも、重症化した人を診ることに優先的に資源を割り当てた方が得策だという考え方もありうる。日本や韓国も国外にできるだけ出さないこと、国内に入れないことも大事だが、やはり新規発症をゼロにすること現実的ではないフェーズに入ってきているのなら、重症化予防にシフトしていった方がいいと思う」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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新型コロナでトランプ批判も...イタリアとイランなぜ感染拡大? 
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