感染拡大が続く新型コロナウイルス。多くの場合、症状が出ない、あるいは症状が出ても軽いものだといわれている一方、現状ではあくまでも対症療法で、投薬などによって痛みや発熱、咳などの症状を和らげるといったものとなっており、有効な原因療法やワクチンが開発されていないことに不安を覚える人も少なくないようだ。
5日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した薬剤師で医療ジャーナリストの吉澤恵理氏は「軽症者に関しては、熱なら熱、咳なら咳といったように、それぞれの症状を抑えるような薬を使う。ただ、普段の風邪の治療と同じように、家でゆっくり休養を取れば回復するというように専門家の方も言っている。重症者で呼吸不全が起きた場合などは呼吸の確保をし、様々な薬を試すということになる。感染症学会の石田直先生によると、本当に命の危険がある時は治療薬を選択するという。例えば過去にSARSに効いたという実績がある抗HIV薬カレトラや、新型インフルエンザのために開発されたアビガンなどを使う予定になると思うが、それでもアビガンは国内での使用実績がなく、カレトラも数例で使った程度だ。重症化しやすい人の中には合併症を持っている方や高齢者の方が多く、副作用が強いカトレラはリスクも伴う。喘息の吸入薬で改善したという例が3例ほど報告されているが、その中の1例はカレトラの副作用がひどかったので吸入薬に切り替えたところ、改善したという」と話す。
東京大学大学院特任研究員の坂元晴香氏は「重症例に限っては、そうした薬を使わなければ仕方がないという状況も当然ありうる。ただ、実際に効いたのかどうかは、1、2例だけで判断できるようなものではない」と話す。「理論上は良いだろうと開発に乗り出しても、実用化までいく薬はごく限られている。各国で研究が組まれているところなので、日本も共同研究に参加するという形でこれから研究し、治療効果を見ていくという段階。希望を持ちながら報告を待ちたいところだ」。
実際、新薬開発は基礎研究に2~3年、非臨床試験に3~5年、臨床試験に3~7年、承認申請・薬事承認に1~2年かかり、開発から販売まで9~17年かかるのが一般的だという。
吉澤氏は「感染症専門の先生に聞くと、SARSのウイルスと新型コロナウイルスはとても似ているので、その時の研究が多少は活きているという。5日には武田薬品が年内中に治療薬の開発をというような発表をしているので、かなり進んではいると思う。従来ない薬だが、社会に必要な薬の場合は、審査が早くなる先駆け審査指定制度というものがある。去年話題になったゾフルーザというインフルエンザ薬もその制度によって、10年ほどかかるものが5年でできた。今回も研究が追い付けば、特例的にできる可能性はある」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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