英国の人気選手が日本に移住。クリス・ブルックス「大きな団体より、DDTで自由にやりたい」

 DDTが新設したタイトル・DDT UNIVERSAL王座の初代チャンピオンになったのはイギリスのクリス・ブルックスだった。

 昨年、待望の初参戦を果たすとKO-D無差別級タイトルマッチで竹下幸之介と激闘を展開。リーグ戦「D王グランプリ」ではブロック1位タイという結果を残した。破天荒な闘いぶりはまさにDDT向きだ。

 ファンから愛されるだけでなく、クリスも日本を愛している。今年に入って日本に移住。そこで掴んだのがUNIVERSAL王座だった。王座決定戦で倒した相手は竹下である。3月20日の後楽園ホール大会では、DDTトップの一角である佐々木大輔の挑戦を受ける。

 クリスは1991年、イギリス・ティプトン生まれ。「車で5分か10分も走ると横切ってしまう小さな町。ティプトンで生まれたら一生そこで過ごすっていうイメージがある場所」だったが、少年時代に「親戚のクールなおじさんが買ってくれた」のが初期レッスルマニアのVHSだった。

 そこからプロレスファン街道まっしぐら。インディーの世界を知ってより深くハマった。友人たちとバックヤードで試合し、そのメンバーのツテで小さな大会で一応のプロデビューを果たす。16歳の頃だ。

「人数が足りないから“じゃあクリスに出てもらうか”って。ウルティモ・ドラゴンのマスクをかぶって、入場曲もその場にあったプロレスのCDから。カワダ(川田利明)の曲だったね。ウルティモのマスクをしてカワダの曲で入ってくるガリガリのガキ(笑)。それが僕のデビューだった」

 彼がキャリアを積んでいく時期に、イギリスのマット界は盛り上がりを増していった。近い世代にはウィル・オスプレイとザック・セイバー・ジュニアがいた。有力プロモーションであるファイトクラブ・プロは、日本大会も開催している。

 日本は、クリス自身にとっても夢の場所だった。DDT初参戦時には、毎日のようにどこかの会場で試合を観戦するクリスの姿を見かけたものだ。リングの上でも大きな刺激を受けた。DDTのリングは、何よりも自由だった。

「何しろプールで試合するんだからね。そうかと思えば象と一緒に路上プロレス(市原ぞうの国大会)。これは他ではできない」

 いうまでもなく、世界最大のプロレス団体はWWEである。そこには世界各国のトップ選手が集まってくる。だが、クリスの選択肢にアメリカはなかった。

「1年半くらい前かな、NXT UK(WWE系列のイベント)からオファーがきたんだよ。だけど僕は日本で闘いたかった。その選択は間違いじゃなかったと実感してるよ」

 彼が嫌うのは、好きで始めたプロレスが“単なる仕事”になってしまうことだ。金のために我慢したくないし、そのことでプロレスを好きでいられなくなるなんてもってのほか。

「日本でも小さな団体から大きな団体に行って、そこからアメリカへっていう道もある。でも僕は契約書でガチガチに縛られるプロレス人生より、DDTで自由にやりたい」

 実際、クリスのプロレスは自由そのものだ。プールプロレスも路上プロレスもお手のもの。3月11日のさいたまスーパーアリーナ路上プロレスでは、大仁田厚と組んで電流爆破マッチにも参戦した。また彼は女子選手との闘いでも知られる。

 日本でクリスの存在がクローズアップされたきっかけの一つは、イギリスでの里村明衣子戦。日本では東京女子プロレスの伊藤麻希と「NEO伊藤リスペクト軍団」を結成した。極小イベント『崖のふち女子プロレス』で松本都とハードコア戦を敢行、頭に竹串を突き立てたこともある。シリアスにせよコミカルにせよ、女子を“見下す”感じではなく一人の対戦相手(パートナー)として全力で対峙する姿勢が抜群にいい。

「女子選手と組んだり対戦する時には、相手が女子だっていう意識を捨てることにしてるね。まあ、捨てようと思うこと自体、意識してるってことになっちゃうんだけど。ただサトムラ、イトー、マツモトといった人たちは、男子とか女子とかいう前にレスラーとしての個性が強い。だからこっちも、その個性にどう向き合うかを考えるだけだね」

 プールで闘い、路上も爆破マッチも女子との対戦も一級品。DDTでの自由を堪能し、なおかつレスラーとしてのポテンシャルを感じさせるクリス。その存在は、かつてのケニー・オメガのようだ。ケニーはDDTから新日本プロレスに巣立ち、さらにアメリカで新団体AEWの副社長を務めることになった。だがクリス自身は、ケニーとは違う生き方をしたいと考えている。

「僕は“ネクスト・ケニー・オメガ”ではなく“ファースト・クリス・ブルックス”として生きたい。ケニーのように外国人選手として突き抜けた存在になりたいという気持ちはあるけどね。こないだ、タケシタ(竹下幸之介)とウエノ(上野勇希)と食事に行ったんだけど、その時に話したのは“自分がどうなりたいか”よりも“どうやってDDTを大きくしていくか”を考えたいねってことなんだ」

 プライベートでは「ごく一般的なオタク」だというクリス。アニメを見ながら日本語の勉強をしている。

「少なくとも、まだ一度もイギリスに帰りたいと思ったことはないよ」

 DDTは6月7日にさいたまスーパーアリーナでビッグマッチを開催する。新時代のブレイクに向け、クリスがキーマンの一人になることは間違いない。

文/橋本宗洋

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