新型コロナウイルスの感染拡大に対し、各国が封じ込めに足並みを揃えることが期待される中、アメリカと中国の対立が表面化している。
中国の趙立堅報道官が「アメリカ軍が新型コロナウイルスの流行を武漢に持ち込んだのかもしれない」とツイートしたことで応酬は激化。トランプ大統領は新型コロナウイルスを“中国ウイルス”と表現するように。また、ポンペオ国務長官も「中国は感染拡大の責任を米国に転嫁している「ご存じのようにトランプ政権は“武漢ウイルス”との戦いに力を入れている」と強調。政権幹部が「中国政府による隠蔽を指摘。“世界的な対応が2カ月遅れた”」とも話している。
一方、中国中央テレビは、ポンペオ氏を描いた風刺画を紹介。耿爽報道官も「アメリカには直ちに間違いをただし、中国に対する理由なき非難をやめるよう勧める」と応じた。さらに中国は国内で活動するニューヨーク・タイムズ、ワシントンポストなど3つのメディアを事実上追放する措置を取り、他のメディアに対しても活動の制限などを課している。
他方、感染拡大の中心地となっているヨーロッパでは、ドイツが隣接する5カ国との間に検問を設けるなど、事実上の国境封鎖を実施。EU最大の特徴である、人や物資の自由な移動が制限されるようになった。そんな中、中国は感染者数、死者数が激増していえるイタリアへは専門家チームを派遣。セルビアのブチッチ大統領は「ヨーロッパに団結などない。頼れるのは中国だけだ」と述べている。
そんな中、WHOのテドロス事務局長は「我々は、ウイルスが医療態勢の脆弱な国に広がることを最も懸念している」と述べ、「国際的な対策が必要」と協調を促している。
18日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した「グローバルヘルス・ガバナンス」の観点から国際政治を研究している詫摩佳代・首都大学東京准教授は「WHOは1つの目標に向かって各国を協調させる役割を担っているが、あまり多くのことを期待するのはあまり正しくない」とした上で、「国際協調のためには必要なことが2点ある。まず、それぞれの国がWHOの出す情報や勧告に基づいて足並みを揃えるということ。そして、どの国も困難な状況にあるが、やはり度合いは違う。そこで死者数が増えている国を支援することが求められる。例えばイタリアやイランなど、非常に困難な地域に対しての国際的な支援が求められていると思うが、今はそれぞれが国境を閉じてしまっていて、自国第一で必要以上の過度な措置が取られてしまっている。これも各国の強い不安の現れだと思うが、WHOとしては経済へのインパクトや社会への混乱をもたらすことが懸念されるため、渡航禁止や入国制限の勧告はしておらず、感染者と濃厚接触した人を特定して隔離し、必要な人に必要な医療を提供しようということを勧告しているだけだ」と説明。
そして、「公衆衛生の問題と政治を切り離すことができればいいだが、今の国際社会は国と国との関係が非常に多元化、かつ争点が双方に影響を与えあっているので、貿易をめぐる政治的な対立が感染症対応にも深く影を落としている。2009年に新型インフルエンザが流行した時には、WHOもいち早くフェーズ6まで上げ、製薬会社と協同しながらワクチン開発を行った。しかし今回はそれよりも感染力が強いということや、“自国第一主義”がはびこっている。そのため中国もアメリカもリーダーに不満が行かないよう、敵を作っている感じがする。ただ、中国は自国が落ち着いてきたということもあり、イタリア、イラン、イラクに対して支援する方針を打ち出した。逆にアメリカはすごく内向きで、自分の国のことで精一杯だ。ワクチン開発を巡ってドイツとも対立している。しかし、“対岸の火事”はかなりの確率で自分のところにやって来ることになる。他国の困難は自国の困難に直結するという認識を持つ必要がある」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:他国の困難=自国の困難 トップが小競り合いをしている場合ではない!新型コロナ
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