(場外戦、足攻め、打撃とすべてがハードだった田中。若い竹下と真っ向勝負を展開)
DDTが3月20日の“聖地”後楽園ホールから興行を再開した。3週間ぶりの開催だ。大会自粛期間は道場での無観客試合をインターネット配信していた。
ファンが興行を待ちわびていただけでなく、選手にとっても観客の声援が何より力になる。数多くの選手が「無観客試合はいつもより痛いし疲れる」と語っていた。プロレスラーは客前だからこそ100%、あるいはそれ以上のポテンシャルを発揮できるのだ。
メインは団体の頂点、KO-D無差別級王座をかけたタイトルマッチ。現在のチャンピオンはZERO1の“弾丸戦士”田中将斗だ。王者から指名を受けた挑戦者はDDTの新世代エース・竹下幸之介。リーグ戦「D王グランプリ」決勝で遠藤哲哉に勝って優勝、HARASHIMAを下してベルトを巻いた田中は、竹下戦でDDTトップレスラー総ナメを狙ったのだ。それはDDTを味わい尽くしたいという気持ちからでもあった。
試合は文字通りの激闘だった。田中が最も得意とする真っ向勝負、直球勝負だ。ゴング直後にタックルでぶつかり合い、チョップ、エルボーの打撃戦。コーナーから場外へのボディプレスでテーブルクラッシュを決めた田中はイス攻撃も。田中は47歳、竹下は24歳。しかし“激しさ”という点で、田中は間違いなく竹下を圧倒していた。試合後も竹下のパワーを称えつつ「アスリートレスラーとして、体力面では負けてなかった自負はあります」と言ってのけるのだから恐ろしい。
最後は必殺技スライディングDも合わせ怒涛のエルボーラッシュ。パッドを外してのローリングエルボーを田中が決めて防衛を果たした。
(4月大会では田中vs坂口が決定)
田中ペースの試合だったが、竹下にもレジェンド・田中将斗を体感したいという思いがあったようだ。試合について「完敗です」と語った竹下だが「田中将斗の土俵で闘うことができた」とも。幼少期からのプロレスマニアである竹下にとって、田中は憧れの存在。試合内容について「厳しい見方をする竹下幸之介少年を唸らせる試合ができたんじゃないか」とも語っている。
4月大会、田中は坂口征夫の挑戦を受けることに。一方の竹下はユニバーサル王座決定戦に続きタイトルマッチ連敗となったが、得るものが多い試合だったはずだ。試合後の田中は「お客さんのフラストレーションを発散できる試合だったと思う」というコメントも。
チャンピオンもチャレンジャーも、プロレスに飢えた観客に“プロレスならでは”の闘いを満腹になるまで提供したのだ。彼らは観客との真っ向勝負に勝った。竹下も、エースとして一歩前進したはずだ。
文/橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング