「オレにはもう本当に時間がない。あと1歩なんだよ。間に合えよ――」
3月22日に開催された「K'FESTA.3」で村越優汰を相手に文句なしのKO勝利を収め、K-1のスター選手である武尊の次の対戦相手に自ら名乗りを上げたレオナ・ペタス。近年「K-1内にライバル不在」と言われて来た武尊に挑戦状を叩きつけた現Krushスーパー・フェザー級王者は、試合から数日後に自身のSNSで「オレにはもう本当に時間がない。あと1歩なんだよ。間に合えよ」と呟いた。
彼の言う「本当に時間がない」とは、昨年から公表している母親の美香さんの病状のことだ。すでにステージ4のがんであることを世間に公表し、試合後に必ず「母ちゃんが元気なれるようにK-1のベルトが獲りたい」と発言し続けてきた。
元K-1ファイター、ニコラス・ペタスの弟子としてKrushに参戦を果たすも、7年とすでに古参のファイターでもある。そんなレオナががむしゃらに「K-1タイトル獲り」を意識しはじめたのは、やはりお母さん病気の影響があるだろう。
昨年11月の横浜大会で武尊を苦しめ再戦を熱望する村越と、Krush王者のレオナ。この2人による対戦は、公言されてはいなくとも「次期挑戦者候補」を決める試合という側面もあった。
とくに対戦前からレオナは「K-1がKrushより上という訳ではないことを証明する」という“下剋上発言”を繰り返してきた。武尊への挑戦権を得るためのけじめとして、ステップアップとなるKrushスーパー・フェザー級を手にすること。そして「武尊選手がKOできなかった村越選手をKOすることで自分が強いことを証明できる」と力説。リング上で見事に有言実行してみせた。
試合は序盤こそ技巧派の村越が繰り出す前蹴りやミドルに手こずったレオナだが、1ラウンド後半で強引に振った右カウンターで最初のKOを奪うと、その後は試合を優勢に進める。
2Rもレオナのペースだ。サウスポーの村越を苦にせずに遠近両方の距離で打ち合えるスキルと、パワーでねじ伏せる屈強なフィジカル。村越もフットワークを使いミドルを打ち込んで反撃に出るが、「石の拳」の異名でも知られるレオナの右フックの脅威にさらされ、いまひとつ自分のペースに持ち込むことができない。
3R、高い身長から振り下ろすレオナの右が村越にヒット。AbemaTVで解説を務めた魔娑斗が序盤から「村越が身長差のある選手を苦手にしている」と指摘していたが、その発言どおり打ち合いではレオナの右が随所で当たった。極めつけはラウンド後半の左右のラッシュ。倒れまいと必死でクリンチを狙う村越をひき剥がすように連打を叩き込んでダウンを奪うと、再開後にさらに激しく拳を振るって試合を決めた。
2017年以降はKrushとK-1で8連勝。昨年9月には第9代Krushスーパー・フェザー級を戴冠するなど、順調にキャリアを築き今年で28歳。着実にステップアップしてきたレオナ・ペタスは、彼が掲げ続けた「武尊越え」まであと一歩と迫った。
レオナは26日のツイートで家族写真を公開すると「母ちゃんとの約束を守るために、オレは必ずK-1チャンピオンになる」と自分を奮い立たせるように呟いており、これにはファンからの応援ツイートが相次いで寄せられている。
「できれば次の福岡大会で――」
そのことはレオナ本人の希望はもちろん、ファンの願いでもある。