31日午後、安倍総理大臣と会談、今後の対応を協議した東京都の小池都知事。記者団に注目される「緊急事態宣言」について話が及んだかどうかと問われた小池都知事は「状況についてはぎりぎりということを申し上げている」「国家としての判断ということが今求められているのではないかと思う」とコメントした。
31日のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した勝田吉彰・関西福祉大学教授は「医療機関のキャパシティはかなり厳しいところにきていて、医師会の幹部や現場から伝わってくる認識は“早く非常事態宣言を出して下さい“というレベルだ。何が怖いかと言うと、高度医療のためのベッドが埋まり、心筋梗塞など、コロナ以外の病気で助けられるものが助けられなくなることだ。2週間のタイムラグがあることを考えなければならないのが新型コロナウイルスなので、都市封鎖は早ければ早いほどいい」と話す。
先日の会見で小池都知事が言及して以来、注目を集めている政府の「緊急事態宣言」、そして「ロックダウン(都市封鎖)」。感染者数が16万人を超えたアメリカでは、首都ワシントンD.Cや近隣の州で罰則を伴う外出禁止令が発令された。違反した場合、1年以内の禁錮や5000ドル以下の罰金が科されることもあるという。ただし日本の場合、海外のような強い強制力を伴うものではない。
まず、「緊急事態宣言」は、3月に成立した改正新型インフル特別措置法、いわゆる“新型コロナ特措法”に基づき、
(1)国民の生命・健康に著しく重大な被害を与える恐れ
(2)全国的かつ急速な蔓延で国民生活・経済に甚大な影響を及ぼす恐れのある時
という2つの要件を満たした場合に内閣総理大臣が区域・期間を示して発出することになっている。これにより都道府県に権限が付与され、各自治体が対応の要請・指示を行うという流れだ。ただ、強制力があるのは臨時医療施設建設の土地収用、医療品などの特定物資の売渡しといった措置にとどまっており、外出自粛や学校などの大規模施設の使用制限には強制力を持たない。
その一方、政府は感染症法の政令の一部を改正して施行しており、各都道府県知事は72時間を上限に特定地域の交通遮断や建物の封鎖を実施することができるようになっている。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「政府の諮問委員会メンバーの1人が“諮問委員会では緊急事態宣言を出した方がいいという意見が多い”と言っていたが、政府としては政治的・経済的な悪影響を考えて留保しているのではないか。政治判断をどこでするか、という問題だ。ただ、ニューヨークやパリやスペインの事例を持ってきたり、イタリアの市長が“外で遊んでいたら火炎放射器を持った部隊を送り込む”というようなことを言ったという事例を持ってきたりしがちだが、日本の特措法はほとんど強制力がなく、おそらく“自粛して下さい”と言うだけだ。一方で日本人は自粛が大好きだし、要請された瞬間に娯楽施設などは一斉に閉じると思うし、外出する人もいなくなると思う。それでも買い占めの行列に並んで濃厚接触しているくらいだったら、空いている小さな個人経営の店にちょこっと行ってご飯を食べるくらいOKなのではないかと思うし、桜の花の下で夫婦がビールを飲むくらいはOKなのではないか。しかし、“この人が外出していた”などと言いまくる“外出警察”がネット上に現れることになると思う」との見方を示した。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「懸念しているのは、緊急事態宣言というトピックをめぐって政治ゲームになっているのではないか、という点だ。ロックダウンという言葉を流行らせ、主導したような形に見えている小池都知事に対して、菅官房長官が“都知事がいろいろ言っているが…”というオーラを出していて、官邸が牽制するなどしている。しかし、必要を感じたならすぐに出して欲しい。ただ、アメリカなどの様子を見ていると、弱い人々が危機に陥ってしまう可能性があることは認識しておいてほしい。例えば、ホームレスの人やネットカフェ難民のような人たちに対する炊き出しなどのサポートが無くなってしまうのはどうか。そうした取り組みは継続できるよう留意して欲しい」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:若者の感染も目立つ中ロックダウンはある? 専門家or政治判断?緊急事態宣言
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