猛アピールが見事に実った。プロ将棋界初の団体戦となった「第3回AbemaTVトーナメント」において、大会に先立って行われたドラフト会議の模様が4月4日に放送。全12チーム、計36棋士の出場が決まった。リーダーの中で唯一の振り飛車党、久保利明九段(44)は1巡目に同じく振り飛車党の菅井竜也八段(27)を指名。続く2巡目に、またも振り飛車党の今泉健司四段(46)を指名した。今泉四段の指名理由に久保九段は「猛烈なプッシュを受けまして」と笑いながら暴露。晴れの舞台を、貪欲な姿勢で勝ち取ったことが分かった。
見せるべきは男気だった。今泉四段は41歳の時、アマチュアから編入試験を経てプロ入りした苦労人。ガッツの持ち主でもある男が、目の前にある大チャンスを黙って見ているはずもなかった。久保九段は「2巡目は本当は違う人にもしたかったんですが」と笑うと、その後に「これはもうしょうがないなと。心意気を買いました。おっさんがおっさんを選んでもしょうがないなと思ったんですけど、アマチュア時代に早指しで鍛えているところはあるので、期待しています」と続けた。
このエピソードには、集まった他の10人の棋士、総監督として出席していたサイバーエージェント代表取締役社長・藤田晋氏の一同が爆笑。一気に場の雰囲気が和んだ。広島出身の苦労人・今泉四段が、早々に笑いを取るという意味では一歩リードした。次は指名を受けた恩返しとばかりに、チームに1勝をもたらす番だ。
◆12チームの顔ぶれ(左がリーダー)
渡辺明三冠、近藤誠也七段、石井健太郎五段
木村一基王位、行方尚史九段、野月浩貴八段
佐藤康光九段、森内俊之九段、谷川浩司九段
三浦弘行九段、本田奎五段、高野智史五段
久保利明九段、菅井竜也八段、今泉健司四段
広瀬章人八段、青嶋未来五段、黒沢怜生五段
糸谷哲郎八段、高見泰地七段、都成竜馬六段
羽生善治九段、鈴木大介九段、三枚堂達也七段
◆第3回AbemaTVトーナメント
第1回、第2回は個人戦として開催。羽生善治九段の着想から生まれた持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算されるフィッシャールールは、チェスなどで用いられるもの。1回の対戦は三番勝負。過去2度の大会は、いずれも藤井聡太七段が優勝した。第3回からはドラフトを経て構成される3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝チームには賞金1000万円が贈られる。