K-1系格闘技イベント『KHAOS』が、4月4日に新宿FACEで無観客大会を開催した。
この『KHAOS』は若手選手を中心に、ファイトマネー総取りトーナメントなど企画性の高い大会を開催してきた。今回は2大会連続となる、K-1選抜と格闘代理戦争の対抗戦7vs7マッチだ。ここで格闘リアリティショー『格闘代理戦争 K-1 FINAL WAR』出身選手たちがプロデビュー。K-1選抜選手と団体戦で激突した。
メインイベントは目黒翔大vs古宮晴。実は目黒も『格闘代理戦争』前シーズンの出身者で、前回のKHAOSでプロデビューしている。対する古宮は最新シーズンである『K-1 FINAL WAR』のMVPとも言える活躍を見せた選手で、トーナメント1回戦では前人未到の3人抜きを達成した実績がある。
難聴で子供の頃にいじめられ、気持ちの弱さを克服しようと格闘を始めた古宮は、試合中は「音のない世界」にいる。にもかかわらず、落ち着き払ったテクニカルなファイトスタイルが武器であることにも驚かされる。
副将戦まで3勝3敗、自分の試合でチームの勝ち負けも決まるという大事な場面に登場した古宮は、アマチュア時代からの持ち味である試合運びの巧さを見せていく。相手の攻撃をかわしてパンチ。前蹴りで相手を突き放す場面も。
ただ、プロの世界は新人がテクニックだけで圧倒できるほど甘くなかった。優勢ではあるが圧倒まではできない。試合後の古宮によると、緊張でガチガチだったと言う。プロデビュー戦がメインイベント、チーム対抗戦の大将戦なのだから10代の古宮が緊張するのは当然だった。加えて無観客試合。選手全員が同じ条件とはいえ、異例のシチュエーションになる。
「無観客については、僕は(声援が聴こえないので)関係ないっちゃあないんですよ。でもやっぱり寂しかったですね。応援してくれる人たちの顔が見えないので」
試合の終盤には、足を止めてパンチの打ち合いを見せた。
「サウスポーの相手に対して左に回って。動き続けてカウンターを当てるという作戦だったんですけど、足を止めて打ち合って、アゴが上がってしまって。悔しい試合でした。反省しなきゃいけないです。距離を取って闘って、なおかつ倒せるファイターになりたい」
試合直後にこれだけ冷静に試合を振り返ることができるのが古宮の強みだ。フルラウンド闘って判定は古宮に。思ったような奇麗な試合はできなかったが、クリーンヒットの数で明らかに上回っていた。
「今日は0点」という古宮だが「格闘代理戦争の代表として、大将をやらせてもらえたのは誇りです」という言葉も。また自分の役割をはっきり自覚してもいた。
「障がいを持っていて夢が抱けない子もいるそうなんですけど“頑張ったらここまでできる”っていうのを示したいです。夢を与えられる選手が目標です」
まだキャリア1戦の新人。しかし大器なのは間違いない。何より彼が闘うことは、そのまま同じ境遇の人々へのメッセージになり得るのだ。
文/橋本宗洋