東京の感染者・死者数 なぜ欧米に比べて緩やか?専門家「推測の域は出ないが、清潔な文化と医療現場の尽力もある」
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 7日、安倍総理は緊急事態宣言を発令。「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。今回の緊急事態宣言は海外で見られるような都市封鎖、ロックダウンを行うものでは全くありません。そのことは明確に申し上げます」と国民に向け呼びかけた。

 また、対象地域に指定された東京都の小池知事も「Stay home、お家に居て下さい。外出を控えて下さい。外出をしないで下さい。そして外出せざるを得ない場合には、密閉、密集、密接、この3密を避ける。みなさまご自身を守るため、家族を守るため、大切な人を守るため、そして私たちが生活するこの社会を守っていくため」と、改めて都民に協力を訴えた。

 しかし果たして欧州並の都市封鎖なしで、この難局を乗り切ることはできるのだろうか。イタリアでは日本よりも厳格な外出禁止措置から約1カ月、スペインでは3週間が経過した段階で、新規感染者と死者数が減少傾向となっている。また、政府の緊急事態宣言に先立ち、東京都医師会は6日「医療的緊急事態宣言」として、政府の1カ月よりも長い、6週間の外出自粛を要請している。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏が「インターネット上でも話題になっているが、すごく不思議なのは、東京の感染者数は指数関数的に増えてはいるが、ヨーロッパやアメリカに比べて緩やかだということ。また、死者数の増え方も、非常になだらかだ」と尋ねると、東京大学大学院特任研究員で内科医の坂元晴香氏は「手洗いの習慣や、土足で家の中に入らないといった、清潔な文化が日本にあったからだということが言われている。また、他の国と比べて重症者や亡くなる方が少なく推移できているとみられているのは、現場の方々の尽力によるものだと思う。ただ、日本人の体質的な問題や医療体制だけの問題なのかというのは意見が分かれるところだし、推測の域は出ない」と説明。

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 その上で「特に1、2月頃の段階で日本が対策の中心に据えてきた、たくさんの患者が出るところを丁寧に追って潰していくクラスター対策がある程度効いていたということもある。ただ、患者数がどんどん増えてくると、クラスター対策だけでは防ぎきれない局面に入ると言われてきた。東京などではクラスター対策をしつつも、捕捉しきれない患者が出てくる局面に入ったと考えられる。例えばニューヨークのように高度な医療が備わっているところでも、1人あたりにかけられる医療の労力が減ってしまえば、救命できるものもできなくなってしまう。現時点で潜在的な患者さんがどのくらいいるのかというところと、緊急事態宣言が出された地域の医療機関のキャパシティ、病床、医療スタッフの数によって、これから出てくる重症者を支える余力が変わってくる。その意味では8日移行の推移を注意深く見ていかなければいけないので、“1カ月で大丈夫”と言い切るのは現状では難しい。国によっては移動の制限を解除した途端に他国から入ってきて、第2、第3の波が出てきたケースもある。海外との行き来も制限し、専門家会議の言う、“人との接触を7割、8割減らす”ことを守れば、1カ月で、6週間で、といったシナリオもあり得るのかなと思う」との見方を示した。

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 東京都と同じく緊急事態宣言の対象地域となった福岡県在住で小学2年生、2歳、1歳の3人の子どもを育てる佐々木さん(仮名)は、育児休業を終え、今月から職場復帰の予定だった。「これまでも外には出さないようにしていたので、これで何かが変わるということはないが、小学校に行けない上の子はずっと家にいるのが退屈そうで、すごく友だちに会いたがっている。下の子2人は保育園に通っているが、“コロナウイルスが出たら休園”と言っている。近所で感染した人が出ているので不安だ。子どもに発熱はないかなど、いつも以上に気をつけている」。

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 経済アナリストの森永康平氏は「私にも小学生の子どもがいるが、ゴールデンウィーク明けまでは家で見るか学童に連れていくかという話になっている。家庭によって子どもの学力の差が生じてしまう可能性の問題や、一緒にいる時間が増えることで虐待やネグレクトが起きやすくなる可能性の問題も指摘されている」と話す。

 坂元氏も「ヨーロッパがやっているような完全な都市封鎖みたいなものを2週間やった後で、1カ月は自由にしてください、みたいな方式でやるのか。それともアジアの一部の国のように、屋内の混み入ったところは閉鎖して、ある程度オープンスペースのところは自由にするという、緩やかに日常を維持する方式でいくのか。経済の影響や、長く自宅にいることで起きるDVや虐待といった問題も出てくるので、やはり最低限の社会機能は維持して、できるだけ日常に近い形でやりつつというのが日本の目指す方向性だと思う。ワクチンの開発や集団免疫の話もあるが、いずれにしても長期戦になるだろうという認識になりつつあると思う」とコメント。

 佐々木氏は「韓国や中国の場合、スマホにアプリを入れさせて“監視システム”を作り、それによって抑え込むという、クラスター対策、ワクチン、集団免疫のどれでもない、“第4の方法”を導入した。しか人権の問題にも関わる以上、これはリベラルな国家では難しい。それでもEUで中国的な監視システムについての議論も出てきているし、今後、ひょっとしたら世界的にも“監視社会やむなし”みたいな方向に変わるかもしれない」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:外出自粛に効果は?"日本の死者数"欧米と比べて少ない理由は?

外出自粛に効果は?"日本の死者数"欧米と比べて少ない理由は?新型コロナ
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