緊急事態宣言が出されてから3日。国と自治体の間で、休業要請の対象を巡る溝が浮き彫りとなっている。東京都が示した休業要請措置の案では、百貨店、理髪店、さらにはホームセンターなども入っているが、国はこれらの業種を外す動きに出た東京都の小池百合子知事は「うちの店は開けていいのか、ダメなのか、やめた方がいいのか、どうなのかということを明確に示さなければ、結局、お店の方も困る。スピード感重視で行きたいと思う」との考えを示ている。
さらに愛知県、岐阜県、京都府と、緊急事態宣言の対象とならなかった自治体も追加での宣言を求めるなど、独自の動きを始めている。感染者が増え続ける中で浮き彫りとなる足並みの乱れ。こうした状況に、ネットでは「緊急事態宣言が出て、今揉めるというのは何か」「政府は信用できない。自ら判断して休業するしかない」「国も自治体も、休業補償を出す気がない。お互い責任を取りたくないのではないか」といった声が上がっている。
厚生労働大臣や東京都知事を歴任した舛添要一氏は9日のAbemaTV『AbemaPrime』で「細かなところを決めてなかったのだと思う。例えば東京都は閉めたが、少し歩いて川崎に入れば開いているという具合になっていると話にならない。しかし法律では緊急事態宣言の地域に指定した後は知事に任せるという仕組みになっている。だからお互いが言いたいことを言って何も決まらない」と話す。
「そもそも緊急事態宣言と言っても、それまでの自粛要請とほとんど中身は変わらない。パリでは9日から昼間のジョギングも禁止、違反したら罰金だ。パン屋や薬屋といった、生きていくのに絶対に必要なところ以外も閉めた。しかし収入の7、8割を政府が補償している。そういう準備をしないで何もしないで緊急事態宣言を出したというのは、ひどいと思う。業種の指定を一切せず、行くか行かないかは都民の皆さんで決めて下さいということになれば、総理が“人との接触を8割減らす”と言ったことと矛盾する。また、西村大臣は効果を見るために2週間先送りしようと言ったと報じられたが、それも総理が言ったことと真逆ではないかと思う。やはり、経済にあまりダメージを与えてはいけないし、“仕事やめろ”と言われれば“金を出せ”というのは当たり前だが、そこを誰が負担するのか。東京都が出すのか国が出すのかというせめぎ合いがあるのだと思う。そこの調整がついていなかったということだろう。東京は7兆円もの予算を持っていて、めちゃくちゃ金持ちだ。そこが周りの県とは違うので、ここは政府が旗を振らなければならない」。
さらに舛添氏は「政府の緊急経済対策は108兆円だが、日本のGDPは500兆円だ。1億人で割れば、国民一人あたり毎年500万円稼いでいることになる。つまり、そこから100万円を捻り出すというのは、そこまで難しいことではない。極端に言えば、4割くらい出してもいい。それで皆が生き延びれられるのであれば、新型コロナウイルスが終わった後で稼ぎ直せばいい。台湾や韓国では、国がマスクを買って配給にした。日本もマイナンバーがあるので、“今日はマイナンバーの下1桁が1の人しか買えない。明日は2の人”というようにして、おじいちゃんおばあちゃんが行列を作って週に2回も買えないようにすればいい。なぜ、そういうことをやらないのか。あるいは宅配便の人に話を聞いたら、山ほど荷物が届いているが、トラックを急に増やすわけにはいかないし、外国のように手渡し禁止になっているわけでもない。そういう細かいところまでやるのが緊急事態宣言のはずだが、全く手が回っていない」とも指摘した。
『週刊東洋経済』の山田俊浩編集長は「自治体が補償などを負担するとなると、余裕のある東京都以外の自治体は困ってしまうので、国がやらなければいけないと思う。また、日本ではそれぞれの規律に求めるという形でやっているが、これでは戦況が悪化するとまた少しずつ戦力を導入するということになってしまう。この2週間で感染拡大が止まらなければ、また次の戦略、次の戦略という、典型的な“負けパターン”になる。例えば首相は布マスクではなく立派な医療用のマスクをして国民に危機感を伝える必要があると思うし、スーパーの入り口で行列整理する人も立派なマスクをしなければならない。そういった武器があまりにも不足しているように見える」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:"人の命よりお金" 緊急事態でも揃わぬ足並み... 国と自治体にミゾも
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