競輪の中継や予想会などで解説者が「この選手はタテがあるから付いていける」とか「番手にヨコの脚があるから捲られませんよ」など、“タテ”や“ヨコ”もしくは“タテの脚”や“ヨコの脚”という言葉を使っているのを聞いたことありませんか?
“タテの脚”というのはイメージしやすいと思います。進行方向へ向かって、タテに真っ直ぐ踏み込める脚力のことです。自力先行の選手がタテの脚を持っているのは当然のこと。ラインを引き連れて真っ直ぐに、風を切って引っ張っていく脚があるから自力で行けるわけです。
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対して、自力選手の番手で引っ張ってもらう追い込みの選手に求められるのが“ヨコの脚”です。前で風を切ってもらう代わりに、後ろから捲りに来る選手をブロックするのが番手の仕事です。後ろから捲りに来るタイミングに合わせて、身体をヨコに張ってブロックする。この動きが上手いことを「ヨコがある」もしくは「ヨコの脚がある」などと言います。
タテ脚が強力な自力選手にヨコが上手い番手が付くことで、そのラインは総合力が格段に高まり、本命に推されるというわけです。
さて、タテ脚ヨコ脚のあるなしはどのようにして知ることができるのでしょうか?
何レースか見て判断するのが基本ですが、データを見ればある程度は判断することが可能です。
見るべきデータは「決まり手」。単純に「逃」「捲」が多い選手はタテ脚があり、「差」「マ」が多い選手はヨコ脚があると考えていいかと思います。自力で逃げたり捲ったりできるということはタテに真っ直ぐ踏み込む力に長けていることであり、差して勝ったりマークで2着に入ったりできるというのは後ろから捲りに来るラインを数多く捌いているということになるでしょう。
わかりやすいところでいうと、例えば早期卒業して大活躍をしている117期の寺崎浩平選手。その決まり手は「逃:捲:差:マーク=6:13:1:0」(※2020年4月3日現在。他の決まり手も同様)となっていて、逃げより捲りのほうが多いことから、どんな先行ラインも後方から捲りきれる、強烈なタテ脚を持っていることがわかります。
一方、村上義弘&博幸兄弟はというと、兄の義弘選手が「逃:捲:差:マーク=0:0:8:2」、弟の博幸選手が「逃:捲:差:マーク=0:0:7:2」と、どんなラインもヨコで捌いて最後に差しきるレースをしているのがデータから見て取れます。マークよりも差しが多いことから、一瞬の踏み出しで一気の加速を得るといったタテも備えているのに、捲りで勝つことをしないのは最後までちゃんと番手の仕事をするといった、カタカナのケイリン選手ではなく漢字の競輪選手であることを物語っていると言っても過言ではありません。
このようにタテとヨコは分かれるのは一般的。若い頃はタテでラインを引っ張り、ベテランになったらヨコの仕事でラインを押し上げる。しかしその両方を兼ね備えている選手もいます。
例えば郡司浩平選手の決まり手は「逃:捲:差:マーク=1:7:4:0」。平原康多選手の決まり手は「逃:捲:差:マーク=2:5:8:1」。捲りでも差しでも勝てる。タテもヨコもある自在な選手です。こういう選手が強力な自力選手の番手に付くと予想が難しくなります。
例えば上述した寺崎選手の番手に村上義弘選手が付いたとします。この場合は寺崎選手は後ろを信じてひたすら前に踏んでいけば、あとは村上選手が捌いてくれますので寺崎=村上の折り返し車券で決まるだろうと予想できます。
これが寺崎選手の番手に郡司選手が付いたとしたら……まあ、寺崎選手は福井で郡司選手は神奈川なので組むことはほぼあり得ませんが、同地区だとして……寺崎選手ががんばって前に漕いでいたとしても、そこに対抗できるような強力な自力選手が他にもいた場合、互いにやりあってタレたとみるや、タテ脚もある郡司選手は捲りに打って出るでしょう。それを考えると寺崎=郡司の折り返しは買いづらく、郡司-3番手の選手という車券を買いたくなります。ただ、他に強力な自力選手がいなければ素直に寺崎=郡司にしたくなるものの、直線が長かったりすると郡司は4コーナーから捲りにいっちゃうかなぁ……とか。そうなるとハコ3も考えられるなぁ……とか。
選手のタテヨコは展開予想に大きく関わってきます。もっといえばタテヨコを加味すると競輪の予想がさらに深くなります。是非ともタテの脚とヨコの脚を考慮に入れてみてください♪