“対策がなければ40万人以上が死亡”。厚生労働省のクラスター対策班、北海道大学の西浦博教授らが、外出自粛などの感染防止対策を何も取らなかった場合、国内で15歳以上の重篤者は85万人にのぼり、このうちおよそ40万人以上が死亡するという試算を公表。西浦教授は「丸腰で受けた時にどうなるのか、というシミュレーションだ。この感染症に関しては接触を大幅に削減することによって流行を止めることができる」と説明した。
15日の『ABEMA Prime』に出演した、公衆衛生・感染症対策が専門の清水一紀医師は「専門家が国民とこのようなコミュニケーションをとるというのは誤りで、本来は政治家が責任を持って言わないといけないこと」とした上で、「こうした推算はインフルエンザなど流行の際にも被害想定、あるいは流行シナリオとして出されるものだ。常に最悪のシナリオを考えていくのが危機管理の要諦。これまでも専門家会議からは行動変容についての話があったが、なかなか進んでいないということで、何も対策を取らなければどうなるか、ということを国民に共有したということだと思う。私が見る限りでも、人との接触の“80%減”を達成できているとは言えず、20~40%減くらいの方のグラフにのってしまっているのが状況。こうした最悪のシナリオも想定される現実が見えてきてしまったということだと思う」と話す。
「東京都で1日の感染者数が少なくなってきているからというのは、極めて楽観的な考え方だと思う。日本は明らかに検査数が足りていないので、拾えていない感染が相当あると思われる。減少に転じるには早い。だいぶ時間がかかると思う。そのことを踏まえて対策を打っていかないといけない。また、日本は当初、クラスター対策、重症者を拾い上げるという戦略でやってきた。その時点ではPCRの絶対数を上げる必要はない。ただ、指数関数的に増えるフェーズに入った以上、民間も含めてPCR検査のキャパを上げていかないといけないと思う」。
西浦教授らの会見では、「スポーツジムやライブハウス、夜の街、体育館のロッカー」「性的接触やキス」「向かい合って会話しながら食事30分」などをハイリスクな場面として例示、通勤電車についても「良いわけがない」と説明した。他方、10時間の接触時間を8時間に減らしても効果薄だが、30分の会話を5分にすれば効果大、週5日勤務を1日出社にして、残りをリモートワークにすれば「8割達成」だとした。
清水医師は「お店に誰もいなかったとしても、すでにテーブルや椅子にはウイルスが付いているかもしれないので、しっかり手を洗わないければならない。食事もシェアしない方がいいし、向かい合うよりは壁に向かって横並びに座った方が感染のリスクは減らせる。当然、電車が混むと飛沫感染のリスクも上がるし、接触感染も起こってくる。吊り革に触るのも同様だ」と説明した。
その上で、今後の展望については「短期的な側面と長期的な側面に分けて考えないといけない。これからの1、2カ月で80%減を仮に達成できたとすれば一度は感染者が減る。ただ、社会活動を復活して行く中で人と人とのコンタクトも増えるので、再び感染者が増えてくるだろう。そこでどのような戦略をとるかという話だ。一つはICUのキャパシティが医療崩壊に近づいた段階でまたロックダウンをすることを繰り返す戦略だが、これはなかなか難しい。やはり感染者数が下がっている期間に、いかに社会が適応していけるかだが、1年半から2年間はこの状況が続き、自粛の状態をキープしていくことを覚悟しなければならない。ただ、社会で生きていく以上、ゼロリスクという考え方からは脱却しなければいけない。絶対的な正解もないので、持続可能な形を模索しながらやっていくしかない」とした。
また、来年夏に延期が決まった東京オリンピック・パラリンピックの開催については「開催のためには、まず国内の流行を抑さえておかなければいけない。それと同時に、世界でも抑え込んでおかないといけない。やはりサイエンスの観点からみれば、厳しいのではないか」とコメントしていた。(ABEMA/『ABEMAPrime』より)
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