「コロナで死ぬ夢を見た。人と物資の支援がなければ持たない」 欧州経験の医師が医療現場の実情訴え
番組をみる »

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本の医療現場が崩壊の危機にあるとの指摘が相次いでいる。そこで17日の『ABEMA Prime』では、ベルギーの新型コロナウイルス対応指定病院で勤務、先月末に帰国し、現在は国内の医療機関で新型コロナウイルス感染症の対応に当たっている心臓外科医の澁谷泰介医師に話を聞いた。

 「ベルギーの同僚からは“日本の方がひどいのではないか”と言われたが、“日本は局所的なもので抑えられているし、死亡者数も増えていないから大丈夫だ。ありがとう”と言って帰国した」という澁谷医師。しかし実際に働き始めてみると、多くの医療機関が従来通りの診療体制で治療を行っているなど、ほとんどが“コロナモード”になっていないことに衝撃を受けたという。

 「海外では一般の診療はストップないし50%削減というような形にしている国が多いので、日本では一般の方も医療従事者も、いい意味で普段通りの生活を送れていることに驚いた。また、コロナの患者を診られない病院に勤務している医師の場合は、普段よりも業務が減っていると思う。なぜなら、コロナだった場合に院内感染のリスクが高いので、診察をすることができないからだ。実際、どの人がコロナで、どの人がそうでないかを見分けるのはとても難しい。交通事故で運ばれてきた患者さんをCT検査してみたらコロナのような影があった、という場合もある。しかし、そういうケースを想定した対応をしていなかったばかりに院内感染が起きてしまうというフェーズに来ていると思う。東京都で救急車のたらい回しが起きていると報じられているが、それもこうした理由からだと思う。まずは大変な状況にある病院に対し、コロナの中等症または重症に対応できる専門知識や経験のある医師を優先的に集めるなどの柔軟な対応をお願いしたい。PCR検査についても、拡大できるだけのキャパシティが本当に足りない状態なのだろう」。

 その上で、「コロナの患者を受ける病院は本当に緊迫している。メディアの情報を鵜呑みにして不安を煽られてしまい、保健所に相談の電話もしないまま病院にいきなり来てしまう方もたくさんいらっしゃる。“平熱が35度だが、今日は36度だ”というような電話相談もとても多い。こうした対応に医師の時間が取られてしまうことのないよう、ボランティアや医療関係の学生に対応してもらえると有り難い。物資としてもぎりぎりで、もうパンクしているところもあると思う。特にマスクは全く足りない。医療用マスクN95も、僕が働いている病院ではスタッフ10人に対して2個くらいしかなく、皆さんがドラッグストアなどで買うようなサージカルマスクを1週間使えという指示が出ることもざらに起きている。感染防御のためのガウンに関しても在庫があるだけで、“いつまで使えるか”と意識しながら使っている」と明かした。

 また、さらに、医療従事者たちにも感染の恐怖がのしかかっているという。「ウイルスのことなので、100%完璧ということはないと思う。どんなに気をつけていても、設備や装備のエラーや、ヒューマンエラーなどによって、医療従事者への感染は起こり得る。実際に働いている人たちからも、“いつなってもおかしくないよね”というような話を聞く。皆さん、その中で頑張っているということだ。医療従事者は我慢強い方、責任感が強い方ばかりだ。それでも目の前で患者さんが一気に具合が悪くなっていく、自身の感染リスクだけでなく、大切な自分の家族にうつしてしまうリスクもある。そういう中での活動は精神的負担が大きい。僕もコロナで死ぬ夢を見た。にも関わらず、看護師がタクシーの乗車拒否をされたという報道もあった。プロフェッショナルとして使命感を持ってやっている医療従事者やその家族までもが厳しい目で見られたりするのはとても辛い」

 こうした状況に対応するため、海外では医療従事者へのメンタルケアの対応も進んでいるといい、ベルギーのルーベン大学では、患者やその家族、さらにストレスのかかる医療従事者向けの心理サポートをする専門部署を設置しているのだという。「僕が働いていた病院でも、医療従事者のメンタル的なケアを行う部署を新たに作った。現場で頑張っている人たちはメディアの取材に応じる時間もないくらいだと思うので、ストレスが溜まる一方だろう。本当に自分の命の危険と、家族や大切な人の危険を冒しながら全力で取り組んでいるので、長引けば長引くほどメンタルケアやしっかりした補償を行わなければ、コロナの問題が終わったとしても、医療従事者との間に大きな溝ができてしまう」。

 最後に澁谷医師は「医療崩壊という言葉の定義がはっきりしないし、もちろん病院によっても事情が違うので、日本全国で医療崩壊が起きている、起きていないという話をするのは難しい。しかし、“このまま、あと半年いけるか”と言われれば、それは無理だと思う。あくまで個人の意見だが、コロナだけを見る病院とそれ以外の病院をしっかりと分けないと、緊急の処置が必要な心臓や脳の病気などの対応すらできなくなってくる可能性もある。そうなれば、救える命に限りが出てきてしまう。イタリアでは60歳以上の人に対しては人工呼吸器での治療をしないということが報じられた。日本ではそこまでの事態にはならないとは思うが、このまま何も対策をしなければわからない。難しい政治や政策の話は分からないが、まずは医療現場に人と物資とお金を大急ぎで支援していただきたい」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:「死んでしまったら全ておしまい」欧州・日本の医療現場を見た医師の声

「死んでしまったら全ておしまい」欧州・日本の医療現場を見た医師の声
「死んでしまったら全ておしまい」欧州・日本の医療現場を見た医師の声
感染者が生出演「コーラがただの炭酸水のように感じた」奪われる味覚と高熱
感染者が生出演「コーラがただの炭酸水のように感じた」奪われる味覚と高熱
愛知 大村知事VSひろゆき "自粛・移動制限"具体的にどう防ぐ?
愛知 大村知事VSひろゆき "自粛・移動制限"具体的にどう防ぐ?