一律10万円の現金給付 社会学者が感じる中途半端感「緊急性に乏しい」「不公平感が残る」一方で詐欺被害も

 政府は4月20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、一律10万円の現金給付の申請方法を発表した。また閣僚、自民党議員も給付申請をしないこと方針を明らかにした。閣議決定した補正予算案だが、国会に提出されて通過するのは早くて5月上旬、給付も5月中にできるかといった政策について、社会学者からは「緊急性に乏しい」「不公平感が残る」といった厳しい指摘が入った。

▶【動画】一律10万円給付の政策は苦しむ国民を救えるのか 社会学者の厳しい指摘

 閣議決定した一律10万円の現金給付は、まず自治体から家族全員が記載された申請書が届き、名前を確認した後、(1)銀行口座を記入し本人確認書類などとともに送り返す(2)マイナンバーカードを利用してオンラインで申請する(3)口座を持たない場合は自治体窓口で直接申請する、のいずれかの手続きが必要となる。この政策について、東京工業大学准教授で政治とメディアの関係に詳しい社会学者・西田亮介氏は「帯に短し、たすきに長し」という表現で、問題点を挙げた。

 経済活動、さらには国民の生活に影響が及ぶ中、なぜこの「一律10万円給付」に問題があるのか。「緊急性に対応するという意味では乏しくて、社会的弱者への給付が不十分という意味で不公平感が残るという意味において難しい。経済対策にも十分にはなり得ないと厳しく見ています」と語ると、より具体的なポイントを並べた。

一律10万円の現金給付 社会学者が感じる中途半端感「緊急性に乏しい」「不公平感が残る」一方で詐欺被害も

 大きな課題はスピードだ。日本の場合、国が口座や国民の住所といった情報を把握していないため「なんらかの方法で振込先を把握することから手を付けないといけない」という。口座や現住所を把握していれば直接入金して終わるが、現状ではそれができないため、自治体を使っての情報収集が必要となる。「自治体も今は、活動規模を小さくしている」中では、迅速な実施は一律給付にせよ、所得制限を設けるにせよかなりハードな作業だ。したがって、一律給付は理論的にはともかく、迅速な実施はほとんど非現実的な施策ということになる。

 また、今回の給付は「補正予算の成立が前提になっている」ため、そもそも実施の詳細が確定するまでには、まだ時間がかかる。閣議決定こそされたが、国会で月内に成立するかという状態だ。「(給付が)5月いっぱいというのは、相当早く進んだ場合に限られる。今困っている人にとっては間に合わない政策」だと言及した。

 「1人10万円」としたことで、かえって不公平感も生まれることになる。「経済的に厳しい状況に置かれている人は、社会関係資本が欠乏しがちだということも指摘されている。要するに人との関わりで、たとえば家族を持ったり、頼ったり、結婚していてパートナーに頼ることも難しいというイメージだ。そう考えると、そういう人は世帯人数も少ない可能性がある。家族が多い人は比較的に恵まれている人もあるかもしれないし、そうなると経済支援としても不公平なところがある」。一人暮らしであれば10万円、4人家族であれば40万円。単身者にとって10万円が生活する上で十分な額であるかも疑問だとした上で、「どうせ給付に時間がかかるなら、きちんと所得や減収幅について計算して、必要としている人に手厚く給付し、所得が多かったり、減少があまり見込まれない人には給付しないなど、一定の制限が設けられた方が好ましい。当初案の背景をしっかり国民に説明すればよかったが、野党やネットの反対論が巻き起こると説明することもなく政策スタンスをがらりと変えた」とも述べた。

 一度は低所得世帯中心に30万円給付という案も浮上していたが、一律10万円で進んだ現金給付。まだ国会でも成立前だというように、この給付に悪用した詐欺の被害も出始めていることもあり、受け取る側も細心の注意が必要だ。

(ABEMA/『けやきヒルズ』より)

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10万給付は「帯に短したすきに長し」
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