化粧品広告で“シワが消える”は法律違反、一般人の写真を無断使用のケースも…ネット広告が抱える問題点
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 “外出自粛”で急増するネットへのアクセス。アカマイ・テクノロジーズによれば、今月8日~11日の4日間のトラフィックは、前年同期比で67%増となっている。それに伴い、必然的に目にする機会が増えるのが「インターネット広告」だ。

 しかし、何気なく見ているインターネット広告の中には、一般のユーザーには知られてない数々の闇も存在している。22日の『ABEMA Prime』では、業界の事情に詳しい識者とともに、インターネット広告と付き合う上での注意点を考えた。

■化粧品広告で“シワが消える”は法律違反!

化粧品広告で“シワが消える”は法律違反、一般人の写真を無断使用のケースも…ネット広告が抱える問題点
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 日本広告審査機構(JARO)に寄せられるインターネット広告に関する苦情は年々増えており、2019年は上半期だけで1907件に達したという。中でも問題視されているものの一つが、多くのニュースサイトが取り入れている「レコメンドウィジェット広告」だ。記事の下の枠に、おすすめの記事と並んで表示され、「PR」と表記されてはいるものの、美容やダイエットなどをテーマにした体験談風のものが多いため、ユーザーにクリックされやすい。また、クリックした先のページはブログ風になっていることが多く、効果・効能を誇大に謳った内容もあり、第三者による本物の口コミだと勘違いしやすいのだ。

化粧品広告で“シワが消える”は法律違反、一般人の写真を無断使用のケースも…ネット広告が抱える問題点

 インターネット広告の薬機法違反を独自に調査している土橋一夫氏は、特に「ダイエットに成功する」「シワが消える」など、医薬品・医療機器・化粧品などについて定めた薬機法(旧薬事法)に違反する表現に警鐘を鳴らしてきた。「一般化粧品の場合、薬機法で謳ってもいい効能が明確に規定されているので、“この商品は、肌にツヤを与えることができます”であればOKだが、“この商品は、シワ・たるみの改善に繋がります”はNGだ。また、体の変化を数字で表してしまうと、その変化が商品によって確実に起こるという誤解を消費者に与えてしまうと考えられるため、“(左)58kg、(右)43kg”といった体重計の比較画像でビフォー/アフターを示すのは基本的にアウトだ」。

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 土橋氏の調べによると、薬機法に抵触しかねない広告は全体の26.4%に上っているという。「レコメンドウィジェット広告の市場規模は年間300億円くらいと言われているが、違法な表現をすればするほどお金が儲かってしまうため、広告枠に対してたくさんのお金が投下されている面があると思う。本来、広告ページ内には運営会社を表示しなければならないが、虚偽の情報で出稿している場合も多く、ルールを守る気がない人たちが多い業界だと感じている。行政がさし切れていない現状があるので、例えば化粧品などの広告は一律でカットしてしまうなどの対策が必要ではないか」。

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 レコメンドウィジェット広告が作られる流れはこうだ。食品・化粧品などのメーカーから依頼を受けた広告代理店が自社の制作チーム、もしくは制作会社に制作を依頼するとともに、広告の運営会社に掲載枠を確保をしてもらい、出来上がったものが掲載される。しかしその過程においては、問題のある表現を黙認するメーカーや広告代理店などの存在があるという。インターネット広告の運営会社に勤務した経験のある齊藤郁馬氏は「広告代理店が配信直前や配信後にアウトな表現に変えてしまった事例も少なからずあった。文が何件取れたらいくら、報酬体系になっているため、広告代理店が軽い気持ちで過度な表現を使ってしまうという構造上の問題もあると思う」と明かす。

■一般人の写真を無断で使用するケースも

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 こうしたインターネット広告の制作過程では、芸能人だけでなく、一般人の写真が無断で使用されるケースもあるという。

 「いつの間にか私の写真が出てる。でも、使っていいなんて言ったことない」。デザイナー兼美容ブロガーのAyakoさんは、自身のブログに載せていた、毛穴ケアアイテムを検証した際の写真がネットの化粧品広告に勝手に使われていたことに気がついたという。

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 すぐに広告主である化粧品メーカーに連絡し、広告の取り下げを求めるも、先方の弁護士とは折り合わなかったため、経緯をブログやSNSで発信。するとたちまち拡散し、広告を掲載していたメディアからツイッターで配信停止を知らせる連絡が入ったという。ただ、化粧品メーカーからは連絡が無かったため、弁護士を通じて謝罪と経緯の説明を求めることにした。しかしメーカーは広告代理店と広告の制作会社からコンタクトがあるはずだとだけ説明。発覚から2カ月以上たった昨年12月になり、ようやく広告代理店と制作会社から謝罪があり、和解が成立する予定だ。

 ただ、受け取り予定の和解金については弁護士費用を差し引き、残りは新型コロナウイルスに関する支援団体に寄付する考えだという。「私みたいに“写真を勝手に使われてしまった”という人が減ることはもちろんだが、あれ?って思う広告に騙され、買ってしまうような人が減るのが一番だと思っている。こういう広告がなくなることが本当に大切だ」。

■健全化のための取り組みや法整備も

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 一方、「漫画村」問題の際には、大手企業の広告が違法なサイトや公序良俗に反するようなサイトにも出てしまう問題もクローズアップされた。前出の齊藤氏は「レコメンドウィジェット広告のような広告は、広告主が掲載先のメディアを選べないという問題もある。広告運営会社としても、実際に広告を掲載しないようにする、審査でNGにするという対応をとっている」と説明した。

 昨年7月には、ネット広告健全化に向けた9社による「フェイク広告やコンプライアンス違反広告を根絶するために連携して対応策を検討していく」「ガイドラインの策定を行う」などの項目を盛り込んだ共同声明が出されるなど、業界としても広告の健全化が進められている。しかし、閲覧履歴を元に、ユーザーの興味関心・嗜好に合わせた広告を効率よく掲出するためのターゲティング広告の仕組みなどは、プライバシーや個人情報との兼ね合いが世界的な問題にもなっており、これを制限する取り組みや機能の導入も始まっている。

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 3月に閣議決定された「個人情報保護法の改正案」では、企業がクッキー(Cookie。閲覧したサイトがユーザーの情報を記録しておくことで、再訪の際などにより便利に使えるようにするもの)の情報を取得し第三者に提供する場合に本人の同意を義務付けており、情報の提供元企業は本人の同意を得たか提供先企業に確認するといった内容が盛り込まれている。

 齊藤氏は「やはり“何に使われるかわからない”という不信感を持たれないよう、情報を利用することについては明示的に伝えていくことが重要だと思っている。より良い広告体験を提供し続けることが、広告がうざい、気持ち悪いものだと思われないためにも重要だ」と話していた。(ABEMA/『ABEMAPrime』より)

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