大阪城を“信号”のようにライトアップも 吉村知事が打ち出した「大阪モデル」は国や都道府県の先例となるか
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 5月末まで延長されることになった緊急事態宣言。西村経済再生担当大臣は5日、自治体ごとに状況を考慮、対策を講じた上で自粛を緩和、社会経済の活動レベルを段階的に上げていくことを求めており、これを受けて各都道府県が新たなメッセージや施策を発信し始めている。

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 そんな中、いち早く独自の基準を打ち出したのが大阪府だ。吉村知事は「本来は国で示して頂きたかったが、それが示されないということになったので、府としてのモデルを決定したいと思う」「大事なのはまず数値で示すということなので、まず数値で出口戦略をする」として、自粛解除に向けて4つの基準を「警戒信号」とし、それぞれの数値を達成していると消灯、未達成だと点灯する独自基準「大阪モデル」を提示した。

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 「警戒信号」の1つ目が「感染経路不明者の前週増加比」で、1以上で点灯・増加なしで消灯。2つ目が「新規陽性者における感染経路不明者数」で、5~10人以上で点灯・10人未満で消灯。3つ目が「確定診断検査における陽性率」で、7%以上で点灯・7%未満で消灯。4つ目が「患者受入重症病床使用率」で、点灯条件は適時変更・60%未満で消灯となっている。府では、これらを7日間継続してクリアできれば、段階的な解除を行っていくとしている。一方、1つ目から3つ目までの信号が点灯している場合は、解除後であっても自粛などの対策を要請する方針だ。

 また、現状を分かりやすく伝えるため、達成できていれば「緑」、できていなければ「黄色」で大阪城をライトアップする予定だ。なお、4日までの大阪府の入院患者と病床数を見ると、ICU・重篤患者用ベッド188床のうち、重症入院患者は62人で33%、中等症用ベッド800床以上のうち、中等症入院患者は入院調整中を含め419人となっており、現状では全ての警戒信号が消えている状態だ。

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 元外務省医務官で渡航医学が専門の勝田吉彰・関西福祉大学教授は「“点灯”、“消灯”の両方あるところがミソだと思う。これまでは“然るべき時に、今のこの状態から出よう“ということで、“出口戦略”という言葉ばかりが使われていたが、第2波が来た時にどうするのかという問題があった。仮に15日に一旦緩めたとして、それから感染者が増えて再び締めようとしたときに、どういう基準にするのかまで示しているという点で、大阪モデルは画期的だ。これであれば府民の納得も得やすいと思う。また、実効再生産数などの難しい言葉を使わず、パーセンテージや人数など、誰でも理解できる数字を使っているところが、コミュニケーションの上手いところだと感じる」と話す。

 今後、東京都や茨城県でも感染の状況を考慮しながら独自の「出口戦略」の検討や「指針」の発表がされる見通しだ。このモデルを他県や国のレベルで当てはめることも可能なのだろうか。

 勝田氏は「再生産数の話がないので、どこの都道府県の誰でも出せると思うし、国のモデルにしてもおかしくはない強いて言えば重症者向けの病床数が都道府県によって異なるため、大阪では60%としている数字を各県ごとの実情に合わせてということは必要かもしれない」と見方を示した上で、「政府の専門家会議が会見を開くと、“どうもこれはクーデター的な会見だ”みたいな話が出てくるなど、専門家と政治との間でギクシャクしたものがあるようにも見える。一方、吉村さんが何か言うと、国や東京が1日後に付いて来ているようにも見える。まずは大阪のように専門家と政治家が上手くいっていて、その中で決めたものについて来ていただくという考え方でもよいのではないかという気がする」とコメントした。

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 「大阪モデル」発表に先立つ4日、関西経済同友会は「先行きが見えないことも経済活動に悪影響を与える。政府は緊急事態宣言解除の要件、どのような段階を踏み、経済活動などの制限が緩められていくのか示すべき」としている。実際、大阪の百貨店の4月売り上げ(前年比)は大丸心斎橋店で93%、阪急うめだ本店で86%、高島屋大阪店で85%の減となっており、経済の落ち込みは深刻だ。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「感染を抑えようとすれば高齢者の死亡数は減るけれど、現役世代の活動を抑えることで経済がおかしくなってしまうことになる。つまり、現役世代を優先するのか高齢者を優先するのかという、一種の“世代間トロッコ問題”みたいなものが起きてしまっている。病気で死ぬ人も少なければ経済で死ぬ人も少ないという方法を見つけなければいけないが、どうもそこの出口がきちんと作れていない感じがする」と指摘。

 さらに「国の専門家会議の尾身茂副座長が“我々は経済的なインパクト等々について評価をしたり、どうしたらいいのかを言ったりする専門性は無いので、我々の意見と経済のプロからの提言の両方を見た上で最終的な判断をして下さいと、政府に申し上げてきた”と言っている。確かに“出口戦略”をめぐる議論は医学上の観点から検討された数値でしかなく、経済的な効果までは検証されていないのが問題だったと思う。ただ、誰が経済の専門家として入るのか、ということも難しい議論になると思う。自然科学に関しては専門家間である程度の共通認識があるが、経済学に関しては専門家の意見が大きく割れていて、論争に決着がついていない。仮に緊縮系の専門家が入って来た場合、感染する人は減ったのに、経済で困窮する人が増えるという結果も生みかねない」とも話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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