どんな失敗でも、前向きに捉えることでその後の成功につながるお手本のような話だ。将棋の渡辺明三冠(36)が、後輩たちから過去一番の失敗談を聞かれ、タイトル戦に向かう際、宿泊用の荷物を自動車のトランクに忘れた、という痛恨のミスを明かした。それでも即座に切り替えて前向きになったところ、対局は見事勝利。この切り替えが将棋界の超トップクラスに位置する棋士の心構えとも言えるエピソードになった。
渡辺三冠が語ったのは、プロ将棋界初の団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」でチームを組んだ近藤誠也七段(23)、石井健太郎五段(28)とのトークから。所司一門として顔は合わせるものの、じっくりと話し込んだことがないこともあり、後輩2人から偉大な先輩に数々の質問をぶつけることになった。
趣味である競馬で当てるコツ、妻との馴れ初めなど、プライベートな質問がどんどんと飛び交う中、いよいよ質問は後輩も気になる「一番の失敗談」へ。すると渡辺三冠がフリップに書いたのは「最近だと、タイトル戦に行く時に荷物を丸ごと忘れた」というものだった。これには後輩2人も笑い以上に驚きが。続けて「トランクに詰めた荷物を丸ごと忘れた。場所は宇都宮だったか…2泊分だか、3泊分の荷物を詰めて出たんですけど、それを丸ごと忘れた」と明かした。
車で荷物を駅まで運び、電車で移動する予定だったが、自分一人で電車に乗り込んでしまったようで「もう間に合わないんで諦めました。扇子も忘れた。身の回りのものは必要だから買いました」と、その場をしのいだという。
さぞ慌てたと思われるところだが、そうならないのが三冠保持者。「行きの電車の中で忘れたことに気付いたんですけど、それだけ(対局に)集中してるんだと前向きにとらえた」と切り替えた。また「家を出て、道を歩いてる時から将棋のことを考えている。それだけ集中しているから、これは勝てるなと思いました」と、むしろ自信に変えていた。
これには近藤七段、石井五段、周囲の関係者からも「おおー!」といった声が。やはり勝負の世界で勝ち続けるには強靭なメンタル、多少の失敗からも早く気持ちを立て直せる技術が必要のようだ。
◆第3回AbemaTVトーナメント
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行い、1回の対戦は三番勝負。3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝賞金1000万円。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)
(ABEMA/将棋チャンネル)