5月10日に放送されたプロレスリング・ノアのTVマッチには『MUTA FANTASIA』というサブタイトルが付いていた。マット界の伝説、“武藤敬司の化身”とも“魔界の住人”とも呼ばれるグレート・ムタがノア再登場。無観客試合だけに会場は無法地帯になること必至だ。
しかも今回、ムタはタッグでの参戦。そのパートナーは「魔流不死」である。丸藤正道とは別人ながら“魔界で育った別人格”と噂される魔流不死。リングでムタとの揃い踏みを果たすと、両者同時に毒霧を噴射して相手チームを威嚇する。
“魔界タッグ”と対戦したのは、こちらもレジェンドである桜庭和志と望月成晃のベテランタッグ。しかし桜庭はいきなりの毒霧に警戒を深め、なかなか踏み込んでいけない。桜庭が巻いてきた黒帯を使い、2人がかりで首を絞める場面もあったが、望月曰く「魔界にどっぷり浸かって沈められた」。
(魔界流不死はスモーク攻撃で無法状態に拍車をかける)
試合のペースは最初から最後までムタ&魔流不死が握っていた。ムタはリングサイドでカメラマンからカメラを奪い、リングでは魔流不死が桜庭とグラウンドの攻防を展開。魔流不死は桜庭にジャンピング・パスガード(フットスタンプ?)を仕掛けてみせる。このあたり“vs桜庭”の自由なアプローチと言えるだろう。
暴れに暴れた魔界タッグ。ムタは望月にファイヤー攻撃を決めると魔流不死がスモークを噴射。リング上の視界が完全に奪われた中、気がつけば桜庭がムタの毒霧を浴びていた。最後は閃光魔術でムタが望月から3カウント。混沌、かつ完勝だ。
このタッグに手応えがあったということなのか、ムタと魔流不死はインタビュースペースにも姿を現した。ムタは「I will be back this ring...」と継続参戦を示唆。一方、魔流不死は日本語で「また会おう……」。
そしていったん引き下がったかと思いきや、通路にいた若手を引きずり回してボコボコに。リング上からバックステージまで繰り広げられた“無観客魔界”は、新たなノア名物になるかもしれない。
文/橋本宗洋